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熊本大学・根本淳子先生を迎えて

あらゆるジャンルの注目の人にインタビューする「ヒューマン・ラボ」。

3ヶ月間にわたってスペシャル企画でお届けしています。

題して「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ 熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」

毎回、熊本大学の先生を講師に迎えて、さまざまジャンルの研究テーマについて

お話をうかがいます。

第2回の講師は、熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻

助教 根本淳子先生です。

121112

 

 

Q① お名前と職業・所属を教えて下さい。

名前:根本 淳子

所属:熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻
                          
プロフィール                                                     

一般企業に6年間勤務した後、岩手県立大学にて研究員として約1年間勤務しました。

その後、日本で初めてのeラーニングの専門家養成をeラーニング(遠隔)で

提供する大学院が2006年(平成18年)に熊本大学で設置されることになり、

開設前年度10月から熊本大学に勤務しています。

Q② eラーニングについて説明をお願いします。

eラーニングとは、コンピュータなどのIT技術を用いて学習することです。

自宅にあるPCを使ってインターネット経由で勉強することができます。

これによって、より多くの人に学ぶ機会を提供することができます。

私が所属する大学院の学生は、熊大に来て授業を受けるのではなく、

自宅で勉強して単位を取得しています。

そのため、学生の多くは熊本県外に在住する社会人がほとんどです。

Q③ 根本先生の専門である「インストラクショナルデザイン」とは、

 どんな研究ですか、わかりやすく教えてください。

人が学び成長しようとする活動を支援することに関する研究、でしょうか。

インストラクショナルデザインには、「人が学ぶ」という活動を効果的、効率的、

そして魅力的にしていくための活動すべてを含まれています。

学びやすい教材を作る、カリキュラムを作る、環境をつくる。

すべてがインストラクショナルデザインを使って取り組むことができる教育支援です。

学習成果が上がるだけではなく、利用者(学習者)にとって、魅力的である、

つまり使いたいと思って頂けるものを作ることも大切にします。

一方現実は、時間、人材、お金など、には制限がつきものです。

ですので、限られた範囲の中で最適な提供方法を模索することも大事です。

Q④ 「インストラクショナルデザイン」による教育方法の具体例をいくつかあげていただけますか?

大学生の情報教育の授業を、学生たちがインターンシップに行った時に使える場面を

想定して学習を組み込んだ例:情報教育を物語で作ることで学生たちが

より学習に入り込みやすいような仕組みづくりを行っています。

看護師向けの複数の研修を、それぞれ独立して行うのではなく、

仮想病院の物語でつなげて文脈を作って応用しやすくした例:

得られた知識を実務でどのように活用できるのかイメージしやすくすることで

学習の効果を高める試みです。

全国各地に点在する社員を集め数日間かけて行っていた教育を、

対面でしかできない部分だけを集合研修にし、

それ以外をeラーニングで行った事例:研修を短くすることで、

時間や費用を削減するだけではなく、一人で考えた方が良い内容・活動と

仲間と直接会って話す必要がある内容・活動を整理することで、

成果を上げることを狙っています。

私たちが所属する大学院は、世の中が求めるイーラーニング専門家って

どんな人だろうか、というも人材像から大学院のカリキュラムを作りました:

教育方法というのとは違うと思いますが、入口と出口を考えて内容を作り上げる、

インストラクショナルデザインの基本を使って設計しています。

このように、それぞれが持つ悩みを理解しながら、効果・効率・魅力を

高めるさまざまな方法を考えています。

Q⑤ 根本先生がこの研究に取り組むことになった「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。

企業に勤務していた時に、この分野について知る機会を得ました。

当時はIT系のシステムやソフトウェアのインストラクターを行っており、

自分でテキストや問題集を作ってコースを開講するというのが主な業務でした。

その仕事を選んだ理由は、自分の知識を高め、キャリアアップができるように

自分も学ぶことができる環境が魅力だと思っていたからです。

しかし、仕事の全体像が見えるようになり、自分で一通りの業務を回せるようになった頃、

自分の仕事のやり方が正しいのか、教えていた内容が本当に相手のためになっているのか、

自信がなくなりました。自分でもなぜ、この教え方がいいのか、

これが最善の方法であるのか、何となく感覚的にはあっていると思っていても、

自分自身にも説明することができなくなりました。

そのような時に、産学連携の場などを介して、

インストラクショナルデザインという学問があることを知りました。

これを使えば裏打ちを持つことによって自分の業務がきちんと成果を上げているのか、

そしてそれはなぜであるのかを自分で説明できるようになると思い、

そのまま理解を深めていくうちに大学で働く機会を得ることになりました。

 

Q⑥ 「インストラクショナルデザイン」を学ぶと、学校以外の場所、

 例えば一般企業などでも応用できるのでしょうか?具体例などあればお願いします。

はい、応用できます。

私たちが所属する大学院(教授システム学)の学生の大半は、社会人です。

彼らは彼らが所属する企業、病院、大学などの人材育成の場をよりよいものに

したいという思いがあって入学されてきます。

企業であれば、「新人育成カリキュラムを作成する」、

「ある特定の職種が抱える問題を整理し、必要に応じた教育プログラムを考える」こと

などにインストラクショナルデザインを活用することができます。

米国では軍の人材育成などに活用されているという歴史もあり、

大企業にはインストラクショナルデザイナーという専門家が配属されていることも多くあります。

Q⑦ これまでの活動を通じて、最も印象深いエピソードをお願いします。

熊本大学にて新しい大学院(教授システム学専攻)の開設準備に携わったことだと思います。

教授システム学専攻という専攻は、日本にはひとつしかありません。

新しい専攻を一から作るというところが、私にとってはすごく貴重な経験でした。

ある一つの授業を任されて、それを自分らしく講義できるような内容にまとめていく活動は、

これからもあると思います。

ですが、全く新しい専攻を準備するためにカリキュラム全体を考え、

準備する機会はこれからあるかどうかわかりません。

どんな人材を養成したいかを描き、その修了生の人材像を踏まえて

コンピテンシーを設定し、各科目がそのコンピテンシーを充足するように

科目間の内容を調整するという場に同席することができました。

これは、本分野を専門とする人にとっては、とても魅力的なことですし、

企業に勤務していた時から、是非携わってみたいと思う場でしたので、

本当に自分の経験として貴重だと思います。

といっても、当時は楽しいと思いながらも気持にゆとりはなかったなと今考えると思います。

また、それまで熊本という土地にご縁がなかった私には、

自分の生活スタイルを見直す機会でもありました。

Q⑧ 今後の活動予定やPRしたいことなどあれば教えてください。

熊本大学大学院 教授システム学専攻では、

積極的に人材開発の専門家になりたい人を募集しています。

その一環として、昨年度から熊本大学の公開講座で

「インストラクショナルデザイン講座」開いています(東京・大阪)。

今年度はすでに申し込みが終わってしまったのですが、ご興味があれば是非来年度ご参加ください。

また「まなばナイト」というイベントを2ヶ月に1回東京で実施しています。

地元の企業の方で、人材育成のカリキュラムを見直したいという方などが

いらっしゃいましたらご協力させていただきますので是非ご連絡ください。

Q⑨ 上記の件、問い合わせ先などあればお願いします。

公開講座は、「熊本大学 公開講座」で検索頂くと連絡先が出てきます。

(政策創造研究教育センター)

大学院教授システム学専攻は「熊本大学 教授システム学専攻」で検索頂くと

連絡先が出てきます。(教授システム学専攻だけでもヒットします)

共同研究なども教授システム学専攻または、根本に直接連絡を頂いても構いません。

 

 

 

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