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「ビッグ・アイズ」

「FMKMorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「ビッグ・アイズ」です。
 
この映画は、「チャーリーとチョコレート工場」や
「アリス・イン・ワンダーランド」など、
壮大なビジュアル・イメージを駆使したファンタジー大作映画で、
日本でも大人気の映画監督ティム・バートンの最新作です。
 
今回の作品のテーマは、「ゴースト」
いかにもティム・バートンらしい、と思うかもしれませんが、
ゴーストはゴーストでも、「ゴースト・ライター」のゴーストです。
 
日本でも昨年、音楽業界を舞台にして「佐村河内事件」が起き、
「ゴースト・ライター」という言葉が注目を浴びました。
この映画「ビッグ・アイズ」は、1960年代にアメリカで
実際に起こった事件をもとにしています。
ファンタジーで知られるティム・バートン監督が、実話を題材にしたのは、
アメリカ史上最低と呼ばれた映画監督を描いた「エド・ウッド」以来、
実に20年ぶりだとか。
脚本を担当したのは、「エド・ウッド」と同じ、
スコット・アレクサンダーとラリー・カラゼウスキーのコンビ。
実話ベースの物語なんですが、実にティム・バートン監督らしい作品に
仕上がっています。
 
さて、このタイトルになっている「ビッグ・アイズ」の意味なんですが、
アメリカで大人気となったポップアート作品、
「ビッグ・アイズ」シリーズのこと。
少女マンガのように大きな瞳を持つ、
悲しげな子どもたちを描いたこのシリーズは、
ハリウッド女優をはじめ多くの人に愛され、
作者のウォルター・キーンは
一躍美術界の寵児として脚光を浴びます。
 
ところが、実際にこの「ビッグ・アイズ」の絵を描いていたのは、
妻のマーガレット・キーンだったんです。
彼女が典型的なアーティスト気質で、口下手で、
自分の作品を売り込むのが苦手。
それをいいことに、作者と称するウォルターは、
社交的な性格と口のうまさを駆使して
ビッグ・アイズを売り込み、巨額の財を築いていきます。
 
しかし、どんなに世間の評判が高まっても本当のことを言えず
アトリエで孤独に絵を描き続けていたマーガレットは、
ついに自分が本当の作者であると公表することを決意します・・・。
 
マーガレット役を演じたのは、
「魔法にかけられて」などの演技派女優エイミー・アダムス。
アーティストとしての才能がありながら、
自分の売り込みは苦手な画家を好演。
この作品の演技で、今年のゴールデングローブ賞の
ミュージカル・コメディ部門主演女優賞を受賞しています。
夫のウォルター役には、「イングロリアス・バスターズ」で
アカデミー賞助演男優賞を受賞した
クリストフ・ヴァルツが扮しています。
このウォルター役が劇中かなり面白くて、絵を描く才能はないのに、
口八丁でのし上がっていく男を軽妙に演じています。
ストーリー的には「悪役」なのに、
どこか憎めない面白キャラになっているのは、彼の演技の賜物です。
 
実は、本物のマーガレットさんは現在87歳で、今も創作活動中。
映画にもゲスト出演しています。公園のベンチに座っている老婦人役です。
 
出来上がった作品を見た彼女は、“クリストフ・ヴァルツの姿・声・行動、そのすべてが
ウォルターそのもの“と感想を語っていたそうです。
 
実は、このウォルター・キーンという人物。それまでは、
オリジナルの作品だけが、売り買いの対象となっていた
アート界に「コピー」を販売するという手法を導入した人物。
いまでは、ゴッホやダビンチの作品でさえ、
ポスターやポストカードになり販売されていますが、
彼がこのアート・ビジネスの先駆者だったという意外な事実。
映画の中でも、そのあたりのアートの歴史が描かれていますので、
見逃さないでください。
 
思えば、この60年代のアメリカから起きた
「ポップアート」というムーブメントは、大量生産、
大量消費という現代社会をテーマにした芸術運動でした。
消費社会を考察した芸術作品が数多くつくられました。
この「ビッグ・アイズ」シリーズは、
とても個人的作品として誕生したものですが、
映画では、「ビッグ・アイズ」シリーズが、ウォルターのプロモーションによって、
社会的な作品になっていくというプロセスを丹念に描いています。
新聞やテレビ、ラジオを使って自分たちの作品を売り込んだ
夫・ウォルター・キーンの存在なくしては、
「ビッグ・アイズ」シリーズも世に知られることはなかった訳だし、
商業的成功もありませんでした。この皮肉な展開。
この映画を観ると、メディアとアートの関係についても考えさせられます。
 
私たちが、芸術作品に触れる時には、
どんな作品なのかという情報も含めて作品を鑑賞するという
時代になっていますよね
まったく何の予備知識なしに、
純粋に作品と出会うことが難しい時代とも言えます。
そんな現代人とアートの関係についても、
この映画は鋭い考察をしているじゃないでしょうか?
 
もちろん、そんな難しいことを考えなくても、
物語の面白さにグングンと引きこまれる
映画になっていますので、ご心配なく!
さすがのティム・バートン監督印の
エンターテイメント作品になっています。
ティム・バートン監督は、もともと「ビッグ・アイズ」シリーズの
コレクターで作品の評価をもう1度高めたいという思いから、
この映画を作ったとか。それだけに、同じクリエイターとしての
愛情があふれる1本になっています!
 
今日ご紹介した「ビッグ・アイズ」は、
■Denkikan
で、現在公開中です。
 
「ビッグ・アイズ」オフィシャルサイト
 
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