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「熊大ラジオ公開授業 知的冒険の旅」 平野順也先生

あらゆるジャンルの“注目の人”にインタビューする「ヒューマン・ラボ」。
11月から3ヵ月間、「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業 知的冒険の旅」と題してお送りしています。
第2回のゲストは、熊本大学 文学部 コミュニケーション情報学科の
平野順也 准教授です。

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先生の専門である「コミュニケーション学」、「修辞学」、
「ポリティカル・レトリック」とはどんな研究なのか、詳しく伺いました。
 
Q① お名前と職業・所属を教えて下さい。
 
名前:平野順也(ひらのじゅんや)
所属:文学部コミュニケーション情報学科
プロフィール
・3年前に熊本大学文学部に赴任
・それ以前は、石川県の大学に勤務、
福岡県の高等学校で英語の教鞭をとったこともある
・さらに、それ以前はアメリカに約8年間留学:
アイオワ州⇒テキサス州⇒ペンシルバニア州
・専門はコミュニケーション、特にレトリックという分野を研究
 
Q② 平野先生の専門である「レトリック」とは、
どんな研究ですか、わかりやすく教えてください。
 
・日本語では修辞学と訳されます。
私たちは、聴き手を「説得」するために、
「ことば」を飾ります。その技法に関する研究です
 
・また、我々の生活には、総理大臣のスピーチ、
テレビやラジオのCM、そして日常的に使う嘘や言訳まで、
色々な形で「説得」が溢れています。特定の「説得」で
使用された「ことば」を考察し、「飾り」に隠された動機や
本心を暴くという分析を行うといった研究もします。
 
・例えば、学生が宿題を忘れたとしましょう。
言訳としては、「忘れてた」、「したけど途中まで」、
「バイトで忙しかった」、「風邪を引いていた」など色々あるでしょうが、
自分の非を認めているのか、「風邪」や「バイト」の責任にしているのか、
を分析することによって、学生の人間性が見え隠れしますね。
 
Q③平野先生がこの研究に取り組むことになった
「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。
 
・コミュニケーション学を学び始めた頃、有名な数々の
「スピーチ」について勉強しました。人々は時に暴力的な手段を
使用してまで、他者を説得しようとしますが、
たんなる「ことば」で構成されたスピーチが、時に人々に対して
絶大な影響力を持つことがあるという事実に触れた時、
「ことば」の影響力について学ぼうと思いました。
 
Q④聴き手を説得するための「レトリック」について、
いくつかの具体例をあげて説明お願いします。
 
例えば、目の前にずっと好きだった人がいるとしましょう。
そして、勇気をだして告白するとします。
では、なんという言葉を使いますか?ただ、「好きだ」だけで
十分な説得力がある場合もあるでしょうが、
ちょっと相手が簡単に「うん」って言ってくれないなら、
どのような言葉で説得しますか?「一緒になる運命だ!」って
言う人もいるでしょう。「運命」なのですから、
逆らえないわけですよね。神様が決めたわけですから、
神様を味方につけて、説得しているともいえますね。
または、相手の魅力を山ほどあげて、
そこに惚れたんだとストレートに説得する人もいるでしょう。
なかには、自分は年収がいくらあって、経済的に守ってあげるよ、
なんて言う人もいるかもしれません。
夏目漱石の『それから』という小説の主人公は親友の妻に
告白するとき、「ぼくの存在にはあなたが必要だ。
どうしても必要だ」と言います。あなたがいなければ、
自分が存在することもできないって、すごい告白ですよね。
このように、私たちは時にはロマンチックに、時には現実的に、
時には哲学的に、相手を説得しようとするわけです。
 
日本と例えばアメリカと比較したばあい、
説得にちょっとした違いを見つけることができます。
アメリカは単純に言えばですが、契約社会ですよね。
中には、結婚する時に離婚した時のために、
財産分与を決めたりするカップルもいるようですが、
とにかく、全てを説明し、議論し、文字化するという、
かなり言葉に頼った文化だと言えます。無論、
日本もそのような場合もあるのです。口は災いのもと、
百聞は一見に如かず、論より証拠、といったことわざもあるように、
ああだこうだ議論すると言うよりは、
「1聞いて10分かる」べきだといった、
あまり言葉を信じない文化ですね。私の座右の銘は、
『幸せなら手をたたこう』の歌詞の、「幸せなら態度でしめそうよ」です。
アメリカなら、幸せなら言葉でも態度でもしめそうよ、って感じでしょうか。
 
Q⑤研究以外での趣味などありますか?
 
映画や音楽が好きです。よく映画やコンサートに行きます。
ロックの祭典、フジロックに行くことは巡礼のように大切な行事です。
ちなみに、フジロックはSMASHというプロモーターが
主催しているのですが、SMASHの代表日高正博さんは
熊本県人吉出身で、その事実だけでも熊本に来てよかったなと思います。
 
Q⑥これまでの活動を通じて、
最も印象深いエピソードをお願いします。
 
・実に難問ですね。さて、エピソードではありませんが、
研究を通して出あった御師匠さんたちからの教えの数々が
印象深く残っております。
彼らからは、コミュニケーション学やレトリックだけではなく、
生きざまを学んだような気がします。
すなわち、コミュニケーション例えば、「恋愛の不可能性」や
「赦しの不可能性」を学んだ時は、不可能性を超えるように
生きろと教わりましたし、決して研究対象を妄信・盲信せず、
社会への貢献を念頭に研究に従事するように教わりました。
具体性が全くなく、申し訳ございません。
 
Q⑦今後の活動予定やPRしたいことなどあれば教えてください。
 
コミュニケーション情報学科では学生が主体となって、
TOEICやIELTSといったテスト対策を中心とした英語の
勉強会を行っています。
この取り組みを高校生にも知ってもらおうではないかということで、
出張勉強会の計画が進んでおります。
興味関心のある高校関係者の方は、連絡していただけると、
詳細を説明させていただきます。
 
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