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「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

「FMKMorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の
「バードマン  あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」です。
 
この作品は、今年の2月に発表された「第87回アカデミー賞」で、
作品賞、監督賞、撮影賞、脚本賞の主要4部門を受賞した話題作。
「バベル」や「21グラム」など、シリアスな人間ドラマで知られる
メキシコのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の作品。
なかなか発音しにくい名前ですが、
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督。
最近は省略して、
アレハンドロ・G・イニャリトゥとして表記している場合もあります。
今回の作品は、重厚な人間ドラマを得意としてきた彼が、
初めて挑んだ、ダークファンタジー。
ある意味、辛口のコメディとしても見られるとても興味深い作品です。
 
主人公は、かつてスーパーヒーロー映画「バードマン」で、
一度は、世界的な人気を博しながらも、
今は落ち目の俳優リーガン・トムソン。
彼は、一発逆転の復活をかけて、
自ら演出と脚色、主演を務める
ブロードウェイの舞台に立とうとしていました。
ところが出演俳優がケガで降板。
代わりにブロードウェイの実力派俳優マイクを迎えますが、
次第にその才能に脅かされるようになります。
さらに娘サムとの関係もこじれ、
公私ともに精神的に追い込まれていくリーガン。
やがて、存在しない架空のキャラクターのはずの
「バードマン」が語りかけてきます。
「さぁ、もう一度バードマンをやって、華麗に復活しよう!」と・・・・。
悪夢のような誘惑を振り払いながら、
演技に集中しようとするのですが、様々なハプニングが起きて、
舞台の準備は思うように進みません。
そして、プレビュー公演の日がやってくるのですが・・・。
 
主人公のリーガンを演じるのは、
ティム・バートン監督の「バットマン」で主役を演じた
マイケル・キートン。
(この役は、まさに彼自身のパロディとも言える役です。)
 
リーガンにプレッシャーをかける俳優マイクには、
エドワード・ノートン。
娘サム役には、「アメイジング・スパイダーマン」のエマ・ストーン。
この3人は、今回のアカデミー賞でそれぞれ主演男優賞、
助演男優賞、助演女優賞にノミネートされています。
それも納得の素晴らしい演技を見せています。
 
そして、この映画最大の特徴が、
全編を1カットで撮影しているかのような映像です。
5分以上の長回しのシーンをCGやアングルを工夫して
何度もつないでいるので、まるで、映画自体が
ノーカットの1本の映像のように見えます。
1カットに見せるために、カメラの動きをかなり限定しているため、
1つのシーンでの俳優の位置や演出方法は細かく決められ、
失敗が許されない緊張感の中で撮影されたとか。
 
この野心的な撮影を担当したのが、
撮影監督のエマニュエル・ルベツキ。
昨年は「ゼロ・グラビティ」の撮影を担当して、
あの宇宙の映像を見事に描いた人物です。
「ゼロ・グラビティ」でも冒頭の10分以上の長いシーンが
話題になりましたが、今回の「バードマン」は
あのシーンの何倍も長いショットになっています。
ルベツキの技術に対して、
2年連続のオスカーが贈られたのも納得の見事な撮影です。
 
この映画では、その技術的側面が話題になることが多いのですが、
大事なのは、その長回しの技術が、
映画のテーマを伝えるのに必要だったということです。
カットを割らないので、舞台裏からステージまでの空間が
シームレスにつながっています。
それで、観客は、俳優の緊張感をすぐ近くで
覗き見ているような感覚に陥ります。
これは、まさに映画という表現でしかできないことなんですが、
同時に、扱っている題材である
「演劇」の一番面白いところでもあります。
映画ではさまざまなことが描かれます。
 
俳優は舞台に対してどんな準備をするのか?
舞台のキャスティングはどう行われるのか?
舞台裏ではどんなスタッフがどんな作業をしているのか?
俳優同士は、相手の演技に対して、
どんなことを考えているのか?舞台がヒットするかどうかは、
どんな人物によって左右されているのか?
 
さまざまなショービジネスの秘密が、細部にわたって
描かれています。
 
ディティールも素晴らしいのですが、
この映画で何といっても心を掴まれるのは、
落ちぶれた元ヒーローの主人公が再起をかけて奮闘する姿!
細かいことは抜きにして、果敢に頑張るおじさんに、
きっとグッとくるはずです!
長い不思議なタイトルの理由も、ラストまで観ると判明します。
 
今日ご紹介した
「バードマン  あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」は、
■TOHOシネマズはません
■TOHOシネマズ光の森
■シネプレックス熊本
で、現在公開中です。
 
「バードマン  あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
オフィシャルサイト
 
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