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「ジャージー・ボーイズ」

 
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています
「キネマのススメ」。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の名匠
クリント・イーストウッド監督作品「ジャージー・ボーイズ」です。
 
クリント・イーストウッド監督と言えば、もはや「巨匠」という
称号を越えて「生きている伝説」とまで言われる
「ハリウッド映画界の宝」とも言える存在。
「許されざる者」、「ミリオンダラー・ベイビー」で2度の
アカデミー作品賞に輝き、俳優としても、監督としても、
彼がかかわる作品は間違いなく面白いと言われています。
まさに「イーストウッド・ブランド」とも言える作品です。
 
イーストウッド映画は、音楽の使い方が
素晴らしいとよく言われます。そんなイーストウッド監督が
今回、全編音楽に彩られた作品を完成させました。
 
FMKでもよくオンエアされる、定番ソング「君の瞳に恋してる」。
アンディ・ウィリアムスやフランク・シナトラ、ローリン・ヒルなど
様々なアーティストが歌い、日本のアーティストにも
数多くカバーされているダンスナンバーのクラッシックですね。
最も有名なのは、1982年の
ボーイズ・タウン・ギャングによるものですが、
オリジナルを歌っているのは誰かご存じでしょうか?
オリジナルは、1960年代に人気を博したグループ
「フォー・シーズンズ」のリードボーカリスト、フランキー・ヴァリ。
1967年に全米2位を記録しています。
 
この映画「ジャージー・ボーイズ」は、
この伝説のグループ「フォー・シーズンズ」の
4人の若者たちの栄光と挫折、そして、いまでは
定番の曲となった「君の瞳に恋してる」の誕生の裏に隠された
劇的なドラマを、名匠クリント・イーストウッド監督が
見事に描き出したものです。
 
ニュージャージーの貧しい街に生まれた
フランキー・ヴァリ、トミー・デビート、
ボブ・ゴーディオ、ニック・マッシの4人は、
美しいファルセットボイスと完璧なハーモニー、
曲作りの才能を武器に、
スターへの階段を一気に駆け上ります。
しかし栄光の裏には落とし穴が・・・。
小さなほころびがやがて大きな亀裂を生み、
裏切り、グループの解散という挫折が訪れます。
絶望の淵に立つフランキーに送られたのが、
あの曲、「君の瞳に恋してる」でした・・・。
 
この作品、もともとはブロードウェイミュージカルとして
作られたもので、2005年から上演が始まり、
トニー賞も受賞しています。
この映画でも、フランキー役のジョン・ロイド・ヤングをはじめ、
ブロードウェイ版を演じたキャストが出演。
素晴らしい歌声を聞かせてくれます。
 
今回の作品では、通常のミュージカル作品のように
事前に歌をレコーディングして、
撮影のときは口パクで歌うという方法をとらず、
撮影現場で歌った声をそのまま収録しています。
そう、あの大ヒット作品「レ・ミゼラブル」で採用された
ものすごく大変な方法をあえて採用しているのです。
そのため、出演者の感情の動きが、
見事に映像と歌声に反映されていて、
観客の感動も倍加する仕掛けになっています。
まるでライブを劇場で見ているような感覚を
味わうことができますよ。
 
イーストウッド監督は実は音楽にもとても造詣が深く、
自分の作品はもちろん、他の監督の映画で
音楽を担当したこともあるほどなんです。
ジェームズ・C・ストラウス監督、「さよなら。いつかわかること」など…。
 
それだけに、この作品でもライブシーンの描き方は抜群!
実は撮影中の休み時間に、ひとりでピアノを弾いて
リラックスしていたという話も伝わってきています。
監督が休み時間にピアノを弾くなんて
どこまで渋い人なんでしょうか!!
 
ここで、ちょっと余談の見どころポイントをご紹介します。
映画の中でヒット街道をばく進中の
「フォー・シーズンズ」のメンバーが
テレビを見ているシーンがあるんですが、
そのテレビに映っているのは、「ローハイド」です。
「ローハイド」というのは、俳優クリント・イーストウッドの出世作。
つまりは、「フォー・シーズンズ」のメンバーたちと
イーストウッド監督は同時代を生きたスターなんですね。
こういう洒落っ気もイーストウッド監督らしい演出です。
現在、84歳のイーストウッド監督、彼の人生そのものが、
いつか映画になる気がします。
 
今日ご紹介した映画「ジャージー・ボーイズ」は、
■TOHOシネマズ光の森
で、現在公開中です。
 
「ジャージー・ボーイズ」 オフィシャルサイト
 
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