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「風立ちぬ」

毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週土曜日・7月20日から
公開される「風立ちぬ」です。
 
この映画、宮崎駿監督の、「崖の上のポニョ」以来
5年ぶりに監督を務めた作品として話題ですね。
公開になるたびに大きな話題を集める
スタジオ・ジブリの映画。その中でも宮崎駿監督が
自ら手がける作品となると注目度は一層高くなります。
 
最新作「風立ちぬ」は、これまでの宮崎作品とは
かなり違ったアプローチの作品。
“宮崎監督初の大人の恋物語”とか、
監督が初めて自分の作品を試写で見て泣いたとか、
いろんな情報も飛び交っていますね。
 
原作は、宮崎監督が「モデルグラフィックス」という
模型専門誌に連載していた漫画。
ゼロ戦の設計者である実在の人物・堀越二郎の半生と、
同時代の作家・堀辰雄の小説「風立ちぬ」を
ミックスさせた物語です。
 
舞台は、大正から昭和にかけての日本。
航空機の設計者である堀越二郎は、
イタリア人飛行機製作者のカプローニに憧れ、自分でも
いつか美しい飛行機を作りたいと夢を抱いていました。
しかし、時代は戦争へと突入し、二郎も戦闘機の設計に
携わることになります。
一方、関東大震災の際に助けた少女・菜穂子と
再会した二郎は、彼女と恋に落ちますが、
菜穂子は結核をわずらっていました・・・。
二人に残された時間はわずか。
厳しい時代に二人はどう生きてゆくのか?
映画のクライマックスでは、これまでの宮崎作品では、
決して描かれなかったせつないドラマが
展開してゆきます。
 
「スタジオ・ジブリ」といえば、
ファンタジーを連想する方が多いと思いますが、
今回はファンタジーの要素はほとんど出てきません。
 
その代わりにたくさん出てくるのが、飛行機。
宮崎監督は、無類の飛行機、特に戦闘機好きとして
知られていますが、
(「ハウルの動く城」や「紅の豚」でも描かれたように)
戦争が嫌いなことでも有名です。
 
今回の作品では、ファンタジー作品で
登場してきたようなトトロやポニョのような
キャラクターは登場してきません。
ただ、そのかわりに映画の全編に様々な「風」の
描写が登場してきます。
強い風、弱い風、飛行機を翻弄する風、
主人公たちの決意を代弁するように画面を吹き渡る風。
宮崎作品ではこれまでも主人公が重要な決意をする
シーンでは、どこからともなく必ず風が吹いてきました。
今回の作品では、まさに「風」がもう一人の
登場人物のように様々な場面で吹きまくります。
まさに「風立ちぬ」・・・「風が吹いてきた」という
タイトルそのままの映画になっています。
 
確かに堀越二郎は、実在の人物ですが、
その仕事に取り組む姿勢に、宮崎監督が尊敬の念を
持っているため、このキャラクターに自分自身を
かなり投影しているようにみえます。
二郎にとっての「飛行機」は、宮崎監督にとって「アニメ」。
ライバルとして登場してくる設計主任の本庄は、
長年切磋琢磨してきたもう一人のジブリの巨匠
高畑勲監督のようにも見えてきます。
子供のための漫画映画をずっと作り続けていたいと
発言する宮崎監督は、自分の作品の存在が
世間で大きくなりすぎて、子どもたちに大きな影響を
与えすぎているのでは懸念する発言をよくしています。
「親たちは、アニメばかり見せないで、
野山を駆け回るような子供を育ててほしい。」と
発言したこともあります。
 
時代の流れでゼロ戦を作らざるを得なかった主人公は、
まさに宮崎監督の分身といえる存在なのかもしれません。
 
また、今回、人間の声を使った効果音や、
「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督が
主人公・二郎の声を担当するなど、ユニークな演出も
見どころの1つです。
ヒロイン 菜穂子は、瀧本美織が、ライバル本庄は
西島秀俊が声を担当しています。
 
楽しい可愛いジブリアニメのイメージとは一味違う、この作品。
宮崎監督が伝えたかったメッセージを、
ぜひスクリーンで体験してください。
 
今日ご紹介した映画「風立ちぬ」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、今週土曜日・7月20日から公開されます。
 
「風立ちぬ」オフィシャルサイト
 
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