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「大統領の執事の涙」

毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「大統領の執事の涙」です。
 
世界を動かしているといっても過言ではないほど、
大きな影響力を持つアメリカの大統領。
この映画は、7人の大統領に仕えた
1人の黒人執事の姿を描いた作品です。
ハリウッド映画では、よく大統領が登場します。
去年このコーナーで紹介した「リンカーン」のように
歴史に名を残す偉人もいれば、「ホワイトハウス・ダウン」に
登場したジェイミー・フォックスのような
バズーカ砲を撃つ戦う大統領もいます。
 
とにかくアメリカ国民にとって大統領とは特別な存在なんですね。
この「大統領の執事の涙」は、我々がよく知る
実在のアメリカ大統領の意外な素顔を描いた
作品としても興味深い一作です。
 
主人公は、アメリカ南部の綿花畑の奴隷として生まれた、
セシル・ゲインズ。
ある事件から両親を失った彼は、一人で生きていくため
見習いからホテルのボーイとなり、その働きぶりが認められて
大統領の執事にスカウトされます。
以来30年間、大統領のそばで、
様々な世界的事件を目の当たりにしてきたセシル。
彼の家族もまた、激動の時代に翻弄されていきます。
 
この作品は、アメリカの新聞・ワシントン・ポストに紹介された
ユージン・アレンという実在のホワイトハウスの執事の記事をもとに、
史実とフィクションを組み合わせて作られたもの。
アレン氏が実際に執事として働いていた
1950年代~80年代という
アメリカの激動の時代を背景にしています。 
 
ポイントとなるのが、執事セシルと息子2人とのエピソード。
ホワイトハウスで白人に仕える父を恥じて
公民権運動の活動家になった長男と、
対照的に国のためにベトナム戦争に志願する次男。
時代に翻弄される家族の姿が丁寧に描かれ、とても感動的です。
アメリカ近代史を描いて高い評価を受けた
アカデミー賞作品「フォレスト・ガンプ」が、
あまり描いていなかった黒人の公民権運動について、
この作品では詳細に描かれています。
多くの映画批評家から“黒人版フォレスト・ガンプ”と評されました。 
 
主人公セシルを演じるのは、「ラストキング・オブ・スコットランド」で
アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いた名優、フォレスト・ウィテカー。
セシルが仕える大統領を、ロビン・ウィリアムズ、
ジェームズ・マースデン、ジョン・キューザックなどが演じ、
それぞれの大統領っぷりで楽しませてくれます。
 
特に注目して見てほしいのが、
ロナルド・レーガン大統領を演じたアラン・リックマンです。
「ハリー・ポッター」シリーズでスナイプ先生を演じた
彼がロナルド・レーガンの口調まで忠実に再現していて
びっくりします。しかもナンシー夫人を演じるのは、
往年の名女優ジェーン・フォンダです。
実生活ではリベラルな政治活動家としても有名な
ジェーン・フォンダが、まったく逆の共和党の
ファースト・レディをユーモアたっぷりに演じています。
 
もうひとつ見どころを紹介しますと、
ジョン・F・ケネディ大統領の家族がとても重要な
役どころで登場してくるんですが、
ケネディ家の長女としてかわいらしい女の子が登場してきます。
主人公セシルが絵本を読んであげるような
名シーンも登場してくるんですが、この少女こそ、
現駐日アメリカ大使・キャロライン・ケネディさんの
少女時代なんです。
 
学校の授業などでは、とても退屈に感じるような
アメリカの近代史を、2時間でよく分かるように解説してくれて、
しかも感動させてくれるドラマチックな作品です。
この作品を観た後に、「フォレスト・ガンプ」、
「JFK」、「マルコムX」など同時代を描いた作品などと
比較してみるのも楽しいかもしれません。
 
今日ご紹介した映画「大統領の執事の涙」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■シネプレックス熊本
で、現在公開中です。
 
「大統領の執事の涙」オフィシャルサイト
 
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