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人生の特等席

「FMK Morning Glory」毎週火曜日にお送りしています「キネマのススメ」。
毎週、(わたくし)松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
今日ご紹介するのは、現在公開中の「人生の特等席」です。

この映画は、名優クリント・イーストウッドの4年ぶりの主演作ということで、大変話題になっている作品です。
“あれ?イーストウッドといえば、俳優を引退するって言ったんじゃなかったっけ?”と思われる方もいらっしゃるでしょう。
実際彼は、2008年当時、監督・主演した「グラン・トリノ」を発表したのち、“俳優引退宣言”と思われるコメントをしていました。
確かに「グラン・トリノ」は、イーストウッドの俳優キャリアの集大成ともいえる作品で、苦労した老人が、出会った若者に人生の本当の意味を教えるという素晴らしい役でした。
その後、イーストウッドは監督に専念して、精力的に作品を発表してきました。
誰もが、イーストウッドはこのまま監督専業になると思っていた矢先に・・・・・。

この「人生の特等席」で82歳にしてスクリーンに復帰!
しかも自分でメガホンをとらず、今回は、俳優に徹しているんです。
他の人に監督を任せ、純粋に俳優として主演するのは、「ザ・シークレット・サービス」以来、実に19年ぶりというんですから、注目を集めるのもわかりますね。

さて、そんなイーストウッドが今回演じるのは、大リーグのベテランスカウトマン・ガス・ロベル。
数々の名選手を発掘してきた彼でしたが、年には勝てず、スカウトマンの命である視力にも衰えを感じていました。
野球界は、データ主義、コンピュータ主義の新しい時代を迎えています。
(このあたりはブラッド・ピット主演の「マネー・ボール」で描かれていましたね。この映画と見比べると面白いですよ。)

この「人生の特等席」では、時代遅れの老スカウト・ガスを球団は、無慈悲に解雇しようとしています。
そんなピンチのガスをサポートするために現れたのが、長い間疎遠になっていた娘のミッキー。
ガスとミッキーは、最後のスカウトの旅に出るのですが、2人は衝突を繰り返すばかり。
果たして父と娘は分かり合えるのか?そしてスカウトの行方は?

大リーグ、親子の心の葛藤・・・というテーマですから、展開はわりと想像できますが、そこはイーストウッド!熟練した演技と存在感で、新鮮な驚きを見せてくれます。
スカウト活動に夢中で家族を顧みず、家族と疎遠になっている老人という主人公のキャラは、そのままイーストウッド自身の私生活とも重なります。
何度かの離婚、結婚を繰り返し、妻や子供たちとの関係も決してハッピーではなかったイーストウッドが、自分自身の人生の償いのために、この役を演じているかのように見えるのは、考えすぎでしょうか・・・・。
いやいや、きっとイーストウッドの中では、映画界と野球界が重なってたはずです。頑固に昔ながらの映画作りのスタイルを守っているイーストウッドは、自らの目と耳だけを信じてスカウトをする主人公ガスとピッタリ重なって見えます。

そんなイーストウッドを演出したのが、これが監督デビュー作となるロバート・ローレンツ監督です。
実は彼は、製作スタッフとして、長年イーストウッドの監督作に携わってきた
いわばイーストウッドの弟子。
弟子の監督デビュー作に、師匠が主演して花を添えたんですね。

ローレンツ監督、さすがにイーストウッドの愛弟子とあって、監督デビュー作とは思えない安定した演出ぶりです。
時にしんみりと、時にドキドキさせ、痛快なラストへつなげる演出はまさに師匠ゆずり。
ぜひ、その師弟愛をスクリーンでご覧になってみてください!

■TOHOシネマズ はません
■シネプレックス熊本
■ワーナー・マイカル・シネマズ熊本
で、現在公開中です。

この映画「人生の特等席」の中では、カントリーの定番「ユー・アー・マイ・サンシャイン」が何度も流れます。
映画の中では、死に別れた妻のお墓に向かって、この歌の歌詞を主人公が朗読するシーンが出てきます。
シンプルな歌詞を朗読するだけのシーンなのに、忘れられない感動的なシーンになっています。
こういう役者を名優というんでしょうね。まだまだイーストウッドのスクリーンでの演技が見たくなる1本です。

 

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