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「横道世之介」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。

今日ご紹介するのは、現在公開中の
「横道世之介」です。

この作品は、九州・長崎から東京に進学してきた
青年・横道世之介の何気ない日常を描いた、青春ドラマ。
原作は、「悪人」や「パレード」の吉田修一の同名小説です。

新聞小説として発表された際、地方から東京に
出て行った若者の青春小説ということで
夏目漱石の「三四郎」現代版とも評された傑作小説です。

「横道世之介」って、
ありそうだけどちょっと変わってる名前だと思いませんか?
世之介のキャラクターも、まさにそんな感じ。
人なつこくて、ちょっと不器用で空気読めなくて、
びっくりするほどお人よし。
思い返せば、「学生時代、あんなやついたなぁ」と
思うようなほんわかとした存在感だけど、
何だか忘れられない・・・。
いわば“ゆるキャラ”のような、
誰からも愛される、そんな人物なんです。

この世之介を演じるのは、
熊本出身の人気若手俳優・高良健吾。
高良くんといえば、「軽蔑」や「白夜行」など、
わりと陰のある人物を演じることが多かったですよね。

正反対ともいえるこの世之介役ですが、
意外なほどはまっていて、新たな魅力を見せてくれます。
世之介のガールフレンド役には、「蛇にピアス」でも共演した
吉高由里子。
こちらもぶっ飛んだお嬢様役を好演しています。

舞台となるのは、バブル真っ只中の1987年と
その16年後の2003年。
この時代の描き方が、この映画の見所のひとつになっていいます。
普通は字幕で「1987年」とか簡単に表現してしまいそうな
時代描写を実に丁寧に描いているんです。

例えば、「斉藤由貴のアクシアの看板」や
「グリコのキスミントの発売イベント」などなど。
さらには音楽も80年代の名曲をたっぷりと使っています。
携帯電話がなかった時代に友達との付き合いが
どんなものだったのか?
「ああ、こんなだったなぁ・・・」と思う人も多いでしょう。
(連絡がとれないと、アパートに直接行くような、
              人間関係は、今はあまりないかも・・・・・)

監督は、「キツツキと雨」で東京国際映画賞
「審査員特別賞」を受賞した沖田修一。
脚本を担当したのは、新進気鋭の劇団
「五反田団」の前田司郎。
なんと沖田監督の脚本の前田さんは、中学・高校の同級生。
学生時代は「アカデミー部」としいう自主制作のサークルを
立ち上げ活動していたそうです。ちなみに当時作った
作品のタイトルは「地底人の謎」だそうです。
まさに、この「横道世之介」で描かれるような
友情関係が制作現場でも築かれていたようです。

ものすごい事件が起きるわけでもない、
普通の学生たちの日常生活。
でも、その何気ない日常の輝きが「いいなぁ~」と
感じさせてくれる映画です。
この時代に青春時代を過ごした人は、
映画の細部まで目を凝らしてみると、
懐かしくてたまらない気分になることでしょう。
当時を知らない人も、
こんな友だちがいればいいなぁ・・・と思うことでしょう。
青春映画の傑作です。

今日ご紹介した映画「横道世之介」は、
■シネプレックス熊本
■ワーナー・マイカル・シネマズ熊本
で、現在公開中です。

「横道世之介」オフィシャルサイト
http://yonosuke-movie.com/

 

 

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