「第二ぎんなん作業所」施設長 木村武さん
あらゆるジャンルの“注目の人”にインタビューする
「ヒューマン・ラボ」。
今日は熊本市中央区にあります「第二ぎんなん作業所」
こちらで作られている「肥後の竹 カレースプーン」が
「oto GP 2013」グランプリを受賞しています。
作業所の活動について詳しく伺いました。
Q①ご出演の方のお名前と職業・所属を教えて下さい。
名前:木村武
所属:第二ぎんなん作業所施設長
プロフィール:
s.43.3熊大教育学部卒業
s.43.4~熊大教育学部附属養護学校勤務(37年)
h.17.3定年退職
h.17.4~第二ぎんなん作業所勤務(9年)
ホームページ、ブログなど:
Q②「第二ぎんなん作業所」の基本情報を教えて下さい。
・名称:社会福祉法人熊本市手をつなぐ育成会
第二ぎんなん作業所(就労継続支援B型事業)
・住所:熊本市中央区新屋敷3丁目9-7
・TEL/FAX:096-371-9381
Q③「第二ぎんなん作業所」とは、
具体的にどんな目的で活動をしている組織ですか?
現在、所属している人数は?
第二ぎんなん作業所は、就職できずに在宅している
子ども達の日中活動の場として熊本市手をつなぐ育成会
(知的障がいのある子どもを持つ親の団体)で
「第一の作業所は?」とよく尋ねられる事がありますが、
最初は「ぎんなん作業所」として昭和52年に開設されました。
当時は、親子一緒に活動する場として親の手で運営され、
多くの人が通所していましたが、一方で、公的な
通所施設の設置の要望も高まり、念願かなってできたのが
熊本市の「はなぞの学苑」です。
作業所に通所していた23名は、全員そちらに移り、
役目を終えた作業所は、昭和57年、
4年半の歩みを閉じる事になりました。
でも、重い障害のある子どもの卒業後の問題が
無くなったわけではなく、再度、作業所づくりを
めざして作られたのが今の作業所です。
2番目の作業所なので第二ぎんなん作業所となっています。
昭和59年からスタートし、
今年の12月には30年の節目を迎えます。
今、作業所は「就労継続支援B型事業」として
定員「20名」の指定を受けていますが、
現在、知的障がいのある方20名が通所し、
みんなの「働く場・生き甲斐づくりの場」
として活動を続けています。
仕事の内容は、木竹工作業の他、
新聞やアルミ缶を回収するリサイクル作業、農園芸、
家庭へ出掛けて草取りや剪定などのお手伝いをする
受託作業、熊本市から委託された文書集配業務など
5つの作業に取り組んでいます。
また、地域への貢献活動として週に一度(金)、
町内清掃も行っています。
職員は、私を含めて常勤が4名。
それに生活支援や熊本市文書集配ドライバーの方など
の非常勤が6名(常勤換算2.8名)いますので
全部で10名体制で運営している事になります。
Q④昨年、「第二ぎんなん作業所」が作る
カレースプーンが受賞をしたそうですが、どんな賞なののか?
どんな点が評価されたのか?詳しく教えてください。
はい、9月に行われた
「熊本市障がい者施設商品コンクール」で思いがけず
グランプリをいただく事ができました。
これは、「障がい者施設商品の品質向上や工賃アップ」
を図ることを目的に熊本市で初めて行われたもので、
「食品」「手工芸品」「アート」の3部門に、
24施設から59点の応募があり、品質やデザイン、
市場性、独自性などで各部門の「最優秀賞」が選ばれ、
今回、作業所からは「竹べらセット」「カレースプーン」
「バターナイフ&ジャムスプーン」の3点を出品しましたが、
その中のカレースプーンが手工芸品部門の最優秀賞、
それにグランプリまでいただいきました。
「手づくりの感じが温かく、値段も安く、
製品としての需要も高い」という選考理由のようでしたが
Q⑤今回のカレースプーンが完成するまでの
エピソードなどありましたら、お願いします。
竹製品を作り始めて9年になりますが、
当初、作業所に備わってる道具や設備を使って
何を作ったものかと思案していた頃、
家内がこんなのはどうかと提案してくれました。
それは、竹細工を趣味にしている方からもらった
手づくりの竹べらで、早速それを参考にして
作ることにしました。
でき上がった製品を地域に売りに行くと直ぐに
20セット程売れ、100円玉を沢山手にした
仲間が喜んで作業所に帰ってきた事がありましたが、
「作った物が売れる」ということを利用者と共に
味わったその出来事は、作り始めた当時の
忘れられない思い出の一つです。
その後、育成会の50周年の記念品として
沢山の注文があったりして、売り上げはどんどん
アップしていきましたが、なにせ、調理用竹べらは、
一度買ったら5年、10年と長く使える品物でしょう。
売れ行きの先細りの心配もあり、新たな製品作りに
アタックしなければならなくなりました。
物事には、タイミングというものがあるようで、
次に、箸作りに取り組み始めたばかりの頃、
ある料理店の店長が作業の様子を見に来られ、
店で使うことを条件にあれこれ作り方に
注文を付けられました。
この「注文」こそが作業所の箸の作り方の原点に
なっています。手触りがよく使い易いという評判です。
孟宗竹の下部の肉厚の所は竹べらやしゃもじに。
中間の所はお箸に。
先端の厚みの少ない所の使い道は?と考えていた頃、
親切な方が「こんなのがあったよ」とお土産に
バターナイフを持ってきてくださいました。
それでバターナイフも作り始めました。
居酒屋の女将さんから、おでんにからしを塗るための
小さなスプーンの注文があり、それを機に
スプーンセットを作り、そして、カレースプーンと
種類はだんだん多くなってきました。
製品開発のポイントは、「縁とニーズと素材と技量」の
組み合わせであることを再認識している昨今です。
Q⑥このカレースプーンは、現在は購入できないのですか?
今後販売の予定などありますか?
もちろん、販売はしています。
グランプリ受賞に伴った東急ハンズでの3ヶ月
限定販売が終了しただけで、現在、カレースプーンは、
熊本市の現代美術館のミュージアムショップに
置かせてもらっています。現代美術館の売れ行きは、
当初納品した20個の在庫が残り少なくなり、
先日また追加納品しました。
また、今回の受賞はPR効果が高く、暮れには、
カレースプーン200個の大口注文の問い合わせが
ありました。
でも、1ヶ月に200個など到底できるものでもなく、
お断りせざるを得ませんでした。
Q⑦このカレースプーン以外も、
いろんな商品を作っていらっしゃるようですね。
ほかの商品などを紹介してください。
それでは、紹介します。
それに「しゃもじ、味噌ベラ、釜ベラ、ジャムスプーン」
などの生活用品から、ニャンコの手、竹トンボ、
数年前から大江小学校のえのき祭りに出展案内を
頂いていますので、小学生相手でもあり、
1個100円と安くしています。
この中で、先ほどの現代美術館で販売しているのは
「カレースプーンとスプーン」だけです。
もう一ヶ所、熊本県物産館にも置いています。
そこは、10月から3ヶ月の期間限定販売でしたが、
売れ行き好調という状況から、
1月から再度の販売延長になっています。
陳列スペースの都合で沢山は置けない為、現在
「調理用竹べらセット、なじみ箸、バターナイフ、
ジャムスプーンセット、トング」の5商品を
置かしてもらっています。カレースプーンは、
こちらとの委託販売交渉がコンクールの前だった事もあり、
残念ながら、そこには今のところ置いてありません。
その他には、県庁の中にある県育成会で経営する
「喫茶りんどう」にも一部置かしてもらっています。
また、新屋敷の作業所には、全ての製品を揃えています。
でも、この頃、商品の注文や売れ行きが多くなり、
生産が間に合わない状況です。
注文があれば、直ぐにという訳にはいきませんが、
優先的に対応し、精一杯頑張って作りますので、
お問い合わせいただければ幸いです。
Q⑧これまでの「第二ぎんなん作業所」活動の中で、
最も印象深いエピソードをお願いします。
第二ぎんなん作業所の30年の歩みの中で、
私が関わったのは9年です。
教育という場から福祉という場に移り、
何もかもが新しい経験の中で試行錯誤しながら
歩んできましたので、どれもこれも印象深いもので
比べようもありませんが、今回のグランプリ受賞は、
私の冥土の土産になるといってもいい出来事でした。
木竹工作業チーフとしては大満足しています。
Q⑨活動を通じての苦労、やりがい、
これからの夢などあれば教えてください。
苦労というほどのものではありませんが、
製品作りを行う上で作業所ならではの
大切なポイントがあります。それは、仲間のみんなが、
それぞれの持てる力を発揮し、製作に参加できる
工程分析を行う事です。
同じ長さに切る、一定の幅に割る、表皮を削る、
ナタで形の粗作をする、仕上げの磨きをする」等の
適材適所を決め、各々に必要な補助具を開発し、
仕事の喜びが味わえるようにする事が必要不可欠です。
もちろん、私もその行程の一部を担います。
共に製作する協同体制を整え、
みんなが笑顔で頑張る姿を実現すること、
それが支援者の役割と思っています。
これからも、楽しい、
笑顔一杯の作業所にしていきたいですね。
Q⑩熊本県民に
PRしたいことなどあれば教えてください。
そんな大げさなことはありません。
第二ぎんなん作業所は、長いこと市から土地・建物を
無償で貸していただき、これまで熊本パイロットクラブや
ソロプチミスト熊本すみれの皆さまはじめ、
資源物回収の協力者やボランティア、
地域住民の方など多くの方々の協力をいただきながら
活動を続けてくることがてきました。
第二ぎんなん作業所の老朽化の問題もありますが、
今後も、この新屋敷の地で、地域とのつながりを
大切にした利用者の為の作業所が永く継続されて
いくことを願って終わりにしたいと思います。
今日は熊本市中央区にあります「第二ぎんなん作業所」
施設長の木村武さんがゲストでした。