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「熊大ラジオ公開授業 知的冒険の旅」 石丸聡子先生

あらゆるジャンルの“注目の人”にインタビューする「ヒューマン・ラボ」。
11月から3ヵ月間、「FMK Morning Glory ヒューマン・ラボ
熊大ラジオ公開授業 知的冒険の旅」と題してお送りしています。
6回目のゲストは、熊本大学大学院自然科学研究科理学専攻
地球環境科学講座の石丸聡子先生です。
先生の専門である「岩石学」とはどんな研究なのか、詳しく伺います。
 
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Q①お名前と職業・所属を教えて下さい。
 
名前:石丸聡子(いしまるさとこ)
所属:熊本大学大学院自然科学研究科理学専攻地球環境科学講座
プロフィール富山県射水市(旧新湊市)出身
2007年3月金沢大学大学院自然科学研究科博士後期課程修了
2007年4月-2008年3月金沢大学理学部教務補佐員
2008年4月-2008年12月金沢大学理工研究域研究員・博士研究員
2009年1月-2009年3月金沢大学キャリアデザインラボラトリー博士研究員
2011年2月-現在熊本大学大学院自然科学研究科助教
 
Q②石丸先生の専門である「岩石学」とは、
どんな研究ですか、わかりやすく教えてください。
 
地球は岩石からなる地殻とマントル,金属からなる核が層状構造を
していますが,私たちが手にすることができるのは地殻と上部マントルを
構成する岩石の一部のみです。
それら岩石は様々な履歴を持っているので,詳しく調べることで
どのようにして地球が現在の姿になったのか,
といったことを理解するために,重要な情報を示してくれます。
具体的には,野外調査で岩石を採取し,研究室に持ち帰って
観察や機器分析をおこなうことで,
その岩石のでき方や履歴を調べるということをしています。
日本でも火山活動が活発ですが,火山で作られるマグマの多くは,
マントルを構成していると考えられるかんらん岩が融解することで作られます。
マグマを作った後のかんらん岩は,時々地上で手にすることができますが,
そのかんらん岩を詳細に調べることで,
マグマの形成プロセスや地球が誕生してからこれまで
どのよう進化してきたのかを知ることができます。
 
Q③石丸先生がこの研究に取り組むことになった
「きっかけ」のようなものがあれば教えてください。
 
中学生くらいの頃から地質学や古生物学,
惑星科学に興味があって,大学入学時に地球科学を選択しました。
大学入学後もすぐに「岩石学」に興味が湧いたわけではなく,
大学の講義で実際に野外に出て行く中で
「岩石学も面白いな」と思う程度でした。
卒業研究をおこなう研究室を選ぶ時期になって先生方と
お話しをした際に,「地球が何でできているか,
そこで何が起こっているのか実際に見たことがある人は誰も居ないけど,
深部に由来する岩石を見たらそこでの現象が推測できる」と
いうようなことを言われたことがきっかけかもしれません。
特に,日本と同じようにプレートが深部に沈み込んでいく
カムチャツカ半島に産するマントルのかけらを使って
卒業研究を開始したのですが,
「日本のような環境のマントル由来の岩石は
あんまりないからまだよく分からない」というところに興味を持ちました。
 
Q④採取した岩石の履歴を調べるとのことですが、
どういう行程を経て、岩石の履歴がわかるのですか?
具体的に説明お願いします。
 
まず,岩石を光が透過する0.03mm程度の薄さにまで
研磨したものを作成して,ある特定の方向に振動する
光だけを観察できる顕微鏡(偏光顕微鏡)で見てやると,
岩石を構成している結晶によって見え方が変わります。
それぞれの試料を詳細に観察することで,
結晶ができた順序やできてから「力が加わって割れた」とかを
調べることができます。
また,岩石を構成する結晶のできた順序を元に,
結晶の化学組成を調べてその変化を捉えたりします。
例えば,オレンジ色のものを観察して,
元々は赤色だったところに黄色のものが入ってきたことを
調べるようなことでしょうか。
 
Q⑤研究以外での趣味などありますか? 
 
肩こりがひどいので,マッサージにいって癒やされています。
最近は週末になるとダラダラ過ごしてしまっているのですが,
時間があれば遠出をしています。
以前は朝に「どこか行きたいなぁ」と思って,鹿児島の開聞岳に
行ったり杖立温泉に行ったりしたこともあります。
阿蘇や菊池などの郊外の温泉に行ったり,
博物館に行ったりするのも好きです。
 
Q⑥これまでの活動を通じて、
最も印象深いエピソードをお願いします。
 
マントル由来のかんらん岩を採取するために,
外国を含めてこれまで様々な地域に行っています。
それぞれに大変なことでいろいろと印象深い出来事があります
(カムチャツカの山小屋に泊まった際にヒグマと遭遇したことや,
ロシアでの調査は移動が大変であること,
国によってはサンプル輸送手続きが大変なこと)。
実際に持ち帰った試料を解析していて,
これまで見たことがない変な物
(平均的な化学組成から大きく離れていたり,
これまで未報告だった鉱物など)を発見してしまった時には
凄く考えるのですが,
その成因やそれが持つ意味が分かった時には
何とも言えない嬉しさがあります。
 
Q⑦今後の活動予定やPRしたいことなどあれば教えてください。
 
今後もひきつづきかんらん岩を求めて世界各地を調査し,
まだ誰も見ていない・理解できていない現象を
明らかにしていきたいと思います。
 
Qここを調査したいという具体的場所などありますか?その理由は?
 
地球全体での水の動きとそれを介した元素や
物質の動きに興味があるので,
プレートが沈み込んでいる地域や大陸が衝突している地域で
調査をおこないたいと思っています。
日本近辺ではフィリピンやインドネシアなどですかね。
最近はロシアのウラル山脈のあたりやトルコで
調査をおこなっていますが,アルプス山脈のある
イタリア北部にも行きたいと考えています。

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