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「NO(ノー)」

 
「FMK Morning Glory」毎週火曜日にお送りしています、
「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「NO(ノー)」です。
 
テレビを見ていると必ず目にするCM。
あまり意識して見ないものですが、気が付くと
コマーシャルソングを口ずさんでいたり、
商品の名前と一緒に内容が思い出されたりするものですよね。
今日ご紹介する映画「NO」は、このコマーシャルが
1つの国を変えてしまったという実話をもとにした
社会派エンターテイメント作品です。
こういう社会派の内容を面白い映画に仕上げるのは、
ハリウッド映画が得意とするところ
古くは1976年の「大統領の陰謀」でウォーターゲート事件を
描いたり、1991年の「JFK」では大統領の暗殺に隠された
謎を独自の解釈で描いてみたり、昨年のアカデミー賞作品賞を
受賞した「アルゴ」もイラン革命を舞台にした
政治的痛快脱出劇でした・・・・・・とこんな風に政治や事件をさえ
エンターテイメントにしてみせるハリウッド映画。
その底知れぬパワーを感じさせるのが
この社会派映画のジャンルなんです。
ところが、この映画「NO」は、英語圏でない南米で作られた映画。
ハリウッド以外から生まれた珍しい社会派エンタメ作品です。
 
舞台となるのは、南米のチリ。
チリは、1970年、大統領選挙で社会主義政党の
アジェンデ氏が選ばれ、大統領に就任しました。
しかしそれを良く思わない軍部が73年にクーデターを起こし、
ピノチェト将軍による独裁政権となります。
ピノチェト政権は、反対派の誘拐や虐殺を繰り返し、
国民を恐怖で支配。国際的な批判が高くなったことから、
1988年、ピノチェト政権の存続を求めるかどうか、
国民投票を実施することになります。
公正な選挙ということで、賛成と反対の両派が27日間、
毎日15分ずつテレビキャンペーンを展開することになりますが、
設定された時間は深夜。
政権側は勝てる自信満々です。
 
さて、反対派の友人に依頼され、キャンペーンの
アドバイザーを務めることになったのが、
広告代理店に勤めるCMディレクターのレネです。
レネは、反対派陣営から、ピノチェト政権がどんなに
残虐か真面目にアピールした映像を
見せられますが、「それでは人の心は動かせない」と、
CMの手法を駆使した映像を試作。
猛反対を受けながらもレネは信念を通し、
明るくユーモアに溢れたキャンペーン映像が流れ始めます。
 
さて一方、レネが勤務する広告代理店の上司は賛成派で、
しかもキャンペーンの映像を作っています。
同じ会社で一緒に仕事をしながら、腹の探り合いをしているんです。
レネの作った映像をみた上司は、彼をつぶそうと
戦略を変更。
レネも対抗し、お互いあの手この手のCM合戦となります。
 
結構シリアスな政治映画なのに、このCMが面白い!
それと同時に、CMでこんなにも人を操ることができるんだ、
という怖さも感じます。
ちなみに、映画の中で流れるCMは当時のものが使われていて、
画質を合わせるために
本編の映像も88年当時のカメラ機材を使っているんだとか。
面白くて、考えさせられる1本です!
 
主役のレネを演じるのは、
メキシコ生まれのイケメン俳優・ガエル・ガルシア・ベルナール。
20歳の時「アモーレス・ペロス」で映画デビュー。
それ以来「天国の口、終わりの楽園」、
「モーターサイクル・ダイアリーズ」、「バッド・エデュケーション」と
英語圏以外の実力派監督の作品に次々主演し、
世界中の監督からオファーが殺到する人気俳優です。
今回、ひげ面でちょっとくたびれた格好の広告マンを
演じていますが、「瞳」の美しさは相変わらずです。
最初は、反対派の運動にちょっと懐疑的だった主人公が、
次第に「チリの未来」のために働くようになる気持ちの変化を、
この美しい「瞳」で表現しているのが素晴らしいですよ。
女性ならずとも、男性も「かっこいい!!」と拍手を
お送りたくなるような存在感です。
是非、ガエル・ガルシア・ベルナールの美しい瞳に注目して、
この映画、楽しんでください。
 
今日ご紹介した映画「NO」は、
■Denkikan
で、現在公開中です。
 
「NO」オフィシャルサイト
 
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