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熊大ラジオ公開授業「知的冒険の旅」 有馬英俊先生

あらゆるジャンルの注目の人にインタビューする
「ヒューマン・ラボ」。
 
11月から3ヶ月間にわたって
スペシャル企画でお届けしています。
題して「FMK Morning Glory  ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」
 
毎回、熊本大学の先生を講師に迎えて、
さまざまジャンルの研究テーマについて
お話をうかがいます。
 
第8回の講師は有馬英俊先生です。

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Q①お名前と職業・所属を教えて下さい。
 
名前:有馬英俊(ありまひでとし)
所属:熊本大学大学院生命科学研究部製剤設計学分野
プロフィール
昭和37年6月30日生まれ、福岡市早良区出身、A型
座右の銘
至誠にして動かざる者は未だこれ有らざるなり(吉田松陰)
かくすればかくなるものと知りながら
已むに已まれぬ大和魂(吉田松陰)
 
1991年熊本大学大学院薬学研究科
博士後期課程修了(薬学博士)
1991年エーザイ㈱入社筑波研究所配属
1993年東京薬科大学助手
1997年東京薬科大学薬学部講師
1998年熊本大学薬学部助手
2000年留学南カリフォルニア大学客員研究員
2001年熊本大学大学院医学薬学研究部助教授
2007年熊本大学大学院医学薬学研究部教授
2010年熊本大学大学院生命科学研究部教授
 
私の夢
シクロデキストリンやサクランを含む
医薬品の開発を基礎研究の面から支援することで、
病気で苦しんでいる患者さんやそのご家族に希望を与えたい。
 
Q②有馬先生の専門である「製剤学」とは、
どんな学問ですか、わかりやすく教えてください。
 
製剤学は製剤設計及びその調製方法ならびに
その製品について考える学問です。
製剤とは、医薬品などの有効成分に
医薬品添加剤を加えて、使用するのに適当な形に
製したもの、またはその工程をいう。
使用方法、有効成分の効果・安全性ならびに
安定性などを考慮してデザインされます。
日本薬局方第16改正では、製剤の種類には、
錠剤、カプセル剤、注射剤などをはじめとして
72種類が収載されています。
 
Q③有馬先生の専門である
「シクロデキストリンおよびサクランを
基盤分子とする統合型DDSの開発ならびに
医薬品への有効に関する研究」とは、
どんな研究ですか、わかりやすく教えてください。
 
シクロデキストリンはグルコースを構成成分とする
環状のオリゴ糖であり、分子内に世界で
一番小さな空洞を有し、その空洞に様々な
分子を取り込み、様々な分子の性質を改善する
ことができます。
この特徴を利用して、消臭芳香剤
(ファブリーズ、バウンス、レノア)、
ウイルス・細菌除菌・消臭スプレー
(I(アイ)のちから)、
高級シャンプー(エルセベ)、
食品(練りワサビ、焼チョコ、
きた味おにおんスパイスなど)、
機能性食品(コエンザイムQ10、α-リポ酸)、
飲料水(ヘルシア、カテキン緑茶など)、
化粧品(ビバーチェ)、医薬品
(プロスタグランジン、イトラコナゾールなど)、
などの領域で広く利用されています。
 
特に、医薬品の分野では、
医薬品分子の水への溶解性や安定性および
吸収性を高めたり、副作用の軽減を目的として、
約50の医薬品に利用されています。
超高分子多糖体サクランは、
日本固有の食用藍藻である淡水性の光合成微生物
スイゼンジノリが分泌する寒天状物質であり、
その構成単糖として、多くの硫酸基とカルボン酸基、
アミノ基を有する分子量2000万を超える
両性電解質の多糖体であります。
 
サクランは、既存の代表的な保水剤である
ヒアルロン酸の約10倍高い吸水性を有すること、
また、サクランは、優れたフィルムやゲルを
形成することから、新しい天然物成分として
期待されています。
さらに最近、大変興味深いことに、
サクラン自体が、抗炎症作用や抗アレルギー作用を
有することが見いだされ注目されています。
このような背景のもと、現在、我々は、
次のような研究を展開しています。
 
・シクロデキストリンによる
抗がん剤のがん細胞特異的デリバリー
・シクロデキストリン/デンドリマー結合体による
DNAやRNAの細胞特異的なデリバリー
・シクロデキストリン超分子複合体を用いた
タンパク質の安定化と徐放化
・サクランの抗炎症・抗アレルギー作用
メカニズムの解明
・サクラン含有化粧品の有効性評価
・シクロデキストリンとサクランの統合による
新規医薬品・ドラッグデリバリーシステムの構築
 
Q④有馬先生がこの研究に取り組むことになった
「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。
 
シクロデキストリンに関する研究は、製剤設計学分野
(当時、製剤学研究室)の前教授上釜兼人先生の
ライフワークであったこと、また、私が大学4年次に
製剤学研究室に配属されたことがきっかけです。
サクランに関する研究は、グリーンサイエンス・
マテリアル社長が、共同研究先に我々を選んで
頂いたことがきっかけです。
その後、2012年1月にサクラン研究会が発足し、
(現在、私が初代会長)いくつかの大学
(北陸先端科学技術大学院大学、高知大学など)、
企業(グリーンサイエンスマテリアルなど)と
共同研究を実施しています。
 
Q⑤これまでの活動を通じて、
最も印象深いエピソードをお願いします。
 
「薬学」という大きな学問体系の中の
「製剤学」という領域を私は担当しておりまして、
その「製剤学」の中で、特に
「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」に関する
研究を現在、専門分野として進めています。
そのDDSに関する研究の中で、私は、
「シクロデキストリン」および「サクラン」の二つを
基盤物質(中心的な物質)として位置づけ、
その2種を薬物キャリアとして用いることで、
薬の有効性・安全性・品質を最大限に高める
研究を行っています。
 
一方、このDDS研究を続ける中で、
我々の研究グループでは、シクロデキストリン自体が
「抗がん剤」、「ライソゾーム病治療薬」、
「アミロイドーシス治療薬」として期待できる
基礎的な知見が見いだされてきています。
 
また、サクラン自体も、ステロイド剤に
匹敵するほどの、抗炎症効果、抗アレルギー効果を
有することが見いだされてきています。
我々の研究を通して、シクロデキストリンや
サクランが将来、医薬品として開発され、
病気で苦しんでいる患者様やそのご家族の
皆様に希望を与えられればと思っています。
 
また、我々の研究を通して、
サクラン含有化粧品や白髪染めなどが商品化され、
世の中の役にたっていることはうれしい限りです。
 
Q⑥今後の活動予定や
PRしたいことなどあれば教えてください。
 
シクロデキストリン含有医薬品および
サクラン含有医薬品の開発を成功させたい。
シクロデキストリン研究拠点およびサクラン
研究拠点を熊本に作りたい。
シクロデキストリンおよびサクランに
関する相談は、常時、受け付けていますので、
お気軽にご相談下さい。
 
リーディング大学院HIGOプログラム
 
以上、「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業・知的冒険の旅」でした。
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