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熊大ラジオ公開授業「知的冒険の旅」 山尾敏孝先生

あらゆるジャンルの注目の人にインタビューする
「ヒューマン・ラボ」。
 
今日から3ヶ月間にわたってスペシャル企画でお届けします。
題して「FMK Morning Glory  ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」。
 
毎回、熊本大学の先生を講師に迎えて、
さまざまジャンルの研究テーマについてお話をうかがいます。
第1回の講師は山尾敏孝先生です。

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Q お名前と職業・所属を教えて下さい。
 
名前:山尾敏孝
所属:大学院自然科学研究科・
大学教育機能開発総合研究センター長
 
プロフィール
学歴:熊本大学工学部土木工学科卒(昭和49年)
熊本大学大学院工学研究科土木工学専攻修了
 
職歴:工学部助手,助教授を経て平成7年に教授.
平成18年に大学院自然科学研究科の教授現在,
熊本大学教育機能開発総合研究センター長,工学博士
 
専門分野と研究:構造力学と耐震工学.
研究は主として,鋼構造物の座屈強度解析や
新形式橋梁の開発と実用化に関する研究,
鋼アーチ橋の耐震設計と実用化,
近代土木遺産の調査と評価及び保存活用の研究,
石橋の健全度評価と補修・補強に関する研究等.
所属学会と社会活動:土木学会,
九州橋梁・構造工学研究会,日本鋼構造協会,
国際橋梁構造工学研究会等に所属.
西日本高速道路(株)技術アドバイザー,
九地整橋梁保全検討委員会委員,
九地整TEC-DOCTOR,
熊本県文化財保護審議委員等。
 
Q 山尾先生の専門である「構造力学と耐震工学」とは、
どんな研究ですか、わかりやすく教えてください。
 
構造力学は連続体力学の一分野であり,
橋梁,建築物,船舶,航空宇宙機などの構造物が
荷重を受けたときに生じる応力や変形などを
解析するための力学である.一つの物体のときは
材料力学という.土木工学の分野では
根幹を成す学問分野です.
 
耐震工学は、地震による被害を防御・軽減するため,
安全・安心な人間社会を創出させるための
総合した学問分野.特に,鋼構造物が地震を受けた時の
変形挙動や応力状態を調べる耐震解析,
解析結果より耐震設計法の開発,
地震時の振動を抑える耐震・免震デバイスの開発などが
含まれます.構造力学の知識が根幹です.
 
Q 山尾先生がこの研究に取り組むことになった
「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。
 
・大学院生の時に、上司の教授が実施した鋼アーチ模型
(長さが3m)の面外座屈強度や耐荷力及び終局挙動を
調べる載荷実験に関わったことが、
大きなきっかけとなった。
この後鋼アーチ橋の研究につながった。
 
・耐震工学は兵庫県南部地震による大震災の現場を
調査した後です.静的な解析や実験のみでは
不十分であり、地震波を受ける動的挙動の解明が
重要であると認識した。
 
・近代土木遺産の調査を実施する中で、
石橋の代表である石造アーチ橋が壊れず長持ちし、
かつ住民に愛着が持たれている要因を探ることと、
石造アーチ橋が損傷を受けて傷んでいるが
大丈夫ですかと問われた時に回答できなかったのが
研究のきっかけである。
 
Q 先生の研究対象で熊本に実際にある建築物
(石橋)などをご紹介ください。
 
1.二俣橋(二俣渡と二俣福良渡):美里町にあり,
1830年ごろ釈迦院川と津留川の合流地点に建設,
スパン16.35mと15.26m,その後この橋近くに
コンクリート橋など3橋の計アーチ5橋.
 
2.大窪橋:美里町にあり,石橋のアーチ形状の
支間中央部分がとがっている.
 
3.霊台橋:美里町,重要文化財,1847年建設,
スパン28.3mは単一アーチでは
日本最大級の規模を有する単一の石造アーチ橋
 
4.通潤橋:山都町,重要文化財,1854年建設,
3列の石管路を有する日本最大級の水路橋,
石橋本体はスパン28.1m.
石管路は縦90cm・横60cm・長さ40cm~50cm
の石材に30cmの四角形状の孔と独自の漆喰による接合.
鞘石垣によるアーチ基礎部補強,壁石(高石垣)
の積み方,壁石同士を鎖石で繋ぐことで
補強するなど工夫がある。
 
5.天草5橋:三角から天草島々を繋ぐ1号の天門橋
(鋼トラス形式、全長502m)、2号の大矢野橋
(鋼ランガートラス形式、全長249.1m)、
3,4号の中の橋、前島橋
(PCラーメン形式、全長361m、516m)、
5号の松島橋(鋼パイプアーチ形式、全長178m)
 
Q 熊本は「肥後の石工」と呼ばれるほど、
昔から石材建築に関しては有名なようですが、
その理由などあるのでしょうか?
 
「肥後の石工」と呼ばれるようになった理由として
以下のことが考えられます。
 
1.「種山石工」と呼ばれる八代・種山出身の
石工・橋本兄弟,熊本市付近の島崎石工,
玉名の月田石工や天草の下浦石工など
多くの石工が存在
 
2.石橋を架けるには多くの建設費用が必要.
経済力を有する手永(てなが,行政区分)の
惣庄屋が事業主となり,木橋に代わる
永久橋である石橋の建設が促進した.
 
3.石橋は江戸末期から架設が始まり,
天草や人吉は明治期から大正期に多く架設.
架設も街道や往還などの道路のほかに,
灌漑用水路や井手や樋門と併設して架設
 
4.石橋造りに適した石材が,
阿蘇の噴火でできた溶結凝灰岩,
安山岩や砂岩がたくさん採取
 
Q これまでの活動を通じて、
最も印象深いエピソードをお願いします。
 
・3mの長さの鋼アーチ橋の模型を使用しての
載荷実験において、実験は9割が準備であること、
試行錯誤ばかりで、失敗の中から学ぶことが
たくさんあったこと。
実験は新たな知見を得るのに
非常に重要な役目を果たすことなど学んだ。
 
・近代土木遺産調査では、
明治から昭和20年までにできた日本の近代化に
貢献した歴史的構造物
(橋梁や隧道、水門、樋門、堰堤(ダム)・
堤防、河川、港湾など)が現地にあるかどうか
確認するため、九州5県の山道を車で調査し、
素晴らしい石橋や堰堤などの土木遺産に出会ったこと。
 
Q 今後の活動予定やPRしたいことなど
あれば教えてください。
 
・実石橋の模型を製作しての載荷実験や
実際の石橋の振動特性を測定する実験や車両載荷
実験の実施
 
・今年度も学生と一緒に第4回目の
ブリッジ・コンペティション
(橋梁模型製作・架設コンテスト)に参加して
良い成績を納めたが、次年度新しい学生と
一緒に参加したいので、学生達に参加を呼びかけたい。
 
この時間は、熊本大学の山尾敏孝先生を
講師に迎えてお送りしました。
 
以上、「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」でした。
 
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