「熊大ラジオ公開授業 知的冒険の旅」 竹内裕希子先生
あらゆるジャンルの“注目の人”にインタビューする「ヒューマン・ラボ」。
11月から3ヵ月間、「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業 知的冒険の旅」と題してお送りしています。
第3回のゲストは、熊本大学大学院自然科学研究科の竹内裕希子 准教授です。
Q①お名前と職業・所属を教えて下さい。
名前:竹内裕希子(たけうちゆきこ)
女優の竹内結子と名前が似ているので,たまに間違われます。
間違われるとチョットしたネタになります。「裕希子」という漢字も
よく「由希子」や「祐希子」などの字と間違われることも多いです。
こちらはネタになりません。
所属:熊本大学大学院自然科学研究科・准教授
プロフィール
独立行政法人防災科学技術研究所,京都大学防災研究所,
京都大学大学院地球環境学堂などを経て,2014年3月より現職。
東京農工大学大学院修士課程修了修士(農学)
立正大学大学院地球環境科学研究科博士後期課程修了博士(理学)
東京都出身。
Q②竹内先生の専門である「地理学」とは、
どんな研究ですか、わかりやすく教えてください。
地理学は,地域の成り立ちを,自然科学と人文科学の
二つの視点を持って空間分布と時間変遷から明らかにする学問です。
どのように地形が形成され,その上に植生や産業・文化が
どのように影響を受けて分布をするのかを明らかにします。
私は地理学の中でも特に防災・減災について取り組んでいます。
災害が発生する要因を自然科学の成り立ちと人文・社会科学の
成り立ちから明らかにし,防災教育を通じて
防災・減災の課題解決を提案します。
Q③竹内先生がこの研究に取り組むことになった
「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。
1999年に広島市で大規模な土砂災害が発生しました。
今年2014年8月にも発生した地域です。
私はそれまで斜面崩壊のメカニズムについて研究をしていましたが,
1999年の災害でテレビに写った地域の人が急斜面を背景に
「ここで災害が起こると思わなかった」と話していることに
衝撃を受けました。崩壊の危険性のある急斜面を目の前にして
「崩れると思わなかった」と思うことに,
防災教育の必要性を強く感じました。特に「逃げる」という
防災教育だけではなく,「なぜそこが危険であるのか」
理解を深める防災教育が必要であると考え
現在の研究に方向転換をしました。
住民が自分自身の防災に取り組む地域防災は,日本だけでなく
世界で必要とされています。防災というとダムや
堤防を想像することが多いのですが,住んでいる地域の特性を
理解して情報を活かして避難行動に結びつける方法は,
ダムや堤防に比べるとお金がかかりません。
そのため,防災にお金をかけることが難しい途上国では
有効な方法です。
私は京都大学で働き始めた時に海外調査を始めました。
当時は英語で自己紹介をすることも難しかったのですが,
日本の地域防災の方法が海外で重要だと共同研究者に
強く言われてインドでの調査を始めました。
インドは2004年にインド洋津波で大きな被害を受けて
防災に取り組み始めたところでした。調査を始めてみると,
防災は必要であると解っていても,貧困のため日々の生活や
衛生や教育など根本的な課題のために防災まで
手がまわらない状況が明らかになりました。
堤防などを作るお金や技術が難しいのなら,
せめて自分たちの身の回りの危険を理解することだけでも
出来るのではないかと思いました。
これが,地域防災研究を海外で始めたきっかけです。
Q④熊本の地理的特徴と地域防災に関して、
具体的な例があればいくつか説明お願いします。
災害の発生としては,非常に基本的・一般的ですが,
平らなところ,川が流れているところでは洪水災害,
山があるところでは土砂災害(特に土石流災害),
海に面しているところでは高潮災害という特徴があります。
地名を挙げると下記のような場所です。
阿蘇→土砂災害・火山災害
五木・水俣・芦北などの山間地域→土砂災害
熊本市内などの平野部→洪水災害
水俣・八代・熊本・玉名などの沿岸地域→高潮災害
防災としては,これも一般的分類ですが,
都市地域では人の繋がりが弱い(または無い)ため,
安否確認などが難しく,一人一人がしっかりと
防災対策をしないといけません。
自主防災会組織などが結成されている地域もありますが,
全体としては少ないのが現状です。山間地域では,
高齢化や過疎化が進んでいるため,自主防災会や
消防団の担い手がなく,また,一人での避難が
難しい人が多いという課題がありますが,
人と人の関係が密接であるため,
顔が見える関係が存在しており,
安否確認や助け合いが自然に行われます。
Q⑤研究以外での趣味などありますか?
趣味は地図と石を集めることです。
好きなことは地域の美味しいものとお酒を楽しむことです。
料理をしたり,工作したり,
なにかモノを作っているときはリフレッシュしているように感じます。
Q⑥これまでの活動を通じて、
最も印象深いエピソードをお願いします。
Q③の「きっかけ」に書いた広島と
インドのことが最も印象深いことです。
Q⑦今後の活動予定やPRしたいことなどあれば教えてください。
熊本ケンミン新米です。熊本のいくつかの箇所で
地域防災の調査を始めました。これから熊本のことを
もっともっと知って熊本の地域防災に貢献していきたいです。