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「熊大ラジオ公開授業 知的冒険の旅」 細野高啓先生

あらゆるジャンルの“注目の人”にインタビューする「ヒューマン・ラボ」。
11月から3ヵ月間、「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業 知的冒険の旅」と題してお送りしています。
 
4回目のゲストは、熊本大学大学院先導機構の細野高啓准教授です。
先生の専門である「流域水環境学」とはどんな研究なのか詳しく伺います。
 
細野先生.JPG
 
Q①お名前と職業・所属を教えて下さい。
 
名前:細野高啓(ほそのたかひろ)
所属:熊本大学大学院先導機構(併任)理学部地球環境科学講座
 
プロフィール
出生:1976年1月カナダ・トロント市生まれ
国籍:日本人
家族:一児の父
学位:理学博士(2003年3月筑波大学)
 
学歴
1994年3月31日京都府立兎道高等学校卒業
1994年4月1日信州大学理学部地質科学科入学
1998年3月20日信州大学理学部地質科学科卒業
1998年4月1日筑波大学地球科学研究科博士課程地質学専攻入学
2003年3月25日筑波大学地球科学研究科博士課程修了
 
職歴
2003年4月1日早稲田大学理工学術院環境資源工学科助手
2005年4月1日総合地球環境学研究所技術補佐員
2006年4月1日日本学術振興会特別研究員(総合地球環境学研究所)
2007年5月1日秋田大学工学資源学部地球資源学科助教
2009年4月1日熊本大学大学院先導機構特任助教
2013年6月~2014年3月スペイン・バルセロナ大学地質学研究科在外研究員
2014年4月1日現職
 
Q②細野先生の専門である「流域水環境科学」とは、
どんな研究ですか、わかりやすく教えてください。
 
陸域水循環系において四次元的な水の流動や
水質進化機構を調べる研究のことを言います。
 
要するに、蒸発・凝結によって降った雨が河川や地下水となり、
流域内では各地域の気候条件に即した水循環系において
生じる様々な水の量的、質的変動を解析する研究です。
近年、気候変動や水利用によって、また、人間活動による
物質負荷によりそのバランスが変化してきていますので、
その実態をなるべく正しく理解することを目標としています。
実際には学問として体系化されつつある発展途上分野で、
比較的新しい研究領域にあたります。
 
日本最大の地下水都市地域である熊本を足場に、
アジア・アフリカ地域など世界中で活動を展開しています。
流域内、見た目はどこでも同じような水ですが、
詳しく調べていくと、大気や地質物質との相互作用、
また、微生物や人間活動の影響によって
水のすがたが見えてくる、また、その姿が変化していく様子が
見えてくるので面白いです。
また、水資源保全対策の観点から社会的ニーズに
関わることの多い分野です。
 
Q③細野先生がこの研究に取り組むことになった
「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。
 
もともと小さいころから鉱物や化石が好きでしたので、
小学生のころから地質学の道に進みたいと思っていました。
大学に入り、初めは火山のでき方を調べる研究を
ずっと行ってきたのですが、大学院では地下資源に
興味を持つようになり、金属鉱床
(注目したのは金や銀を含む熱水鉱床)の成因を
研究するテーマを選ぶことになります。
 
時代の流れから、環境をテーマとした研究が気になり始め、
興味の対象が、同じ資源でも鉱物とは異なり、
水資源(特に地下水)へと移行していきました。
研究のアプローチは地球化学的なアプローチで
変わらないのですが、鉱物資源の分野では
色々と分かっていることも、水資源の分野では
やられていないことも多くあり、
これまでの知識を生かして水分野で新しい研究を
開拓したいという思いが現在の研究を行う
きっかけとなりました。
 
Q④アンケート内容から推察しますに、
フィールドワークが多い研究ではないかと思います。
めずらしい場所、困難な場所、印象的な場所の
エピソードなどを教えてください。
 
これまで50~60の色々な国や地域を色々な目的の調査で訪れました。
それぞれに色々な出来事がありましたが、
南米・アフリカの国々は身近なアジア・欧米とは異なり文化も
一層異なりますし、アクセスも困難な場合が多く
印象にも残りやすいのかも知れません。
 
河川だと、学生のころから放浪や探検が好きで、
黄河や揚子江、ガンジス川(上流域はヤルツァンポ川)や
メコン川等々、世界河川の源流域を自転車で訪れたりしました。
調査では10年ほど前にブラジル・アマゾナス州の州都マナウスを
拠点に2回ほど、最近だとスーダンの首都ハルツームナイル川を
のぞむ機会がありました。いずれもソリモンエス川と
リオネグロ、青ナイルと白ナイルの合流地点を
訪れることができました。特徴の全く異なる側の合流は
ダイナミックですし、地球規模の河川の源流や合流地点って、
たってみると気持ちの良いものです。
登山も好きで、地下水や湧水だと最近はアフリカ第一の高峰
(キリマンジャロ)とアフリカ第二の高峰
(カメルーンのカメルーン山)での調査が思い出深いです。
 
困難と言えば治安に気を付けるとか、
コミュニケーションにタフになる、とかでしょうか。
あと、マラリアとかの苦しい病気は嫌なものです。
でもこういうとこは獣とか、変な珍しい野菜とか、
自然の果物とか、ジャングルの恵みが美味しいです。
 
Q⑤研究以外での趣味などありますか?
 
そうですね、旅や研究以外ですと、
体調管理の為に軽くジョギングをする程度でしょうか。
 
最近は時間があれば子供と接するようにしていますし、
自分の趣味の時間はあまりないかもしれません。
家族が健康でしたらそれで良いので、ストレスは
あんまり溜まらないみたいです。
 
以前は登山とか、ダンスとか、カルチャルアクティビティとか
色々やっていました。
 
Q⑥これまでの活動を通じて、最も印象深いエピソードをお願いします。
 
研究は自分の興味で突き進んでいることなので、
どれもこれもがエキサイティングです。
水の研究に関わらず地球科学の多くはフィールドといって、
野外での調査が基礎となるものが多いです。
野外調査では普通は人がいかない様な所で調査を
行いますので、近場でも遠い場所でもどこへ行っても
日常には無い思いがけない発見が沢山あり、
研究を続ける原動力にもなっています
(興味のない人にはどうでも良い事でも面白く感じて
しまうことが多いかもしれません)。
 
また、この分野では自然を相手にしますので、
観測や分析、実験の結果を解釈する100%の正解というものは
決まっていません。その時までに得られている情報を
できるだけ矛盾なく説明できるような
ストーリーを作ることが作業となってきます。
答えが用意されていないものに対して、
最もあり得そうなストーリーとしてまとまった時は快感ですね。
学術的な論文を作成するのがこれに当たるのですが、
一つの作品をつくるようで、
達成感や満足感を得られることが楽しいです。
 
Q⑦今後の活動予定やPRしたいことなどあれば教えてください。
 
地元の事ですので熊本の地下水についてはこれからも
継続的に調査していきたいと思っています。
頑張ってそんなことをやっている人が熊大にいるのだなぁと
思っていただければ嬉しいです。
 
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