「ザ・マスター」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
今日は、今週土曜日・4月20日から公開される
「ザ・マスター」をご紹介しました。
人間の心を深く描き出す作品で、映画ファンから
常に注目を浴びるポール・トーマス・アンダーソン監督。
1970年生まれの監督は、1996年の「ハードエイト」で
長編映画監督デビュー。
翌年の「ブギーナイツ」がアカデミー賞3部門に
ノミネートされて以来、作品を発表するごとに、
毎回大きな映画賞を受賞するという
いわば「若き巨匠」というべき存在となっています。
彼が、前作の「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」から
5年ぶりに手掛けた監督最新作が、
今日ご紹介する映画「ザ・マスター」です。
今回の舞台は、第二次世界大戦直後のアメリカ。
元海兵隊員のフレディは、戦争中にはまったアルコール
依存症から抜け出せず、一般的な社会生活を
送れずにいました。そんな中、彼は「ザ・コーズ」という
新興宗教の教祖に出会い、弟子となります。
2人は急激に絆を深めていきますが、
やがて衝突するようになります・・・。
前作「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」は、人間を信用しない
主人公と、対立を深める牧師という2人の人間関係が
主軸でしたが、今回の作品では、心に凶暴性を秘めた
主人公フレディと、新興宗教の指導者である
マスター、そしてその妻という3人の関係性が中心となっています。
自分にないものを相手に見出すがゆえに、強烈に惹かれあい、
反発する2人の男。その関係に揺さぶりをかける妻・・・。
この緊張感あふれる心理ドラマが、
ポール・トーマス・アンダーソンならではの映像で描かれていきます。
デジタルでの撮影が主流となっている現在のハリウッドで、
非常にまれな「65ミリのフィルム撮影」という手法で制作された
映像は、かなり独特のものになっています。
1950年代の雰囲気を出すためにこの撮影方法を
採用したそうですが、21世紀に作られた新作映画なのに、
50年代のクラッシックなたたずまいを持った
映像に仕上がっています。この映像を体験するだけでも、
この映画を映画館でみる価値があるってものです。
主人公フレディを演じたのは、久しぶりの映画復帰となった
ホアキン・フェニックス。
彼と対立するマスター役を、オスカー俳優の
フィリップ・シーモア・ホフマン。
そして、鍵を握る妻役を「魔法にかけられて」の
エイミー・アダムスが演じていて、
それぞれ今年度のアカデミー賞で主演男優賞、
助演男優賞、助演女優賞にノミネートされています。
気楽にみられる娯楽作品ではありませんが、
名優たちの息詰まるような演技を堪能できる
見ごたえのある作品です。ぜひ、じっくりとご覧ください!
今日ご紹介した映画「ザ・マスター」は、
■Denkikan
で、今週土曜日・4月20日から公開されます。
「ザ・マスター」オフィシャルサイト
http://themastermovie.jp/