「ぼくを探しに」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
今日ご紹介するのは、現在公開中の「ぼくを探しに」です。
さて、朝晩もだいぶ涼しくなり、
熊本もずいぶん秋めいてきました。
秋と言えば芸術の秋!この作品「ぼくを探しに」は、
今の季節にぴったりのパリのお洒落な香りがするような1作です。
この映画の監督は、シルヴァン・ショメ。フランスを代表する
アニメーション作家で、2002年に発表した
「ベルヴィル・ランデブー」と2010年の「イリュージョニスト」では、
アカデミー賞の長編アニメーション部門にノミネートされるなど、
世界的に高い評価を得ているヨーロッパ・アニメ界の巨匠です。
今回の「ぼくを探しに」は、そんな彼が初めて手掛けた
長編 実写映画 なんです。
アニメと実写の両方を作る監督というのは、
かなり珍しい存在ですが、これまでも何人かの監督が
チャレンジしていますが、
両方を成功させるのはなかなか難しいようです。
「アリス・イン・ワンダーランド」
「チャーリーのチョコレート工場」などのヒット作がある
ティム・バートン監督は、もともとディズニーのアニメーターだったので、
実写映画を監督しても、どこかアニメーションのような
カラフルさがあります。
日本だと、巨匠・市川崑監督が、昔アニメーターだったという
キャリアがあります。有名な絵コンテは、
まるで漫画のような達者タッチだったそうです。
「ぼくを探して」のショメ監督は、アニメーション界で
リスペクトを集める巨匠です。あのジブリの高畑勲監督も
ショメ監督の才能を絶賛していて、
ショメ監督の作品の日本版DVDはスタジオ・ジブリ・ライブラリーから
リリースされています。
そんなショメ監督が実写にチャレンジしているということで
世界的に注目されたのが、この「ぼくを探しに」です。
物語の主人公は、ピアニストのポール。
幼いころに両親を亡くしたショックから
言葉を発することができなくなり、孤独な日々を送っていました。
そんなある日、ポールは同じアパルトマンに住む謎めいた女性、
マダム・プルーストに出会います。
彼女がいれる、記憶を呼び覚ます不思議な
ハーブティの力を借りて、ポールは失われた
記憶をたどることになるのですが・・・。
この映画のプロデューサー・クローディ・オサールは、
日本でも大ヒットした「アメリ」のプロデューサーです。
今回の「ぼくを探して」は、男の子版「アメリ」とも言える作品で、
豊かなビジュアル・イメージに加えて、美味しそうな食べ物も
たくさん登場してきます。「アメリ」では、
クレーム・ブリュレが日本でも大ブームになりましたが、
この映画で登場するのは、「シューケット」。
ティータイムに欠かせないフランスを代表する庶民的お菓子です。
不思議なハーブティのシーンで何度もこのお菓子が
登場してきますので、注意して観てくださいね。
もちろん、お菓子のシーンだけでなく、
ダンスシーンやミューカルシーンなど、
映像はとてもカラフルで個性的です。
夢の中で繰り広げられる、ファンタジックな
ミュージカルやカエルの楽団などはもちろん、
アパルトマンのインテリアや衣装など、細かな部分も楽しめます。
何度も読み返したくなるような良質な絵本のような作品です。
かわいいだけじゃない、ちょっとほろ苦さもありながら、
観る人を幸せにしてくれる映画です!
今日ご紹介した映画「ぼくを探しに」は、
■Denkikan
で、現在公開中です。
「ぼくを探しに」オフィシャルサイト
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