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「ジゴロ・イン・ニューヨーク」

毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の
「ジゴロ・イン・ニューヨーク」です。
 
この映画は、コーエン兄弟やスパイク・リー監督の
映画の常連俳優として知られる個性派俳優のジョン・タトゥーロ。
1991年の映画「バートン・フィンク」では
カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞したこともある彼、
最近は「トランスフォーマー」シリーズでコメディタッチの
演技で政府の秘密組織のエージェントを演じています。
そんな個性派俳優の彼が、
今回、主演・脚本・監督をつとめている作品です。
さらにもうひとつ注目すべきポイントは、
なんとウディ・アレンが、自分の監督作以外では
14年ぶりに俳優として出演しているんです。
 
舞台はニューヨーク。
倒産寸前の本屋の店主・マレーは、
危機を乗り越えるために、友人のフィオラヴァンテを
ジゴロに仕立て上げ、それでビジネスをすることを思いつきます。
要は、「男版売春婦」なのですが、このジゴロは、
セックスを売り物にするそこらのマッチョなジゴロと
まったく違っていました。
女性の心に寄り添うクールでやさしいジゴロだったのです。
意外にもクールでダンディなジゴロぶりが好評で、商売は大繁盛!
そんな中、フィオラヴァンテは、お客として出会った
敬虔なユダヤ教の未亡人アヴィガルと恋に落ちてしまいます・・・。
 
本屋の店主・マレーを、ウディ・アレン。
監督をつとめるジョン・タトゥーロが、ジゴロを演じています。
ジゴロというと、2枚目俳優が演じることが多かったんですが、
お世辞にもカッコいいとは言えないタトゥーロが演じているのがミソ。
対する女性陣は、お客の女性医師にシャロン・ストーン、
ユダヤ教の未亡人には、フランスの小悪魔ヴァネッサ・パラディ!
長いことジョニーデップのパートナーとして、
おしどりカップルだった彼女。二人の間には
2人の子供がいたのですが、2012年に破局。
バネッサは女優として本格活動をすることになります。
国際的スターの彼女ですが、英語を話す役は、
今回が初だったそうです。今回、戒律の厳しい
ユダヤ教の未亡人の役を演じているのですが、
アメリカ人には出せない不思議な雰囲気をだしていて、
これはキャステングの勝利と言えそうです。
その他、個性的なキャストたちが、
経験を重ねた大人ならではの、
味のあるやりとりを見せてくれます。
 
最初にジョン・タトゥーロがこの物語を思いついたのは、
友人とのランチの席。
即興で思いついた話があまりに受けるもので、
そのアイディアを何人かの友人に話して聞かせたところ、
その中にウディ・アレンを担当している理容師がいたそうです。
ウディ・アレンはこの物語をとても気に入り、
ジョン・タトゥーロに連絡をとってきたそうです。
それからジョン・タトゥーロが脚本を書き、
ウディ・アレンがアドバイスするという形で
ストーリーを練り上げていったそうです。
時間をかけて練り上げた物語だけあって、
登場人物のキャラクターが、どれも奥深くて実に面白い映画です。
 
特に主人公のジゴロの行動が細部にわたって
細かく演出されています。
決してイケメンではない彼の行動が、
女性の心をつかんでいく様子は、
とても面白くロマンティックです。
女性の観客は、理想の男の姿を観るでしょうし、
男性の観客は、「こういう風な行動がモテるんだ!」と
わかることでしょう。
 
大人の恋愛マニュアルとしても、
かなりハイテクニックが満載の映画です。
例えば、主人公のジゴロは、花屋でバイトしているので、
お客の女性のところに「花束」を持っていくんですが、
これが日本の生け花風の花束なんですね。
イケメンじゃない男だからこそ、この「花束」が
ロマンチックに見える。計算じゃなくこういう行動が
自然とできる主人公がモテるのは当然でしょうね。
日本人だと照れてしまうような行動もサラッとやれるのが
モテる極意なのかもしれません。
 
また、映画には、ニューヨークの素敵な場所が
たくさん登場してきます。ウディ・アレン演じるマレーが
経営する希少本専門の本屋さん、
ジゴロが昼間にバイトするお洒落な花屋さん、
ジゴロのお客さん達が住んでいる超高級マンションなどなど。
観光地的な場所は出てきませんが、
ニューヨーカーの生活が垣間見えるような
素晴らしい景色がたくさん登場してきます。
 
そして、この映画のもう1つの見どころが音楽。
ジャズが好きというタトゥーロが、
脚本を書く時によく聞いていたという曲が
本編でも使われていて、
映画の小粋な雰囲気を演出しています。
 
秋の入り口にピッタリの、
笑えてちょっと切ない、大人のラブストーリーですよ!
 
今日ご紹介した映画「ジゴロ・イン・ニューヨーク」は、
■Denkikan
で、現在公開中です。
 
「ジゴロ・イン・ニューヨーク」オフィシャルサイト
 
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