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NPO法人天草あゆみ保育園

企業にまつわる気になる疑問を解決する「会社のヒミツ」
1月31日までの10回にわたって、
スペシャル・バージョンでお送りしています。

題して「会社のヒミツ・NPOスペシャル~新しい公共~」。

あなたは、「新しい公共」という言葉をご存知ですか?
子育て、環境、まちづくりなどの、わたし達の身近な分野で、
市民、NPOや企業などの様々な団体が
地域の問題に取り組んだり
住民のニーズに合ったサービスを提供するなど、
皆で支えあう仕組みを作っていくことです。

この時間はそのような「新しい公共」を知ってもらうために
その担い手として活動しているNPO法人をご紹介していきます。

9回目の今日は、NPO法人 「天草あゆみ保育園」
園長鮫島 里子さんにお話を伺いました。

Q 組織の基本情報を教えて下さい
 (所在地) 天草市本渡町広瀬457番地3
 (職員数) 7名
   (問い合わせ先・電話番号) 0969-22-3138
   (ホームページ)  http://www.amakusa-ayumi.org

Q 組織の活動目的を教えてください。

当園では、0歳から就学前までの乳幼児、及び、
学童保育を行っています。
また、地域へ向けた子育ちの講座の開催、
子育て講座への講師の派遣なども行っています。

私たちは、子どもの身体機能と精神の健やかな育ちを
目指す「全面発達の保育」を心がけ実践しています。

太陽・海・山、天草の豊かな自然環境の中で、
自然体験・身体作り・生活体験・仲間と交わる力
等、「生きる力」となる土台を
保護者と保育者が一緒に作り上げています。

子どもを中心に、大人が手を取り合って
一歩ずつ歩み続けること、そして何より、子どもが子どもらしく、
太陽と土と水にまみれながら伸び伸びと成長し
輝ける場所として在り続けることを大切にしています。

Q いつごろどんなきっかけで結成されたものですか?

1970年代に入り、勤めに出る母親が急増しましたが、
天草では、産休明けから預かる保育園や
親の勤務時間に合った長時間保育をする保育園が
不足していました。

親の要望に応え、
産休明けの0歳から3歳までの保育を自宅で始めました。 

1977年、障がいや弱さを持つ子ども達と出会い、
専門家のアドバイスを受けながら保護者と学び育て、
その後、全国保育団体発行の「ちいさいなかま」の読者会を
園で始め、講演会などに取り組み、
地域の保育者と一緒に学び合いました。

1989年、さくら・さくらんぼ保育実践集
「あすを拓く子ら」に出会い感動し、
斉藤公子先生の講座を学び始め、保育園の実践に
「さくら・さくらんぼ保育」を取り入れるようになりました。

「どの子も育つ保育とは」を意識し、保育講座に参加し、
九州や全国で学び合う保育者集団と交わり、
就学前までを見通した保育をすることになりました。

保護者・地域の方のご支援で開園から38年間、認可外の
保育園として現在まで個人経営で運営してきました。

子どもの「生きる力」を育み、未来を創る保育園を、
次世代へつなぐために、様々な方の力や知恵を
寄せ集め保育目標の実践と地域への信頼を広げるため、
今年度、NPO法人化への道を選択しました。

Q 具体的にどんな活動をして、どんな実績をあげていますか?

自宅を開放し保育を始めて38年。
「さくら・さくらんぼ保育」を始めて16回の卒園式。
36名が卒園しています。

身体作りとして、ピアノのリズム曲に合わせて
楽しく身体を動かす「リズムあそび」を毎日行い、
雑巾がけ・ロールマット・野山の散歩・斜面登りなどを行い、
しなやかな体と感性を育て、腕・足・腰の強い
元気な「あゆみっこ」が育っています。

野の花や野草など、
本物の自然に常に触れることで、感性が育っていきます。

食事は、園の畑で採れたとれたての無農薬野菜を使い、
和食を中心としています。
子ども達も畑によく行き世話をし、野菜の世話も行います。
その中で、野菜の旬を知り、名前を知り、おいしさを知ります。
仲間と食べる楽しさを感じ、大人達の声かけにより、
野菜嫌いを克服し、何でもぱくぱく食べます。                                                            
天気の良い日は裸足で土を踏み、手で土を触り、
泥んこ遊び・砂遊び・水遊びをしながら、心を解放していきます。
土踏まずの形成も早いです。

日々の「労働」を大切にし、雑巾がけや掃除、配膳、
後片付けなど、どんな年齢の子でも自分達でできることは
お友達と一緒に自分達でする姿勢が身につきます。

年長になってからは九州内の姉妹園との交流保育が
年に6回あり、様々な体験をし、見て憧れ、
自分を突き出し挑戦し、達成感を味わいます。

Q  活動を通じて、どんな点が苦労していますか?
     具体的エピソードなどあればお願いします。

これまで、公的補助のない認可外の保育園として
活動してきて、一番に苦労するのは、経営資金の確保でした。
志を持った保育士が安定して働ける環境を経営面で
整えていくことが一番の苦労です。38年間の中には、
一時、園児3名で、それを乗り切った時もありました。                                                             
また、今年度NPO法人化をするにあたり、法人としての
組織作り・協力体制作りが今後の課題になると思います。

Q これまでの活動の中で、
     最も印象深いエピソードをお願いします。                                           

ダウン症・脳性まひ・自閉症など障がいを持った子ども達と
ともに育ち合う保育も行ってきました。
お互いに支えあい・車椅子など押してあげるなど、
園児の助け合う姿に感動しました。

大手術をし、人間不信に落ち入って、入園してから
入り口のそばでじっと立って保育の様子やお友達を
見ていた園児がいました。
1ヶ月ばかりしてから、リズムあそびで1つ1つのポイントを
しっかり皆の前でやってみせてくれた時は、
「信頼し待つことの大切さ」を学びました。

四季折々の散歩の中で「つわ採り名人」「竹の子採り名人」が
生まれ、入学前にある園児が「僕、つわ採り名人だから、
学校に行かんちゃよか」と話したそうです。
その子は今、家業のみかん作りを継ぎ
安心・安全のおいしいみかん作りに励んでいます。

卒園式で重度の障害を持った子の親が
涙ながらに挨拶をされたことがあります。
感極まって胸がいっぱいになり、言葉が出なかった時、
その子が「お母さん、がんばって。」と言いました。
その一言が周囲の人の涙を誘いました。

昨年、園舎の改修工事があり、狭い部屋で保育を行い、
思うように動くことができず、元気な子ども達は不満げでした。
園舎が完成し、広くなった部屋で思いっきり走り、
リズムあそびする子ども達の笑顔が印象的でした。

卒園の時期を迎えた男の子が跳び箱をなかなか跳べずに
いました。何度も練習し、それを園児全員で見守り、
「がんばれ、がんばれ」の声援を送る中、年長のその子は
涙を流しながら、できない自分をさらけだして練習しました。
やっと跳べた時、全員が大きな拍手を送り、
小さい子から大人までみんなで喜び合いました。

入園して、和食・野菜中心の給食になじめず、
1ヶ月かかってやっと食べはじめる子がいました。
活動をするのを嫌がる子は以前もいましたが、
給食を全く食べない子は初めてでした。

0歳児がみんなのリズム遊びの姿を見て、
手をたたいたり、足をあげたり、歌おうと口を開けたりする姿は
とても可愛くて印象的です。
皆で育ちあう当園ならではの光景だと思います。

Q 今後の夢などがあれば、お願いします。

あゆみ保育園という場所が天草にあることを
一人でも多くの方に知っていただき、これからもたくさんの
子ども達が「あゆみ」を巣立ち、そして「ふるさと」として
帰ってきてほしい。
そんな成長した子ども達の姿を
見ることができたらいいなあと思います。

「さくら・さくらんぼ保育」が地域の中で広がり、
学び合いながら交流ができたら良いなと思います。
また、高齢者との交流を深め、伝承遊びやわらべ歌など
教えていただくなど、高齢者の知恵を学び、
そして子ども達の元気がかみ合う地域作りも
担っていきたいと思っています。

Q そのほか、PRしたい案件があればお願いします。

当園は現在、園児数20名です。
0歳から年長まで、一人ひとりの育ちや子どもの要求に
細やかに応えることができ、温かな人間関係が生まれています。

また、ウチの子・ヨソの子関係なく、どの保護者も
良く声を掛け合い、結びつき・支えあいの関係があります。

高台にある園舎には一日中陽が差し込み、
桧の床で気持ちよさを感じます。

小高い丘の上からは、街並みや海が見下ろせ、
遠くは天草の山々が見えます。
自然豊かな園庭では、小鳥がさえずり、
四季折々の花や木に囲まれ、果物もみのります。

小さな時から五感を使い、感性が磨かれていきます。
なかなか自然に触れ合うことや人と人との結びつきが減った
現代社会だからこそ、当園のような場所でこどもの
「生きる力」を育むことが大切だと私達は考えています。

今日は、NPO法人 「天草あゆみ保育園」
園長鮫島 里子さんにお話を伺いました。

ありがとうございました!

 

                                                   

 

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