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「小さいおうち」

毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
今日ご紹介するのは、現在公開中の「小さいおうち」です。
 
日本映画の巨匠・山田洋次監督の最新作となるこの作品。
通算82本目の監督作品。
キャリアの長い山田監督ですが、
デビューは1961年のコメディ「二階の他人」。
1968年からは大ヒットシリーズ「男はつらいよ」の監督を
1995年まで担当し、ギネスブックにも載りました。
その後は、「たそがれ清兵衛」からのはじまる
時代劇三部作やシネマ歌舞伎など
新しいジャンルの映像作品も担当。
ここ数年は、「おとうと」「東京家族」と現代劇が続きました。
どの時代の山田作品を観るかで
かなり印象は違ってくるかもしれません。
 
どの時代の映画を観るかによってイメージは
かなり違ってきますが、どの作品にも共通するのは、
登場人物を見つめる優しいまなざしです。
あの寅さんですら、
単なるバカなキャラクターとしては描かれていません。
周りの人の気持ちを深くおもんばかる繊細な
登場人物が山田映画の真骨頂です。
 
今回は、82作目の監督作品で、
初の本格ラブストーリーということでも話題です。
原作は、第143回直木賞を受賞した、
中島京子の小説。
これを読んだ山田監督がぜひ映画化したいと、
熱いラブコールを送ったんだそうです。
 
舞台は、昭和初期。
山形から上京したタキは、東京の郊外に建つ、
少しモダンな赤い三角屋根の家、
平井家に女中として奉公します。
そこには、おもちゃ会社に勤める主人と
優しい奥様・時子と可愛い坊ちゃんが暮らし、
タキは、若くおしゃれな時子に憧れていました。
しかし、おもちゃ会社のデザイン部に勤める
板倉という男が出入りするようになり、
次第に板倉と時子は惹かれあっていきます。

・・・それから60年後の現代。
タキの親類である健史は、
タキが大学ノートに綴った自叙伝を読み、
長く封印されていたある秘密にたどり着きます。
果たして、その真相とは・・・?
 
時子を演じるのは、山田監督とは「隠し剣 鬼の爪」以来
7年ぶりのタッグを組む、松たか子。
タキには、野田秀樹の舞台で活躍するなど、
今大きな注目を集める若手女優、黒木華。
物語の鍵となる板倉を、吉岡秀隆が演じます。
そのほか、妻夫木聡、倍賞千恵子、
片岡孝太郎など、脇を固めるキャストも豪華です。
 
山田監督は、「戦前の東京の庶民の暮らしを再現したい」と、
舞台となる赤い三角屋根の家の外観や内装にかなりこだわったとか。
レトロモダンな室内や和風と洋風が入り混じったインテリアなどは、
女性が見たらきっと憧れを抱くのではないでしょうか。
 
おしゃれな昭和レトロだけが見どころではありません。
今回の映画では、ドラマの背景として描かれる
「戦争」についての描写にかなり鋭いものがありました。
この映画の時代は、中国との戦争がはじまった昭和初期の時代。
庶民が戦争をどう考えていたのか?
現代の感覚からすると驚くようなセリフがたくさん登場します。
戦争のニュースを語りながら・・・
「わが社ももっと儲かるようになる・・・期待できるぞう!!」と
ある人物が語るシーンがありますが、
これが当時の偽らざる庶民の姿だったのかもしれません。
宮崎駿監督の「風立ちぬ」も、戦場をまったく描かない
強烈な反戦映画でしたが、この山田洋次作品も戦場の
出てこない戦争映画とも言えるかもしれません。
 
最後にもう一つ、この映画は、フィルムで撮影されています。
ハリウッドも含め、世界中の映画界が
ここ数年ですべてデジタル撮影に切り替わったことを考えると、
あえてフィルムで撮影するということは
かなり贅沢な映画作りなんです。
山田監督としては、映画人としてのこだわりが
このフィルム撮影に込められているんでしょうね・・・・。
もちろん、山田監督の繊細な演出に応えた、
役者さんたちの演技が素晴らしいのでお見逃しなくです。
 
特に予告でも一部分、流れていた、
タキが時子に意見するクライマックスシーンは見もの!
ぜひ、その素晴らしい演技をスクリーンで確かめてください!
 
今日ご紹介した映画「小さいおうち」は、
■Denkikan 
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
「小さいおうち」オフィシャルサイト 
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