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熊大ラジオ公開授業「知的冒険の旅」 滝川清先生

あらゆるジャンルの注目の人にインタビューする
「ヒューマン・ラボ」。
 
11月から3ヶ月間にわたって
スペシャル企画でお届けしています。
題して「FMK Morning Glory  ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」
 
毎回、熊本大学の先生を講師に迎えて、
さまざまジャンルの研究テーマについて
お話をうかがいます。
 
第6回の講師は滝川清先生です。

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Q①お名前と職業・所属を教えて下さい。
 
名前:滝川清
所属:沿岸域環境科学教育研究センター
 
Q②滝川先生の専門である「海岸環境工学」とは、
どんな研究ですか、わかりやすく教えてください。
また、「環境と防災の調和した
八代海再生プロジェクト」について教えてください。
 
「海岸環境工学」:
周りを海に囲まれ、厳しい自然環境にある我が国において、
国土とともに沿岸域に集中する人々の生命と
財産を守るための「海岸の工学」と、
「海岸環境の保全とその継承」を目的とする研究で、
「気象・海象・地象」と「人を含む生態系」に
関わる非常に広範な研究分野。
 
「環境と防災の調和した八代海再生プロジェクト」
◎研究背景と目的◎
八代海域は、人間活動の影響による自然・
生態環境の悪化、台風の常襲地帯による高潮・
高波、洪水、強風等による水・土砂災害の
防災問題にも直面しています。
 
そのため環境と防災の調和した沿岸地域社会の
創成に関する対応策の構築が、海域に面する
自治体や住民から切望されています。
 
そこで平成23年度から、有明海のように広範囲に
渡る詳細な調査・研究が行われていない
「八代海」を対象として、文部科学省特別経費
によるプロジェクト「生物多様性のある八代海
沿岸海域環境の俯瞰型再生研究プロジェクト
(代表:滝川)」が5カ年の予定で開始しました。
 
本プロジェクトは、地域に立地する熊本大学が、
長年にわたり取り組んできた海域環境の研究・
教育の実績に基づき、工学・理学・社会学等に
わたる学際的学術研究の展開と実証実験を
行なって、生物多様性のある八代海域の
俯瞰型再生の研究に取り組み、「環境・防護・
利用の調和した八代海の再生・創成」を目標として
多様な学術研究機能の発揮を目的としています。
 
◎研究計画および成果・波及効果◎
わが国で最も閉鎖度が高く、環境悪化が
有明海と同様に著しい「八代海」が抱える
環境再生と防災問題の緊急かつ重要な地域課題に
対し、これまでの有明海再生に取り組んできた
多大な研究・教育等の実績に基づき、
「環境と防災が調和し、生物多様性のある
八代海の再生・創成」を目標に、
従来は学術領域として分離していた「自然・生態」
「安全・防災」「開発・利用」の3領域の
総合化の視点「俯瞰型」を基本として、
 
①自治体等の視点に立った環境と防災の調和した
再生・創成ビジョンを樹立し、
 
②「海域環境変動と生物生息環境変動の把握」と
研究を基に、生物生産や生物群を維持できる
「生物多様性の沿岸域環境」を再生する
俯瞰型再生方法論を構築すると共に、
 
③この俯瞰方再生方法論に基づいて海域環境の
「未知事象の解明」
「環境変動の評価と予測手法の開発」
「生成技術の開発と実証」と学術研究を進展し、
 
④「自然・生態」「安全・防災」
「開発・利用」のバランスを考慮した、
環境と防災の調和に関する科学的アプローチの
視点から、沿岸海域環境の地域特性に応じた
「生物多様性のある沿岸海岸域環境の再生・
保全の実践マスタープラン」の策定を行う。
 
本プロジェクトの成果は、学際的学術研究を
もたらすだけでなく、地域還元・波及効果として
①海域環境の真の再生による生物多様性・
水産資源の回復及び増加による地域活性化、
②環境と防災の調和した安全・安心な持続性の
ある地域社会の形成、
③底質改善や水質改善技術の開発による
地域環境産業の振興など、大いに期待されています。
 
Q③滝川先生がこの研究に取り組むことになった
「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。
 
有明海の環境再生については、2000年冬の
「ノリ不作」依頼、国や研究機関を中心に
数多くの調査・研究が実施されてきており、
滝川も「有明海の再生プロジェクト
(略称):科学技術振興調整費(約4億円)」を
実施し多くの研究成果と国策に反映してきています。
 
しかしながら、八代海に関しては、
環境悪化が著しいにもかかわらず、
十分な調査・研究が進んでおらず、
不明な点が数多い状況にあります。
 
また、八代海は台風の常襲地帯で毎年、
高潮など海象災害の危険にさらされており、
災害に関する課題もあり、この相反する課題に
如何に対処するか緊急の課題です。
 
このような八代海の「環境と防災に関する
総合的研究と対策の提示」が不可欠であると、
長年来、考えてきておりました。
ようやく、23年度からの文部科学省からの
研究予算が認められ実施している現状です。
 
Q④これまでの活動を通じて、
最も印象深いエピソードをお願いします。
 
1999年9月の「不知火海高潮災害」:
災害直後の調査から、復興対策に当たっての国
・県等の委員長として、その対策の任に当たった。
想定最大高潮を基準とした新たな“減災”対策の
基本指針を策定した.
 
佐賀県の芦刈町では、我が国初の住民参加による
高潮ハザードマップ作成を指導するなど、
我国初の海岸災害の減災対策の理念を提言し,
熊本県および国の高潮減災対策の
基本方針として策定した.
これを受けて「熊本県海岸保全基本計画検討会
(委員長)」では防護・環境・利用の調和を
目指した基本計画を策定した.
 
さらに17年度の新規事業として熊本県では
複合型災害を想定して
「高潮・洪水浸水氾濫ハザードマップ策定
(減災プロジェクト)」が開始され,
この実施に際しての学術的指導・
提言を行っている.
 
「有明海・八代海の環境再生への取り組み」:
国土交通省の「有明・八代海海域境検討委員会
委員長(「海輝」および「海煌」調査の委員会)」
や農林水産省の「ノリ不作の第3者委員会委員,
同数値モデル部会委員長」,
 
また,これに引き続き環境省に設置された
「有明・八代海(等)総合調査評価委員会委員
(再生法に基づく国の諮問委員会),
同委員会に設置の海域再生対策検討小委員会
(委員長)」,水産庁の「有明海漁場
改善技術検討委員会委員」等々や熊本県の
「有明海・八代海干潟等沿岸海域再生検討
委員会(委員長)」などを通じて,
“海域環境のマスタープラン作り”に向けて
技術指導・政策提言等を行っている.
 
また,国土交通省や農林水産省などとの
共同研究をも数多く実施中で有明海・
八代海再生に精力的に取り組んでいる.
 
Q⑤今後の活動予定やPRしたいことなど
あれば教えてください。
 
①有明海・八代海の再生策のシナリオ策定:
環境省、国土交通省などの委員会の委員長の
重席にあり、その任に鋭意、尽力したい。
 
②八代海再生プロジェクトの推進:
現在、熊大で取り組んでいる
「八代海再生プロジェクト」のリーダーとして、
その成果をまとめ国策へと反映していく。
(平成23年~27年度の5年間の
プロジェクトで、あと2年間)
 
③NPO法人:みらい有明・不知火:
2002.6に設立のNPO法人の
理事長として、海域の環境・防災に関する
学術的調査・研究の推進、成果の提供を推進し、
環境と防災の調和を目指した
地域のあり方に関する活動を継続。
 
以上、「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」でした。
 
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