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「駆込み女と駆出し男」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週土曜日・5月16日から公開される
「駆込み女と駆出し男」です。
 
さて、気候のいいこの時期はブライダルシーズン。
結婚式に出席した方も多いと思いますが、
結婚とくれば、その逆、離婚も最近では「離婚式」のような
式をあげるカップルもいるぐらい身近な事になっています。
“最近の夫婦はすぐ離婚する”なんて話もよく聞きますが、
実は江戸時代の離婚率は今よりずっと多く、
統計によると庶民では現在の2倍ほど。
武家の場合はなんと10%を超えていたというから驚きです。
 
この時代、庶民の離婚は簡単で、
男性が離縁状を描いて女性に渡せば離婚成立。
離縁状は3行ほどだったので、「三下り半」とも呼ばれました。
しかしこの離縁状、書けるのは夫だけで、
女性から離婚を申し立てることは出来ません。
男社会ならではのとても不公平なシステムだった訳です。
 
そこで離婚したい女性の最終手段となったのが、
全国で2か所存在したという、幕府公認の縁切り寺でした。
離婚を望む女性がそこへ駆込めば、
御用宿の離婚調停人の聞き取り調査を経て、
示談がまとまらなければ寺入りし、寺で2年を過ごせば
夫は、いやでも離縁状を書くしかない、
という当時の女性を救済するためのシステムでした。
 
この映画「駆込み女と駆出し男」は、そのうちの1つ、
鎌倉の東慶寺を舞台に、日本を代表する劇作家、
故・井上ひさしが晩年11年の歳月をかけて書いた小説
「東慶寺花だより」を原案としています。
井上ひさしと言えば、日本の文学界、
演劇界で長年にわたって活躍した作家です。
古くは、放送作家として、人形劇
「ひょっこりひょうたん島」の台本を書いていたり、
自ら劇団「こまつ座」を旗揚げして、
多くの名作舞台を生み出したり、他方面で活躍した人物です。
この映画では、井上ひさしらしい江戸情緒が随所に
登場してきて、粋でテンポのいいニュータイプの
時代劇に仕上がっています。
 
監督は、「金融腐蝕列島・呪縛」や
「クライマーズ・ハイ」など社会派の現代劇を
得意としてきた原田眞人監督。
今回、初の時代劇にチャレンジした原田監督は、
日本映画黄金時代の時代劇、黒澤明の「赤ひげ」や
川島雄三の「幕末太陽傳」などの作品を
かなり参考にしているそうです。
今回、舞台として撮影に協力したのは、
兵庫県姫路市にある「圓教寺」というお寺です。
実は、原田監督、トム・クルーズ主演
「ラスト・サムライ」に俳優として出演した際に、
このお寺での撮影を見学し、雰囲気の素晴らしさに感動し、
「いつか自分の作品でも撮影してみたい。」と
念願していたそうです。
今回の企画は、この「圓教寺」での撮影ありきで
スタートしたそうですよ。「ラスト・サムライ」も
ハリウッドが作った新しい時代劇でしたが、
今回の時代劇で「離婚調停所」を描くという
斬新な切り口もまた新しい時代劇を感じさせます。
 
出演は、夫の暴力から逃げてきた・ジョゴを
戸田恵梨香が演じる、豪商の愛人・お吟を、
満島ひかりが演じています。これまでの彼女たちが
演じた役どころとは、かなり違ったキャラクターで、
様々な事情をもつ女性たちが新たな一歩を
踏み出していく姿を、時代劇らしい、
品のある映像美で描き出していきます。
 
そんな女性たちの味方として登場するのが、
大泉洋演じる戯作者に憧れる見習い医者の、中村信次郎。
どこかとぼけてコミカルで、
暖かく女性たちを見守るキャラクターは、まさにハマリ役!
たぶん「幕末太陽傳」のフランキー堺をイメージした
キャステングだと思いますが、テンポよく畳み掛けるような
口調の信次郎は、大泉洋の新境地と言えそうです。
特に駆け込み女と取り戻そうと乗り込んでくる
怖いヤクザの親分を、口八丁の出まかせで
やり込めるシーンは見事です。
また、黒澤明の「赤ひげ」でも重要な役を演じた山﨑努が、
「南総里見八犬伝」を執筆する曲亭馬琴を演じています。
信次郎が憧れる戯作者の大物を存在感たっぷりに演じています。
その他、曲者キャストも多数登場し、
飽きさせない作りになっています。
 
この「キネマのススメ」のコーナーでも、
いくつか紹介してきました映画会社・松竹の作る
新しいタイプの時代劇。「武士の家計簿」、
「武士の献立」、「超高速!参勤交代」などありましたが、
最新進化系がこの作品と言えそうです。
古い時代劇の感覚を忘れて、新しいタイプの
エンターテイメントとして楽しめる作品です。
観た後に、気持ちが晴れやかになる作品。
特に女性に観ていただきたい1本です!
 
今日ご紹介した「駆込み女と駆出し男」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、今週土曜日・5月16日から公開されます。
 
以上、「キネマのススメ」のコーナーでした。
 
「駆込み女と駆出し男」オフィシャルサイト
 
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