「山と溪谷社」
企業にまつわる気になる疑問を解決する「会社のヒミツ」。
今日は「山と溪谷社」のヒミツに迫ります。
「山と溪谷社」の本社は東京都千代田区にあります。
1930(昭和5)年4月1日創業。
1940(昭和15)年4月株式会社に組織変更。
山岳・自然等に関する雑誌・書籍の出版販売を手掛ける会社です。
お話を伺ったのは、山と溪谷社 主幹 兼
山岳図書出版部 部長の萩原浩司さんです。
Q「山と溪谷社」という社名の由来を教えてください。
創業者川崎吉蔵(きちぞう)による命名。
1930年創刊の登山専門誌名がそのまま社名に。
著名な登山家で、数多くの著作を残した
田部重治(たなべ・じゅうじ)の著書名を引用。
川崎吉蔵は田部重治の書名を雑誌名にすることを願い出て、
同時に原稿執筆も依頼。当時、川崎は大学を卒業したばかり。
就職を考えていたときに山岳雑誌創刊を決意する。
1930(昭和5)年4月に『山と溪谷』創刊。
題字は、川崎の中学時代からの親友、坂野三郎氏に依頼。
今日までロゴは変わっていない。
現存する山岳専門商業誌としては世界一(84年の歴史)。
Q山と溪谷社が、山関係に特化し出版社になった理由は何ですか?
きっかけなどあったら教えてください。
1930年代は世界恐慌の時代。
社会全体が退嬰(たいえい)ムードにつつまれていた。
大正末期から近代登山が大衆化。第一次登山ブームとなる。
当時の山岳メディアの代表として日本山岳会機関誌「山」が
あったが山岳会会誌の体裁。
(「山」は1906(明治39)年4月に創刊)大衆に向けた
登山雑誌はなかったところに創刊。
<『山と溪谷』創刊号の信条>
山岳団体にも学校山岳部にも所属しない一般登山者に、
「研鑽」と「発表」の場を。あらゆる層の優秀なる人々の文献を
1冊にして徹底的な廉価で提供。
「正しきアルピニズムの認識」を前提として真面目に
「山と人との」対照を思索していかねばならぬ
川崎はひとりで雑誌の創刊を企画、編集、校正、印刷手配、
営業、広告集広と、すべてをこなす。
雑誌をリヤカーに積んでみずから書店に配送したという逸話も残る。
Q「山と溪谷社」を代表する出版物といえば、
雑誌「山と溪谷」だと思いますが、この雑誌は、
いつごろ、どんなきっかけで作られた雑誌なのでしょうか?
1930(昭和5)年創刊。
A5判。のちにB5判、AB判、そして現在のA4変型判へとつながる
創刊時の定価は50銭。ちなみに当時の物価うどん
そば8銭、銭湯5銭、米一升が20~25銭
タバコのゴールデンバットは7銭、チェリーが10銭。
反響は大きく、雑誌としては異例の3刷りを重ねることになる。
Q雑誌「山と溪谷」の編集コンセプト、
これまでのヒット特集企画などを教えてください。
また、これまでもっとも売れた号の特集は何ですか?
編集コンセプト登山の総合誌
もっとも売れた号は、おそらく1996年1月号特集は
「素顔の日本百名山」NHKの登山番組がきっかけで、
当時は「日本百名山」の大ブームだった。時代に合った企画で
あるうえに、皇太子殿下の寄稿を賜り、話題になった。
山と溪谷をベースに、各種登山雑誌を創刊
『ハイカー』『岩と雪』『ヤマケイJOY』など。
その後、スキー雑誌「skier」、
アウトドア雑誌「Outdoor」、自然生活誌「ウッディライフ」なども。
「スキーヤー」の派生雑誌としては「テニスボーイ」や
「ウインドフラッシュ」(ウインドサーフィン)
「スポーツ・バイシクル」(自転車)など、
多岐にわたるスポーツ雑誌も時代に合わせて創刊。
Q「山と溪谷社」では、雑誌以外にもたくさんの書籍なども
発行されていますが、最も売れた書籍はどんなものですか?
また特色ある本などあればご紹介ください。
シリーズとしてよく売れたのは昭和30年代の
「ヤマケイカラーガイド」シリーズ。当時としては
画期的なカラー写真をふんだんにつかったガイドで、
山や自然を対象。このころからカラー印刷に対する
技術が高まり(編集者の色の管理技術が向上)、
カラー印刷による図鑑やカレンダーへと発展してゆく。
登山ガイドブック「アルペンガイド」シリーズは登山ガイドの
定番商品として長い人気を誇る。
卓上ダイヤリー「アルパインカレンダー」の歴史も古くから
登山者に親しまれて現代に至る。
図鑑もヤマケイが得意とする分野で、自然ジャンルの
各種図鑑を数多く出版している。
その他のジャンルとしては「おとなの折り紙」などの
一般向け商品も出すことがある。
Qそのほか「山と溪谷社」の出版物に関する
なにか面白いエピソードなどあればお願いします。
映像への取り組みも他社に先駆けて進めていた。
特にスキーブームだった1980~90年代にはスキーの
テクニックビデオを多数、刊行。
その技術を生かして登山のビデオ、DVDを数多く製作している。
1994年から始まったNHKの番組「日本百名山」にも企画協力し、
ビデオ化して販売。
Q「山と溪谷社」の歴史の中でもっとも印象的な出来事は何ですか?
<いちばん長く続いた連載>
吉沢一郎さんの連載「山と人と本と」は、1930年の創刊号に始まり、
1997年12月号で最終回。
27歳で連載開始、94歳で絶筆。
68年間、休みなく続けられた連載は計702回にのぼります。
途中、タイトルが変わったりしたものの、
68年の連載は世界的な記録かもしれません。
Qそのほか、オススメの商品、サービス、キャンペーンなど
PRしたい案件があればお願いします。
この秋、「ヤマケイ新書」シリーズを創刊。
第一弾として次の4冊が10月24日から発売されます。
・登山家の山野井泰史さんによる「アルピニズムと死」
・山岳書編集の第一人者、大森久雄さんによる「山の名作読み歩き」
・アウトドアビジネスの舞台裏を綴ったビジネス書「モンベル7つの決断」
・登山ショップのベテラン店員の手による「体験的山道具考」
さらに御嶽山噴火を描いた緊急出版ヤマケイ新書
「ドキュメント御嶽山大噴火」
今後も登山家で人気ガイドの岩崎元郎さんや、
女優の釈由美子さんの本を出版予定。
山と溪谷社 オフィシャルサイト
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