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「サイド・エフェクト」

毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、
現在公開中の「サイド・エフェクト」です。
 
「サイド・エフェクト」とは、「副作用」という意味。
その名の通り、薬の副作用をテーマにした、
心理サスペンスです。
 
そのストーリーですが・・・。
金融マンの夫を持つエミリーは、夫が違法取引で
逮捕されたのをきっかけに以前患ったうつ病を再発。
診察にあたった精神科医のバンクスは新薬を投与し、
症状は快方に向かいますが、
薬の副作用からある事件が起きてしまいます。
 
主治医バンクスは責任を問われることに・・・・。
独自に調査を始めた彼は、
この事件の新たな側面を知ることになるのですが。
 
この映画を楽しむための予備知識として、
アメリカの医療保険制度の現状を知っておくと
いいかもしれません。
 
日本は、国民がすべて健康保険に加入する
国民皆保険の制度ですが、アメリカでは違います。
保険に入っていない人は高額な医療費を払わなければ
いけないので、なかなかお医者さんにもかかれません。
そのためドラッグ・ストアで買える市販薬が
ものすごく発達していて、日本ならお医者さんが
処方するような薬も売っていたりします。
 
製薬会社がテレビでコマーシャルを流すのも
一般的でこの映画で扱われるような「向精神薬」という
種類の薬もテレビでコマーシャルを流すような
一般的な薬として扱われてたりしています。
 
ちょっと怖い感じもしますね。
今回の映画では、そのあたりのアメリカの状況に
たいする風刺的な描写も出てきますので、
注意して見てくださいね。
 
この映画で、主人公の医師・バンクスを演じるのは、
ジュード・ロウ。イギリス人らしい知的な医師の役を
見事に演じています。
 
事件の鍵となるエミリー役には、
「ドラゴン・タトゥーの女」でアカデミー賞主演女優賞に
ノミネートされ、現在のりにのっている
若手女優ルーニー・マーラ。
今回、心の病を持つ繊細な主人公を演じていますが、
表情の微妙な変化で役の内面まで感じさせる
アクティングは確かにアカデミークラスの名演。
別の女優さんがやったらちょっと神経質すぎるような役も、
包み込むような純粋な魂が感じられる深みのある役に
仕上げているとこがポイントです。
彼女の演技力なしには、
この映画は成立しないくらいの演技力ですよ。
今後も期待のできる女優さんです。
 
そのほか、謎の女医役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、
先日紹介した「ホワイトハウス・ダウン」でも
注目株とご紹介したチャニング・テイタムが
出演しています。
 
監督は、「オーシャンズ11」や「トラフィック」などで
知られる鬼才スティーヴン・ソダーバーグ監督。
実は、彼はこの作品を最後に監督を引退することを
発表しているんです。映画に詳しい方なら
ソダーバーグ監督についてご存じかもしれませんが、
少し紹介しましょう。
 
ソダーバーグ監督は、1989年、26歳の時に発表した
「セックスと嘘とビデオテープ」で長編映画監督デビュー。
なんとこの作品でカンヌ映画祭の最高賞である
パルム・ドールに輝き、一躍脚光を浴びました。
その後も2000年に発表した「トラフィック」で
アカデミー賞監督賞を受賞。
 
またブラッド・ピットやジョージ・クルーニーなどの
オールスターが参加した「オーシャンズ」3部作が
世界中で大ヒットしています。
今回は、ヒッチコック・タッチのミステリーに挑戦して、
ツイストの効いた素晴らしい作品を生み出しました。
 
ソダーバーグ監督は、ビッグ・バジェットの
エンターテインメントから、
人間の内面に迫った硬派なものまで幅広い作品を作り出せる、
世界でも数少ない守備範囲の広い映画監督なんですね。
しかもまだ50歳という若さ!映像作家として
まだまだこれから!と感じるだけに、
今回の引退発表はとても残念です。
 
先日の宮崎駿監督の引退騒動でもわかるように、
監督というのは、1本の作品に自分のすべてを
注ぎ込んでしまうので、終わった後は、
「もうこれで映画は作らない」という気持ちに
なるもののようです。
ただ、ものを作るという現場からは、
一生引退することはないので、ちょっとしたきっかけで
「また、映画を撮りたい」と思い出すことが
ままあるみたいです。
 
宮崎監督もソダーバーグ監督「長編映画からは引退」と
言っているだけで、創作の現場から
すべて引退する訳ではないとうところが味噌ですね。
宮崎監督は、「ジブリ美術館の仕事をやりたい。」と
言っていましたし、ソダーバーグ監督は、
「TVシリーズやプロデューサーとして活動したい。」と
言っています。
 
なんだか発言が似ていると思いませんか?
数年後には、また彼らの作品が見られるような気がします。
 
そうは言っても、世界中の映画ファンに愛された
ソダーバーグ監督の引退作宣言のこの作品。
ぜひスクリーンでご覧になってください!
 
今日ご紹介した映画「サイド・エフェクト」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
で、現在公開中です。
 
「サイド・エフェクト」オフィシャルサイト
 
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