東海大学農学部 本田憲昭さん
おいしい食べ物は人を元気にします。
おいしいものをおいしい季節に食べたいですね。
このコーナー『やさしいごはん』では毎回、
季節にぴったりの食に関する話題をお届けしていきます。
5週目の今日はスペシャル・ゲスト・バージョン。
◆ご出演者のお名前など
(お名前・ふりがな)本田憲昭・ほんだけんしょう
(所属・役職)東海大学農学部農学教育実習センター技師補
(プロフィール)
昭和34年(1959年)4月23日生まれ
(今月56歳になってしまいました。)
昭和53年熊本農業高校卒業後県立農業大学校の1期生として入学、
昭和55年3月卒業
昭和55年4月九州東海大学農学部付属農場勤務早、
35年間勤務(歳を取りました。)
現在農学教育実習センター農場部門長
家畜人工授精・牛削蹄師・農業機械技能士・
森林インストラクター等の資格を有する。
傍ら、東海大学九州陸上競技部部長(陸上競技審判)
Q 「東海大学農学部」の基本情報を教えてください。
〒869-1404
熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽5435
0967-67-0611
東海大学阿蘇キャンパス(TokaiUniv.Aso)
Facebook
東海大学ホームページ http://www.u-tokai.ac.jp/
Q 「東海大学農学部」では、さまざまな食品を生産、
販売されているそうですが、いつごろから行っているのでしょうか?
きっかけのようなものがあったら教えて下さい。
商品開発に関わる研究、ハムやソーセージの製造販売。
乳製品の製造販売の実績は農学部の開設から始まっていたといっても良いと思いますが、大学ブランド化に向けた動きが活発化して来たのは2006年頃からでした。
各地でアグリフェアーや産業展などが開催され、6次産業化といった動きが次第に活発になって来た事でしょう。
ちょうど、1996年ロンドン条約議定書の発令に伴い2007年から焼酎粕の海洋投棄が出来なくなることに伴い、それに先駆けて廃棄物を出さない循環型醸造に取り組み、焼酎作りを始めた事がきっかけであったように思います。
その後、その2次製品として焼酎粕を利用した今回ご紹介します「阿蘇の紅」など、いろいろな機能性食品の開発を手がけています。
Qどんな食品を作っていますか?具体的にご紹介お願いします。
今日は「大学生まれの食品美味しいお取り寄せ」に掲載されております4品についてご紹介します。
本格焼酎「阿蘇乃魂」について
この醸造は、房の露・九州沖縄地域農業研究センター・東海大学いわゆる「産官学」プロジェクトの一貫事業として始められました。原料は2001年九州沖縄地域農業研究センターで品種改良された「ムラサキマサリ」です。2006年、記念酒として2000本が醸造され「阿蘇の魂」と命名しました。現在では地域の農家の皆さんにも原材料のムラサキマサリの栽培をお願いしており
約15000kg(15t)、約15000本分の醸造が出来ます。
大変フルーティな香りが特徴です。当初から大変呑みやすく女性の皆さんに好評です。呑み方としてはロック、あるいは水割りがお勧めです。
更に、次に紹介する紫芋デザートソース「阿蘇の紅」との相性が抜群で、私の一番のお勧めな呑み方です。5:5の焼酎に「阿蘇の紅」を3~4滴入れて呑みますと美味しいカクテルが出来上がります。醸造元の房の露の上田部長様・深松課長様も絶賛でした。
紫芋デザートソース「阿蘇の紅」について
「阿蘇乃魂」の醸造が進んで行く中、原料となる「ムラサキマサリ」に含まれる機能性成分アントシアニンの利用方法は無いものかと「ムラサキマサリ(紫芋)を用いた高度循環型醸造に関する産官学研究」と題し研究を進めて来ました。ムラサキマサリに含まれるアントシアニンの含有量はブルーベリーにも劣らないほどです。この開発には球磨郡あさぎり町の堤酒造さん、鹿児島県の西酒造さんなど多くの皆さんにご苦労とご迷惑をお掛けいたしました。一昨年、福岡のソースメーカー「コックソース株式会社」様よりラブコールがあり、試行錯誤を重ね現在の「阿蘇の紅」にたどり着きました。ルビー色と言うか魅惑的な赤色と言うか、着色料を全く使用しないムラサキマリのアントシアニンの色だけがこの綺麗な色を作り出しています。実はこのアントシアニンは非常に変色しやすく“もろみ”の状態の色を保つ為の装置も苦労の末、作成することが出来ました。
ヤーコンシロップ「阿蘇の秘密」について
ヤーコンは近年ようやく多くの皆さんに親しまれるようになったフラクトオリゴ糖を多く含む機能性の高い植物です。熊本では特に菊池方面で多く栽培され、特産品化されて来ております。
本学の現農学部長村田教授が菊池出身でもあり、利用方法について相談を受けられたのが始まりです。茎や葉も大変利用されるようになりましたが、何といってもサツマイモに似た根(塊根)の部分の利用が多くなっています。この根から有用成分となる搾り汁をブリックス(ショ糖濃度)70%まで濃縮し機能性食品としてスティック状に包装したものです。当初、大手メーカーにお願いしましたが、キャパシティに大きな違いも生じ昨年ようやく完成しました。
ブルーベリージャムについて
ブルーベリーのアントシアニンについてはお話しするまでもありませんが、熊本県では特に旧蘇陽町(現山都町)で特産品化が進んでいます。近年本学が位置する南阿蘇村でも栽培面積が増えております。本学の果樹研究室、小松教授を中心に生食以外の商品化が進められました。
通常ジャムを製造するときにはコストを下げる為、ゲル化剤・増粘剤等が使われますが、本学のジャムはブルーベリーと砂糖以外の物を全く使用しておりませんので、どなた様でも安心して食していただけます。製造は㈲木ノ内農園にお願いしております。
Q 食品作りの苦労した点、やりがいなどのエピソードがあればお願いします。
これらの商品の中で最も苦労したのは「阿蘇の紅」の商品化でした。
日本酒の酒粕は多くの皆さんにご利用いただいて居りますが、焼酎粕となるとそのほとんどを捨ててしまっていたわけです。
そのような中から今回の様な大変美味しく機能性のある商品が出来たことです。
私の知っている中では世界で始めての商品では無いかと思います。
違っていたらすみません。
企業の皆さんも最初は半信半疑でした。「良く続きますね。」と言われていました。
現場で原料を頂いていると、原料が変色をしてしまうので、変色しないようにするのが大変でしたね。昨年、分注用の装置を製作して、安全かつスピーディーに作業を行うことが出来るようになりました。諦めずに続けて来たことが良かったと思います。
堤酒造の星原専務を始め従業員の皆さんにどれほどのご迷惑をお掛けしたことか、この場をお借りし改めて御礼を申し上げます。
Q これまでの活動を通じて、印象的なエピソードなどあれば教えてください。
企業さんとの交渉の中で皆さんに信じて頂いたことと思います。
鹿児島の西酒造の沖薗部長さんには特に感銘を受けております。
「自分だけが良くなるんではなく、皆がよくなる方が良いじゃないですか。」と
1本の電話だけで、貴重な時間を割いていただき私たちの実験にお付き合い頂きました。
本当に有難う御座いました。
Q PRしたいことなどあれば、お願いします。
本日ご紹介いたしました商品の内、「阿蘇乃魂」と「阿蘇の紅」は東海大学熊本キャンスと阿蘇キャンパス内のコンビニにて常時販売されております。
ご利用いただきますと幸いです。
現在も新たな商品開発に取り組んでおります。
ご期待頂き完成しました折にはこれまで同様宜しくお願いいたします。
本日は有難う御座いました。