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「熊本県ひきこもり地域支援センター」

あらゆるジャンルの“注目の人”にインタビューする
「ヒューマン・ラボ」。
熊本県ひきこもり地域支援センター 愛称「ゆるここ」の
矢田部裕介さん、北千恵さんにお話を伺いました。

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◆ご出演の方のお名前と職業・所属
 
名前:矢田部裕介(やたべゆうすけ)、
北千恵(きたちえ)
所属:熊本県精神保健福祉センター
(熊本県ひきこもり地域支援センター)
 
プロフィール:
矢田部裕介(やたべゆうすけ)
<略歴>
H13年熊本大学医学部卒業
H19年熊本大学大学院医学教育部神経精神科学卒業
H23年4月熊本大学大学院生命科学分野脳機能病態学分野特任助教
H25年4月熊本大学医学部附属病院神経精神科助教現;非常勤
H26年4月熊本県精神保健福祉センター次長現職
 
<資格・専門医など>
精神科専門医
日本老年精神医学会専門医
精神保健指定医
 
北千恵(きたちえ)
H7年熊本大学教育学部卒業
H7年4月熊本県福祉総合相談所心理判定員嘱託勤務
H9年4月熊本県庁入庁熊本県こども総合療育センター配属
H19年4月熊本県精神保健福祉センター現職
<資格など>
臨床心理士
 
ホームページ、ブログなど:
 
Qこの度、「ひきこもり地域支援センター」が設立されたそうですが、
センターの基本情報をお願います。
 
名称熊本県ひきこもり地域支援センター愛称「ゆるここ」
所在地〒862-0920 熊本市東区月出3-1-120
(熊本県精神保健福祉センター内)
電話相談・問い合わせ096-386-1177
年末年始、祝日を除く(月)(火)(木)
9:00~12:00、13:00~15:00
 
 
Q今回、「ひきこもり地域支援センター」が設立になったきっかけ・経緯は?
 
○熊本県では、ひきこもり対策として、
「熊本県精神保健福祉センター」において、
平成12年度から、ひきこもり状態の本人及びご家族等からの電話相談、
医師、臨床心理士等専門職による来所相談、本人のつどい・家族セミナー、
支援者に対する研修会等を実施してきました。
 
○ひきこもり状態にいたる要因を特定するのは非常に難しいと言われています。
また、きっかけも、不登校や中途退学等に引き続き、
長期にひきこもり状態になった方、何らかの傷つき体験により、
人との交流が怖くなった方、色んなことを頑張りすぎて、
エネルギーが枯渇してしまった方、離職後、再就職が困難で
ひきこもり状態になった方など、様々です。
 
○厚生労働省では、平成21年より
「ひきこもり地域支援センター設置運営事業」を始め、平成26年度末には、
全国に56か所(52自治体)が設置されており、
毎年相談総件数は増加しているそうです。
 
○平成26年度の県精神保健福祉センターでのひきこもりの電話相談は、
延べ122人、来所相談は、延べ211人、実数71人でしたが、
相談のニーズがありながら、相談にいたることができていない方が
多く存在すると思われます。
 
○「ひきこもり地域支援センター」を設置の目的は以下のとおりです。
 
①相談窓口の明確化:より多くの方に知って頂けるよう、
積極的に情報をお伝えしていきたいと考えています。
 
②社会の理解を求める;ひきこもりは、本人の努力不足ではないか、
家族の関わり方が問題ではなど、周囲の誤解もあり、
結果、ご本人やご家族が、さらに苦しんでしまうということもよくあります。
そこで、県民の適切な理解を深めるための研修会の開催や情報発信も行います。
 
③ご本人やご家族が安心して集える居場所運営等の援助;
ご本人が、身近な地域で社会参加に繋がるための一歩を応援する場が必要です。
居場所を開催したいという地域に出向いて、運営のサポートなどを行います。
 
④途切れない支援を目指す;長期的なサポートが必要な方もおられます。
また、ご本人及びご家族の高齢化に伴う新たな課題もあります。
関係機関と連携を行いながら、途切れない支援を目指していきます。
 
Qそもそも「ひきこもり」の定義とは?
 
○厚生労働省の「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」より
簡単にご説明すると、・「ひきこもり」は、様々な要因の結果として、
長期にわたり家庭にとどまり続け、社会的な交流の機会が、
少なくなっている状態のことを示す現象概念です。
原則として、統合失調症など精神疾患の症状に基づくひきこもり状態を除きます。
 
○内閣府の定義では、
 
①「自室または、家からほとんどでないものや
近所のコンビニなどに出かけるもの」を
狭義のひきこもりとし、
①に加え、②「ふだんは家にいるが、
自分の趣味に関する用事には出かけるもの」を併せて、
広義のひきこもりと呼んでいます。
 
○「ひきこもり」そのものは、治療の対象ではありませんが、
長期間に及ぶひきこもり状態がもたらす二次障害として、
精神症状等が出てきた場合には、医療機関での治療が、
改善に繋がることもあります。
 
Q現在、日本では何人ぐらいの「ひきこもり」がいるのでしょうか?
熊本県では? 
 
○全国のひきこもりのこどもや青年の数(15歳~39歳以下)
・現在のところ最も信頼性の高い調査(※)によると、
現在ひきこもり状態にある子どものいる世帯は、
全国で約26万世帯と推計。※厚生労働科学研究
「こころの健康についての疫学調査に関する研究」
(主任研究者:川上憲人)
 
○内閣府調査H22「若者の意識に関する調査
(ひきこもりに関する実態調査)」による推計では、
広義のひきこもり状態にある者69.9万人、
狭義のひきこもり状態にある者23.6万人と推計。
ただし、ひきこもり状態にはないが、ひきこもりたい気持ちが
わかるとする若者も多く存在し、
若者の生きづらさが反映された調査となっています。
 
○熊本県のひきこもり状態にある者の数
・全国調査の結果から推計すると、
広義のひきこもり状態にある者は、約5900人、
狭義のひきこもり状態にある者は、約2900人となります。
 
◎上記は、39歳以下の数値であるが、40歳以上のひきこもり状態のものも、
多数存在すると思われます。
 
Q「ひきこもり」はどんな原因が多いのですか?世界的にはどんな状況ですか?
 
○きっかけや原因は様々で、特定できない。
・それらを特定するのは、非常に難しいと言われています。
個人的な要因と社会的な環境要因とが複雑に絡み合っている場合が多く、
ご本人もご家族も些細なきっかけだったのに、
なかなか抜け出す機会を見いだせずに、非常に長期にわたり、
ひきこもり状態にいたる場合もあります。
 
◎原因探しは、ご本人やご家族を苦しめ、かえって良くないと言われているおり、
それよりも、今何ができるか、何をしたいか、どういうことで
苦しみから解放されるかを少しずつ考え、実行していくことが、
回復に繋がると言われています。
 
○世界のひきこもり
 
・日本以外には、韓国でひきこもりが多いと言われていますが、
アメリカやヨーロッパでは少ないとされています。
日本や韓国は親孝行を重んじる儒教文化圏であり、
子どもが成人後も親と同居し続けることに抵抗がないため、
適応に失敗した場合、実家に「ひきこもる」ことができる場合が多いです。
一方で、アメリカなどでは、成人後は家を出ることが当たり前であり、
適応に失敗した場合、実家に「ひきこもる」ことができず、
ヤングホームレス化や薬物中毒、犯罪に手を染める等の
問題につながるとされています。
 
しかし、最近は、経済的な豊かさやネット文化の広がりもあり、
欧米でもひきこもりが増加していると言われています。
ただし、この見解は、「ひきこもり」は、各国において、
歴史・文化・宗教・慣習等の影響も大きいとされていることから
述べたものであり、現時点で、あくまでも推測であることを了解頂きたい。
 
Q「ひきこもり地域支援センター」では、
今後どのような「支援」を行っていくのですか?
具体的に説明お願いします。
 
対象:熊本市外在住で18歳以上のひきこもり状態にある本人又は家族、
及びその支援者
○相談支援(専用電話相談・対面相談)
*専属のひきこもり支援コーディネーター等が対応
 
○本人及び家族支援(本人の集い・家族セミナー)
・外出できるようになった本人の居場所を設け、他者との交流を図る。
・家族の孤立化を防ぎ、悩みを共有したり、対応を学ぶ場を設ける。
 
◎このような本人が安心して集える居場所や家族が集う場を
市町村単位など、身近な地域にできるよう働きかけていく。
(提案していく。)
 
○支援者・一般向け研修会
・より複雑で解決が困難な相談に対応できる支援者の育成、
若者を社会全体で、支えられるよう、県民により理解を求めるための
一般向け研修、併せて、相談窓口の周知を行う。
・訪問相談ができるサポーター及びピアの立場で支援を行う
ピアサポーターの育成。
 
○啓発(HP・通信等の情報発信)
 
○ひきこもり対策連絡協議会の設置
・医療・保健・福祉・教育・労働等の関係機関からなる
連絡協議会を設置し、対象者の
相談内容に応じた適切な支援を行う。
 
Q 「ゆるここ」は18歳以上の「ひきこもり」を対象にしているということですが、
それ以下の年齢(17歳以下)の「ひきこもり」の窓口はどこになるのでしょうか?
 
○熊本市民の方で、10歳以上の方は、
「熊本市ひきこもり支援センターりんく(tel096-366-2220)」へ
 
○熊本市民以外の方は、教育機関に所属されている場合は、
各市町村の教育相談窓口やスクールカウンセラー、
スクールソーシャルワーカー(学校が窓口)、
中学校卒業後の高校に在学していないお子さんは、
熊本県中央児童相談所及び八代児童相談所、
各市町村の子育て相談窓口などが窓口になります。
 
○中学校卒業後で、心身の様子が普段と違う症状が見られる場合は、
各医療機関や主に精神面についてのご相談は、熊本市民の方は、
「熊本市こころの健康センター(tel096-362-8100)」、
熊本市民以外の方は、「熊本県精神保健福祉センター
(tel096-386-1166)」が窓口になります。
 
Q 「ゆるここ」は、熊本市以外の熊本県全域が対象と
なっていると思いますが、熊本市の窓口の連絡先も教えてください。
 
○熊本市民の方は、『熊本市ひきこもり支援センターりんく
(tel096-366-2220)』が相談窓口です。
ご本人とご家族の住所が異なる場合や県外から県内の学校に通う
学生さんなどもおられますので、熊本県ひきこもり地域支援センター
『ゆるここ』とも、普段より連携を行っています。
ただし、大事な個人情報などについては、
ご相談者の承諾に基づき、情報交換を行うようにしております。
ご安心ください。
 
Q例えば、番組リスナーの周囲に「ひきこもり」の人がいたら、
どんな対応をすればいいのでしょうか?
アドバイスお願いします。
 
まず、ご本人やご家族の気持ちに寄り添い、
お話を聴くことが、大切と思われます。
その際は、無理に話さなくてもいい、話したいときに、
少しずつ話せればという姿勢で。
そして、以下のように伝えてみましょう。
 
○「ひきこもり」は誰におこってもおかしくありません。
あなたや家族が特別だからではありません。
 
○あなた(ご本人、ご家族)のせいではありません。
何が原因かを探すのは、かえって良くないと言われています。
 
○少しずつでいい、焦らなくていいですよ。
 
○何か自分にも協力できることはないですか?一緒に考えましょうなど
*相手が断っても良いような提案、協力依頼をしてみる。
 
○不安な状況に直面していたら、しっかりと話を聴き、
今の状況(悩んだり、揺れたりしていることも含め)を肯定する。
「そんなふうに感じているのね。」「そういう考えを持っているのね。」
「死にたいほどつらかったのね。」
*どんな思いも、自分とは違う考えや意外な考えを
持っていたとしても、まずは、肯定する。
 
Qもし、いま「ひきこもり」の人がこの番組を聞いていたとしたら、
どんなメッセージをおくりますか?
 
○この番組を聞いてくださったことをとても嬉しく思います。
 
○「ひきこもり」は誰におこってもおかしくありません。
 
○あなたのせいではありませんよ。
 
○少しずつ、焦らなくていいと思います。
小さなできることを積み重ねていきましょう。
 
○相談できる窓口がありますよ。
 
○一緒に考えて行きましょう。
 
○今までお一人で抱えてきた悩みをよろしければ、
私たちに聞かせてください。
 
○あなたが思う人生を歩む、新たな一歩のお手伝いができればと思います。
 
○正解はないと思います。一人一人状況が違って当たりまえ。
一緒に考えて行きましょう。
 
○最初は、誰かに逢うことに抵抗があるかもしれません。
しかし、様々な出逢いがきっかけとなり、その人本来の力を取り戻し、
発揮することにつながることも多いようです。
 
○変化を起こすことには、勇気がいりますが、
ほんの小さないつもと違う変化が大きな変化に繋がっていくこともあります。
小さなできることを一緒に探していきましょう。
 
◇ひきこもりの状態を経験した
“ご本人からのメッセージ”~“ゆるっといこう”より(HPに掲載)
 
○「ひきこもったら、人生終わり」ではありません。
 
○ひきこもりを自分の新しい人生を探すための休憩や
挑戦にしてみればといい思います。
 
○一歩進むために知ろう!とりあえず、やれることをやる一歩を
 
*ご本人がやってみた、やっていた生活上の自分なりの工夫など
 
○夜の散歩(公園・山、犬と)、自転車で遠出、ジョギング
 
○ある日、片付けに目覚めた
 
○食生活を野菜を取り入れるよう変えてみた
 
○家事の一部を担当。献立を考えると思考が戻ってくる感じ
 
○愉しみ;アニメを見る、ラジオを聴く、
プラモデル、同じ趣味を持つ人との交流
 
Qお仕事を通じての苦労、やりがいなどあればお願いします。
 
○苦労よりもむしろ、やりがいの方が大きいです。
 
○大変な状況で生きて来られた相談者との出逢いや、
一生懸命ご本人を支えるご家族からは、むしろ、大きなパワーをもらいます。
 
○お一人お一人が大事な価値観をお持ちで、
それに触れることができた時や、何か初めてのことを
一緒に経験できた時は、喜びを感じられること多いです。
 
○ご本人もご家族も自信を失っておられることが多いのですが。
ホントに真面目で誠実で繊細な方が多いです。
まずは、ご自身を決して責めずに、何か小さなことでもいいので、
できることを一緒に積み重ねていけたらと思います。
 
Q熊本県民にPRしたいこと、今後の活動予定、
お知らせなどあれば教えてください。
 
ひきこもり地域支援センターの存在を多くの県民に伝えてほしい!!!!
 
「ゆるここ」という名前は、
ご本人の集いの名称「ゆるっとスペース“CoCo”」を短縮して、
ゆるCoCoという言葉をみなさんが愛着を持って呼んで
くださっていたことから、付けました。
「ゆるっと、ここから、始めよう。」
「ここらで、ゆるっとしてみよう」
「ゆるっと、ここに行ってみよう。」
「ゆるっと、こころ許しあえる仲間と出逢おう。」
そんな思いも込められています。
「“ゆるここ”に行ってみよう!」と思ってもらえると、とても嬉しいです。
よろしくお願いします。
 
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