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「天才スピヴェット」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「天才スピヴェット」です。
 
日本でも大ヒットしたフランス映画「アメリ」。
その監督、ジャン=ピエール・ジュネ監督の最新作が、
今日ご紹介する映画「天才スピヴェット」です。
ジュネ監督は、フランスの監督さんですが、
今回の作品は、全編がアメリカが舞台。
俳優もハリウッドの俳優が中心のキャスティングで、
世界マーケットをターゲットにした娯楽作品です。
 
物語の主人公は、アメリカ・モンタナに住む10歳の少年スピヴェット。
タイトルに“天才”とついている通り、彼は天才科学者であり発明家です。
しかし、その才能は、時代遅れのカウボーイである父や
個性的な昆虫学者の母、アイドルを夢見る姉といった家族には、
まったく理解してもらえません。
しかもスピヴェットは、銃が好きな双子の弟を事故で亡くしていて、
それがトラウマになっています。
そんなある日、ワシントンD.C.のスミソニアン博物館から、
スピヴェットの発明品が権威ある賞「ベアード賞」を受賞し、
スピーチをして欲しいと電話がかかってきます。
一旦は受賞を断ったスピヴェットですが、家族に内緒で
たった1人、ワシントンD.C.へ向かうことにします。
果たしてスピヴェットは無事、ワシントンD.C.にたどり着けるでしょうか・・・?
 
いつも独創的でファンタジックな映像で、
観客を驚かせてくれるジュネ監督ですが、
今回はなんと、話題の小説の映像化です。
この映画の原作は、ライフ・ラーセンの小説
「T.S.スピヴェット君 傑作集」。
この本は、本来のストーリーの脇に、たくさんのイラストや地図、
いろんなうんちくをまとめたメモなどが書いてあるという
とても遊び心のあるもの。全米やヨーロッパでも
ベストセラーになった作品です。
通常の小説だと、この挿絵的なものは、
メインの小説を補足する程度のものなんですが、
この小説では、とても重要な伏線などを、
このたくさんのイラストや地図に潜ませているという
凝った体裁になっています。
映画の中では、このイラストや地図などを丁寧に映像化し、
スピヴェットの奇想天外なイマジネーションを表現するものとして
使っています。ちょっとしか登場しない小道具に至るまで、
小説の世界観を見事に再現しています。
もちろん、原作を読んでいなくても大丈夫。
スピヴェット少年と一緒に旅するような気分が味わえる
一級のロード・ムービーになっています。
 
また、スピヴェットを演じる子役カイル・キャトレットも、
実はスピヴェットに負けず劣らずの天才少年。
なんと6か国語を操り、武道の選手権では3年連続で
世界チャンピオンに輝いた経歴の持ち主で、
才能の素晴らしさから、ジュネが原作の12歳という
設定年齢を10歳に引き下げたほど。
彼の存在感が、天才少年という役柄にリアリティを与えています。
 
オーディションでカイル・キャトレット君は、
自分をアピールするために監督に熱弁をふるったそうです。
 
「僕は、必要に応じて泣くことが出来るし、僕はタフで強いです。」と・・・・
 
まるで大人の俳優さんの発言です。
カイル君に決定した途端、タイミング悪く、
1日違いでアメリカのテレビドラマ『The Following』の子役にも
抜擢されてしまい、ダブルブッキングになってしまったそうですが、
どうしてもカイル君に出演してほしかった監督たちが、
撮影スケジュールをカイル君に合わせて再調整したという話。
まるで大物俳優のエピソードですね。
 
ここで、もうひとつ映画のこぼれ話。
全編がアメリカが舞台なんですが、
撮影はすべてカナダで行われています。
実は、ジュネ監督は「エイリアン4」の撮影の時に、
思い通りにならないハリウッドの制作システムに嫌気がさして、
二度とハリウッドで仕事するもんかと誓ったそうです。
そういういきさつで、今回、カナダでの撮影を選択したとか・・・・・。
どこか懐かしい雰囲気に映像が仕上がっているのは、
カナダで撮影した効果かもしれません。
 
イマジネーション豊かな少年の冒険を、
おもちゃ箱のような楽しい映像で描き出した1本。
心の中をホッと温めてくれる、素敵な作品ですよ!
 
今日ご紹介した映画「天才スピヴェット」は、
■Denkikan
で、現在公開中です。
 
「天才スピヴェット」オフィシャルサイト
 
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