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「そして父になる」

毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、本日から上映スタートの話題作
「そして父になる」です。
 
この映画、国際的に評価の高い是枝裕和 監督と、
俳優としてもミュージシャンとしても超人気者の福山雅治が
タッグを組んだこと。
 
さらに、今年5月に開催された「第66回カンヌ国際映画祭」で
「審査員賞」を受賞し、大変話題になりましたよね。
反響の大きさから、なんと公開日を予定より
繰り上げたというんですから
どれだけ期待されているか、分かりますよね。
 
さて、その内容ですが・・・。
福山雅治が演じる主人公・野々宮は、
大手建設会社に勤め、都心の高級マンションで
妻と一人息子と暮らすエリート。
 
しかしある日、6歳になる息子が出生時に病院で
取り違えられた他人の息子だと判明します。
その、もう一方の夫婦は、
地方で小さな電器店を営む、斎木家。
血のつながりを取るのか、
それとも一緒に暮らした時間を取るのか・・・。
究極の選択に苦悩する2組の夫婦を通して、
親子の絆とは何なのか、じっくりと迫っていきます。
 
是枝監督といえば、ドキュメンタリー出身であることを
生かした自然体の演出が特徴ですが、今回は特に、
主人公のキャラクターや生活に、
是枝監督自身が投影されているんだとか。
 
当初から福山雅治を主演に想定して書かれた脚本は、
撮影に入るまで日々書き直しを重ねて、30回以上にも
改稿されたそうです。さらには、撮影に入ってからも
度々書き直しをしていったそうです。
 
是枝監督の作品では、こういうことが珍しくないそうで、
俳優のフレッシュな演技で役柄がどんどん
膨らんでいくそうです。
ちょっと演劇的な作り方かもしれませんね。
 
是枝監督は、これまでも家族をテーマに作品を
作ってきた監督です。
先日も「許されざる者」で素晴らしい役者に成長した、
柳楽優弥くんが14歳にして、カンヌ映画祭史上最年少の
男優賞を受賞した2004年の代表作「誰も知らない」は、
育児放棄され子供たちだけで暮らす家族の物語でした。
 
2011年の「奇跡」は、この番組でも紹介しましたが、
熊本の川尻が重要な舞台として登場してきます。
九州新幹線でつながる家族の物語でしたね。
どの作品でも家族をモチーフにしながら、
現代という時代を丁寧に描いてきた作家が
是枝裕和監督なんです。
 
今回の「そして父になる」では、ドキュメンタリー的な
手法を存分に活かして、
2つの家族の関係性を見事に描写しています。
福山演じるエリートサラリーマンの野々宮の家族は、
都会の高層マンションで裕福に暮らす家族。
豊かな暮らしなんだけど、どこか寂しい雰囲気です。
 
一方、地方都市で小さな電気店を営む
リリー・フランキー演じるの斎木家は、
貧しいながらも家族を愛する優しい空気に満ちています。
このあたりの空気感は、映画でなければ描けないディテールの
細かさで表現されていますので、細部にも目を凝らして
体感してほしいものです。この2つの家族の格差を描くことで、
現代の日本社会の一面をあぶりだす狙いもあったのかもしれません。
 
子供を持つ方はもちろんですが、そうでない方も、
家族のつながりについて改めて考えさせられる作品。
「そして父になる」というタイトルがとても染みてくる
エンディングになっていますので、
最後まで主人公の気持ちを感じながら見てください。
福山雅治の新たな俳優としての魅力も楽しめる1本ですよ!
 
今日ご紹介した映画「そして父になる」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、本日から上映スタートです。
 
「そして父になる」オフィシャルサイト

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