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「許されざる者」

毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「許されざる者」です。
 
オリジナルは、1992年、クリント・イーストウッドが
監督・主演し、アカデミー賞の作品賞を含む4部門を
受賞した名作西部劇。
「西部劇の決定版」とも言われ、その後のハリウッド映画の
西部劇にも大きな影響を与えている重要な作品です。
今回は、明治維新後の北海道に舞台を移し、
日本映画として完全リメイクされました。
 
監督は、「フラガール」や「悪人」で日本アカデミー賞の
常連となっている李相日(イ・サンイル)監督。
主演は、クリント・イーストウッド監督の
「硫黄島からの手紙」で主演した渡辺謙、いまや
「世界のケンワタナベ」として、ハリウッド映画から
続々オファーを受けている彼が、オリジナル版で
イーストウッドが演じた主人公を見事に演じています。
 
さらに、主人公と対決する悪役を佐藤浩市が演じる
ということで、公開前からかなり話題になっていましたよね。
 
ストーリーを簡単に紹介しますと・・・、
時代は、1880年。
主人公の十兵衛は、かつて幕末の時代に
「人斬り十兵衛」と恐れられた凄腕の刺客でした。
 
ある理由から、今は刀を捨て、北海道の開拓民として、
幼い子供たちとひっそりと暮らしていました。
そんな十兵衛のもとに、昔の仲間が賞金首の話を持ってきます。
貧しさに苦しむ子供たちのため、
十兵衛は再び刀を手に取ることを決意します!
 
今回の作品で驚かされるのは、映画前半での十兵衛の描写です。
刀を捨て、すっかり農民となって、優しい男になった十兵衛。
地味ですが、この前半パートを丁寧に描いてあるので、
映画後半のある事件をきっかけに凄腕の侍とし復活していく
十兵衛の決意の重さが、観客にもしっかりと伝わってきます。
身のこなしから目つきまで、枯れた植物のような男から、
肉食獣のようなギラギラとした迫力を取り戻してゆく姿は、
まさに「さすが渡辺謙!」という感じの見せ場です。
 
実は、物語の舞台となっている1880年は、
イーストウッドのオリジナルと同じ時代なんです。
アメリカでは南北戦争が終わり、西部への開拓が盛んに
おこなわれていた頃。
そして日本では、幕末の動乱が終わって、
明治という新たな時代へ突入し、
職を失った多くの武士が北海道の開拓を始めたころです。
日本とアメリカという場所は違っても、国の状況は
とても良く似ていたんですね。
そのため、設定を日本に置き換えても全く違和感がなく、
上質の時代劇として描かれています。
 
「西部劇」と時代劇の相性というのは、意外にもよくて、
有名なところでは、黒澤明監督の「用心棒」が、
セルジオ・レオーネ監督によって「荒野の用心棒」
としてリメイクされ、世界中で大ヒットしました。
その「荒野の用心棒」に主演していたのが、
クリント・イーストウッドなんです。
今回の「許されざるもの」のリメイクに対して、
イーストウッド監督は、
「自分の作品の中で最もたいせつなこの作品が、
日本映画としてリメイクされることに、
深い縁や絆を感じずにはいられません。」と
コメントを寄せています。
 
豪華な役者たちの共演も、見どころの1つ。
意外なことに、渡辺謙と佐藤浩市の共演は
これが初めてなんだとか、2大スターのガチンコの
演技対決にも注目してみてください!
クライマックスの対決は、オリジナルとは違った
銃と刀を使ったアクションが見せ場になっています。
 
今回、個人的に注目してほしいのは、
十兵衛たちに無理やりくっついてくるアイヌの若者
沢田五郎を演じている柳楽優弥です。
是枝裕和監督の「誰も知らない」で
カンヌ映画祭史上最年少の14歳で男優賞を受賞した
彼も23歳。野性味あふれる若者役を体当たりで演じています。
顔中ひげだらけで眉毛もつなってるみたいな
野性味あふれる男です。
昨今の日本の若い俳優にはない
「線の太さ」がある彼の今後には期待したいですねぇ。
 
今日ご紹介した映画「許されざる者」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
「許されざる者」オフィシャルサイト
 
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