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「夢は牛のお医者さん」

 
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、
現在公開中の映画「夢は牛のお医者さん」です。
 
この作品は、1人の少女の夢の始まりから現在まで
なんと26年間の長きに渡って密着したドキュメンタリー映画です。
 
そもそもの始まりは、1987年、新潟県の山あいにある小さな小学校に、
3頭の子牛が入学したこと。地元のテレビ局「テレビ新潟」が、
ニュース番組の企画として密着取材を始めました。
当時小学3年生だった少女・知美さんは、3頭のうちの1頭を担当し、
毎日世話をするうちに、「獣医になりたい」という夢を持つようになります。
 
当時、番組のテーマは「素朴な学校とピュアな子供たち」で、
知美さんにスポットを当てたものではなかったため、
彼女が小学校を卒業し、学校が廃校になると、
カメラはいったん彼女から離れます。
 
それから4年後。
高校生になった知美さんは、獣医師になる夢に向かって、
親元を離れて遠くの高校に通っていました。
カメラはここから、夢に向かって奮闘する知美さんに
スポットをあてていきます。
「テレビを見ない」と決めた高校生活、大学受験、国家試験。
そして、見事夢を叶えた知美さん。
普通の映画なら、ここで感動的なエンディングとなるところですが、
この映画は終わりません。夢は叶ったところがスタート地点。
仕事の喜びや厳しい現実、難しさに向き合いながら、
獣医として、成長していく知美さんの姿が描かれます。
 
幼いころに「なにかになりたい」という夢を持ったとしても、
それを実際に叶えるのはかなり難しいものですよね。
それを実現した知美さん、そして26年間も密着取材を行った
スタッフ。その思いの強さに素直に感動を覚えます。
AKB48の横山由衣がナレーションを担当したことも話題です。
観た後に元気をもらえる1本ですよ!
 
1987年から現在まで、一口に26年間と言いますが、
この26年間は、撮影技術も劇的に進歩した時期です。
映画の冒頭では、解像度も低い映像なのですが、
年月が経つにつれ、画像も鮮明になり、
画面のサイズも大きくなってゆきます。それと同時に、
画面の中の知美さんも、成長してゆくのです。
ある時代の映像記録としても、
とても貴重なものになったのではないでしょうか?
 
ここのところ、映画館でさまざまなドキュメンタリー作品が
上映されるようになりました。
昔は、ビデオで撮影しても、映画館で公開するためには、
フィルムに焼くという作業が必要でした。
このフィルム化するという経費がかなり高いので、
興行収入があまり見込めないドキュメンタリー作品は、
東京の一部の劇場で細々と上映されるという扱いでした。
 
ところが、最近の映画館は、デジタルデータを
そのまま上映できるシステムが設置されている劇場が
多くなったので、デジタルで撮影されたものを、
デジタルでそのまま上映できるようになりました。
フィルムに焼く経費も節約できるので、
多くの映画館で高品質のドキュメンタリー作品が
上映可能になったのです。
ハードの進歩が、ソフトの流通形態まで
変革してしまったということですね。
この作品も、そんな1本と言えると思います。
テレビでみるドキュメンタリーとは、また一味違った
映像体験ができますので、是非、劇場で観てもらいたい作品です。
 
今日ご紹介した映画「夢は牛のお医者さん」は、
■Denkikan
で、現在公開中です。
 
「夢は牛のお医者さん」オフィシャルサイト
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