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「チョコレートドーナツ」

毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、
現在公開中の「チョコレートドーナツ」です。
 
この映画、いま各方面でかなり話題になっている
映画なので、ご存知の方も多いかもしれません。
4月に東京の「シネスイッチ銀座」1館だけで公開されると、
これが評判を呼んで驚異的なヒット!
スターも出ていないし、大量宣伝をした訳でもないのに、
観た人の口コミで広がっての大ヒットとなったのです。
公開劇場は瞬く間に増え、
ついに熊本でも待望の公開となりました!
 
「シネスイッチ銀座」は、80年代に
「ニュー・シネマ・パラダイス」を大ヒットさせたことで
有名な映画館です。
この映画「チョコレートドーナツ」も
そんな単館系映画ファンたちの口コミによって
ヒットした最近では珍しいタイプの映画です。
世界中の映画祭で10以上の「観客賞」を受賞したことも、
映画評論家でなく、
映画ファンが支持した映画だという証となっています。
 
舞台は1979年のアメリカ・カリフォルニア。
歌手を夢見ながらショーダンサーとして働くルディと、
弁護士のポールはゲイのカップル。
ルディのアパートの隣の部屋には、
ダウン症の少年マルコが住んでいますが、
母親が薬物所持で逮捕され、一人残されてしまいます。
ルディとポールは残されたマルコを保護し、
一緒に暮らすうちに家族のような愛情が芽生えていきますが、
彼らがゲイカップルということが知られると、
周囲の差別と偏見にさらされ、マルコを奪われてしまいます。
裁判によって、マルコを取り戻そうとする二人ですが、
法律という厚い壁が、
彼らの前に立ちはだかることになるのですが・・・・・・。
 
この映画の脚本は、今から20年ほど前、
実際にあった話をもとにして書かれたものだとか。
ニューヨークに住む脚本家の近所に住んでいた
ゲイのカップルがモデルだそうです。
出来上がった脚本は、いろんなスターや映画関係者が
映画化しようとしたそうですが実現には至らず、
ふとした縁でこの脚本と出会ったトラビス・ファイン監督の
手によって2012年ようやく映画化が実現しました。
 
物語の設定とタイトルから、ほのぼのとしたかわいい話を
想像されるかもしれませんが、同じチョコレートでも、
ミルクと砂糖控えめの、ほろ苦いビターチョコレートな
味付けです。
 
マイノリティに対する差別は、だいぶ改善されているとはいえ、
今も根深いですし、日本ではまだまだ性別や
家族の役割に対する古い考えが残っています。
ルディとポール、マルコの関係は、
そんな背景を超えたピュアなものだからこそ、
人々の胸を打つのかもしれません。
登場人物に寄り添うように物語が進行していくので、
これは映画なんだとわかってはいても、
観客は、彼らを友人のように思ってしまいます。
彼らに不幸になってほしくない・・・・・
彼らの幸せを願ってしまう・・・・そんな映画なのです。
 
ルディを演じるアラン・カミングの素晴らしい歌声も、
映画の魅力の1つ。音楽にも注目してほしい1本です。
彼は、ミュージカル「キャバレー」でトニー賞主演男優賞も
受賞したことがある実力派の俳優なので、
歌で登場人物の心境を表現するは得意中の得意。
映画の中でたくさん歌うシーンが出てくるんですが、
登場人物の心境と歌詞がシンクロしている曲が
選ばれているのが心憎い演出です。
ちゃんと歌詞も字幕表示されますので、見逃さないでください。
そして、なんと言ってもマルコを演じた
アイザック・レイヴァくんが素晴らしいです。
実際にダウン症の彼が、プロの俳優として活動するのには、
いくたの苦労があったと推測されますが、
その天使のような微笑みに、映画を観た人は
みんなファンになってしまうはずです。それくらい
彼の笑顔はこの映画の重要なポイントになっています。
彼がドーナツを食べて、たったひとこと「サンキュー」という
シーンがあるのですが、そこに込められた複雑な心境を
見事に表現していますので、ここもお見逃しなく!
 
今日ご紹介した映画「チョコレートドーナツ」は、
■Denkikan
で、現在公開中です。
 
「チョコレートドーナツ」 オフィシャルサイト
 
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