« 11月10日(月)の魔法のことば  |  11月11日(火)の魔法のことば >

「紙の月」

「FMK Morning Glory」毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
今日ご紹介するのは、今度の土曜日・11月15日から公開される
「紙の月」です。
 
この作品は、女性を中心に大きな人気を誇る直木賞作家・角田光代の
ベストセラー小説を映画化したものです。
2011年に公開された角田光代原作の「八日目の蝉」は、
日本アカデミー賞をはじめ多数の映画賞を受賞。
主演の井上真央もこの年の主演女優賞を独占しました。
そんな注目の作家が銀行の巨額横領事件を描いた
ベストセラー小説が、この「紙の月」。
主人公をいったい誰が演じるのかと映画の製作が
決定する前から話題なっていましたが、ここ数年、
舞台を中心に活動していた宮沢りえが
7年ぶりの映画主演をつとめています。
 
そんな宮沢りえが主演するのが「紙の月」です。
 
舞台は、バブル崩壊直後の1994年。
夫と2人暮らしの主婦・梅澤梨花は、
銀行の契約社員として外回りの仕事をしていました。
ある日、顧客の平林の家で、
孫の大学生・光太と出会った彼女は、逢瀬を重ねるようになります。
光太と過ごすうち、ふとしたことから顧客の金に手をつけてしまう梨花。
最初は1万円だったのが、次第にその金額は大きなものになり、
ついに後戻りできなくなってしまいます・・・。
果たして、梨花の不正は暴かれてしまうのか?
映画は思わぬ展開を見せてゆきます。
 
主役の梨花を演じる宮沢りえは、平凡な主婦が、
大胆な横領犯へと堕ちていくさまを、実に巧みに演じています。
社会的には許されない犯罪に手を染める主人公なんですが、
不思議と主人公が嫌いにはならないんですね。
映画の観客は、次第に梨花に感情移入していって、
「いつ不正がバレるのか・・・今日か・・・明日か・・・」と
彼女と一緒にドキドキする仕掛けになっています。
これは映画ならではの不思議な感覚です。
先日行われた「第27回東京国際映画祭」では最優秀女優賞を受賞。
多分、これから発表される今年の各種映画賞では、
主演女優賞を独占するんではないでしょうか?
 
共演陣も強力なメンツです。
主人公の横領のきっかけとなってしまう大学生・光太役には、
このところ活躍目覚ましい、若手実力派の池松壮亮。
また、梨花の同僚を演じる元AKB48の大島優子と
小林聡美にも注目です。
この二人の役どころは、映画オリジナルの設定で、
原作には登場してこない登場人物です。
 
特に小林聡美演じるベテラン銀行員・隅より子のキャラが強烈です。
髪型もいつもの小林聡美とはまったく違っています。全然笑いません。
笑顔のイメージいつもの小林聡美のイメージとは
真逆の役どころでのキャスティングです。
これも助演女優賞間違いなしの演技ですので注目してください。
この映画、キャスティングがどの役もすばらしいです。
いつものイメージとは全く違った俳優の表情を観られるのも、
この映画の素晴らしいポイントです。
 
監督は、去年日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた
「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督です。
「桐島、部活やめるってよ」もそうだったんですが、
あるコミュニティでの複雑な人間関係によって生ずるドラマを
綿密に描くのが得意と言われている吉田監督にとって、
「銀行」というのはうってつけの題材だったような気がします。
誰もが知っているのに、その中で何が起きているのか、
多くが秘密になっている場所「銀行」、
まさにぴったりの題材だったんではないでしょうか?
なんと言っても、この原作小説をこのキャストと監督で製作した
プロデューサー・チームが素晴らしいと思います。
 
映画の配給は、松竹なんですが、松竹映画というと
70年代に「砂の器」をはじめ松本清張原作の映画化で
一時代を築いた映画会社です。「大人のサスペンス」と言えば
松竹という時代もあったくらいです。
ここ数年は、時代劇やファミリー作品が中心だった松竹映画ですが、
今年は、「白雪姫殺人事件」というスマッシュ・ヒットも生んだので、
続けてこの「紙の月」もヒットすれば、
「大人のサスペンス映画」のブームが再び起きるかもしれません。
そうなると映画ファンとしては嬉しいですね。
 
現実の世界でも時々明るみに出る、こうした横領事件。
こういった犯罪に、手を染めてしまう女性の姿を、緊張感たっぷりに
そしてある意味痛快に描いた1作です。
 
今日ご紹介した映画「紙の月」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、今週土曜日・11月15日から公開されます。
 
「紙の月」オフィシャルサイト http://www.kaminotsuki.jp/
 
-----
本日オンエアのこのコーナーをポッドキャストでも配信中。
 
詳しくはここ↓