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熊本大学・柊中智恵子准教授を迎えて

あらゆるジャンルの注目の人にインタビューする「ヒューマン・ラボ」。

3ヶ月間にわたってスペシャル企画でお届けしています。

題して「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ 熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」。

毎回、熊本大学の先生を講師に迎えて、さまざまジャンルの研究テーマについて

お話をうかがっています。

7回目の講師は、

熊本大学大学院 生命科学研究部 環境社会医学部門 看護学講座 臨床看護学分野

准教授 柊中 智恵子先生です。

121217

Q お名前と職業・所属を教えて下さい。

名前 : 柊中 智恵子

所属 : 熊本大学大学院 生命科学研究部 環境社会医学部門 看護学講座 臨床看護学分野

プロフィール

熊本大学医療技術短期大学部看護学科卒業  看護師免許取得

熊本大学法学部法学研究科法律学専攻修士課程修了(法学修士)

広島大学大学院保健学研究科博士後期課程在籍

認定遺伝カウンセラー取得(日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会)

現在、看護教員として勤務しながら、

熊本大学医学部附属病院遺伝カウンセリングチームで活動を行っている。

Q 柊中先生の専門である遺伝看護・遺伝カウンセリング」とは、

  どんな研究ですか、わかりやすく教えてください。

遺伝カウンセリングとは、遺伝や遺伝子についての問題や不安を

抱えている方に対して心理・社会的援助を行うものであり、

正確な情報をわかりやすく伝え、生涯変化せず血縁者にも影響を

与える可能性のある遺伝情報をどのように受け入れたらよいのか一緒に考えることです。

また、遺伝看護とは、遺伝カウンセリングに加えて、症状コントロールなどのケアも提供します。

遺伝看護・遺伝カウンセリングといっても、周産・小児・がん・神経難病といったように、

様々な領域がありますが、私の専門は主に神経難病です。

遺伝性疾患は、希少で難病が多く、これまで看護が光を当ててこなかった

病気が多いです。

私の研究は、遺伝性神経難病の当事者や家族の病気の体験が

どういうものであるのかを明らかにしていき、看護のあり方を考えることです。

そして、遺伝性疾患に関わる看護職が何をどのように難しいと感じているのか、

困っているのかを明らかにして看護職への教育内容を考えていくという研究を行っています。

Q 柊中先生がこの研究に取り組むことになった「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。

今から25年前になりますが、看護師として熊大病院に勤務していたとき、

家族性アミロイドポリニューロパチーという熊本県に多い遺伝性疾患の

患者様に出会いました。

手足のしびれと筋力低下で徐々に体が動かなくなり、激しい下痢で痩せていかれ、

発症して10年ほどでお亡くなりになるという病気でした。

多くの患者様が、子どもへの遺伝を心配しながら、心身ともに苦しんで亡くなっていかれました。

当時、私は、たった一つの遺伝子の違いで難病になり、

人生が大きく変わることに衝撃を受け、どんな看護をしたらよいのか悩みました。

そのような時に、この病気の患者会の会長と出会い、地域社会での

病気の現実を教えていただきました。

熊大病院は、世界的にも、この病気の病態解明・診断・治療の

最先端の医療がされていましたが、自分は看護師として

何かできることがあるのではないかと思い、この病気の看護の研究をきっかけに、

遺伝性神経難病の看護の研究を始めました。

ちょうど大学院で学んでいたときに、日本にも遺伝看護学会ができ、

遺伝看護を学ぶ機会ができたことや日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会で

認定遺伝カウンセラー制度が出来たことで、資格を取り、

看護実践と研究をつなぐ研究が出来るようになりました。

Q これまでの活動を通じて、最も印象深いエピソードをお願いします。

これまでに、いろいろな遺伝性の希少難病の患者様やご家族に出会ってきました。

皆様に共通していることは、遺伝についてどんなに深く悩んでおられても、

人は逞しく生きる力を持っているというということです。そのことに尊敬の念を抱きます。

家系の中に、何人も同じ病気の患者さんがおられます。

親が病気と闘って生きる姿を小さきときから見て育ってこられ、

自分が大人になると親と同じ病気になるかもしれないと自分の未来を恐れていても、

皆さん自分の人生を必至に生きておられることに心を打たれています。

私にできることは、一緒に悩み考えることや、考えを整理するお手伝いをすることだと思っています。

Q 最後に一言お願いします。

熊本大学医学部附属病院には、今年2月に遺伝カウンセリングチームが出来ました。

神経内科の安東由喜雄教授をチームリーダーとして、

臨床遺伝専門医の小児科の三渕浩先生、 産婦人科の大場隆先生、

看護職の坂井さん、中村さん、坂口さん、今井さん、

そして様々な診療科の医師たちで構成されているチームです。

活動は始まったばかりでありますが、これから少しづつ活動内容を充実させて

いきたいと考えています。

遺伝についての悩みは、「墓場まで持っていく」と誰にも相談できずに悩んでおられたり、

間違った遺伝の知識で不安になっておられたりすることもあります。

遺伝的な不安や心配、問題を抱えておられる方に対して、

医師・看護師・認定遺伝カウンセラーというチームで、

ゆっくりと時間をとって対応していくことができますので、

不安や心配があれば、相談していただきたいと思います。

 

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