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「チャッピー」

「FMK MorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「チャッピー」です。
 
2009年の長編デビュー作「第9地区」で、
エイリアン映画ながら人間社会の縮図を描き、
映画ファンの注目を集めた、ニール・ブロムカンプ監督。
当時29歳という若さだったのですが、フレッシュなビジュアル感覚と社会派なテーマを盛り込む手法の新しさに、アカデミー賞でも注目されました。
作品賞、脚色賞、編集賞、視覚効果賞など多数の部門にノミネートされ、ブロムカンプ監督は、一躍「時の人」となりました。
 
つづく長編2作目「エリジウム」は、荒廃した地球に住む労働者層と宇宙空間のコロニーに住むエリート層との「格差社会」を舞台にした作品でした。
制作費も1作目よりぐっと増え1億ドルを越えています。
3作目の今回は、再び故郷・南アフリカのヨハネスブルクに舞台を戻し、「第9地区」を思わせる、パワフルな社会派エンターテイメントSF大作となっています。
全米1位の大ヒットを記録し、ますますブロムカンプ監督の名声が上がっています。
 
今回のテーマは、人工知能、AI。
「AI」といえば、2001年にスピルバーグが監督したヒューマンドラマを思い浮かべる方も多いと思いますが、この映画は全く雰囲気が違います。
今回、AIが搭載されるのは、犯罪多発地区を警備するために作られた警察ロボット。
開発者のディオンは、上司に無断で独自に開発したAIを、スクラップ寸前のロボットに搭載します。
ところがその矢先、ディオンは警察ロボットを憎むストリートギャングに、ロボットごと誘拐されてしまいます!
生まれたばかりの赤ん坊同然のロボットは「チャッピー」と名付けられ、驚くべき速さでギャングとしての生き方を学び、成長していきます。
一方、ディオンのライバルである同僚の科学者ヴィンセントは、自分が開発した脳波でコントロールするタイプの大型ロボット「ムース」の出番がなく、不満を募らせていました。
「チャッピー」の存在を知ったヴィンセントは、彼を「ムース」の売り込みに利用することを思いつくのですが・・・・・。
 
見た目はごついロボットなのに、中身は純粋無垢なチャッピー。
最初は、まるで赤ちゃんのような無垢な存在だったチャッピーは、ギャングの仲間から急速に学習し、ギャングのように肩で風を切って歩いたり、乱暴なスラングをペラペラしゃべるようになります。
このあたりのくだりは、かなり可愛く、笑えるんですが、同時に、無垢な存在でも教育次第で悪に染まっていくという南アフリカのストリートの怖さを描いています。
この、ロボットなのに人間らしいチャッピーを演じているのが、ブロムカンプ監督の盟友シャルト・コプリー。「第9地区」では、エイリアンのDNAを浴びて変身する主人公を演じていました。
今回は、声のみの出演ですが、感情を持ってしまったロボットの喜びや悲しみを、生き生きと表現しています。
天才エンジニア・ディオンを演じるのは、「スラムドッグ$ミリオネア」でブレイクしたデーヴ・パテル。
悪役ビンセントは、ヒュー・ジャックマンが、ノリノリで演じています。短パンを履いて毒舌を吐く彼の役どころは、」かなり珍しい役どころです。
ロボットを作る会社テトラバール社の女性CEOをシガニー・ウィーバーが演じていますが、シガニー・ウィーバーと言えば「エイリアン」シリーズのヒロイン・リプリー役で有名です。なんと撮影中にブロムカンプ監督が提案した「エイリアン」の新作に関するアイディアを大いに気に入って、20世紀フォックスに熱烈アプローチ。
現在、シリーズ最新作・5作目の「エイリアン」をブロムカンプ監督とともに、正式に準備中だというニュースも飛び込んできました。
 
このように、ブロムカンプ監督は、筋金入りのSFファンです。
今回の作品が、数多くの先人の作品から影響を受けていることをインタビューでも語っています。
犯罪地区を制圧するロボット警官という設定は、昨年リメイクもされた1987年の「ロボコップ」から大きく影響を受けているそうです。
また、チャッピーのデザインは、士郎正宗の「アップルシード」シリーズのデザインから影響を受けているとのこと。
ここから先は、ネタバレになるので、詳しくは言えませんが、クライマックスの「ある展開」が、日本の有名なアニメ作品から影響を受けているのは間違いありません。
このあたりも是非お見逃しなく!
 
派手な見せ場だけの一般的なハリウッド映画と違って、「チャッピー」は、とても現代的で社会的なテーマを見事にビジュアル化した作品です。
「教育」が世の中を変える一番の武器だ!と教えてくれる とても「道徳的」な作品と言えるかもしれません。
 
今日ご紹介した「チャッピー」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
で、現在公開中です。
 
「チャッピー」オフィシャルサイト
 
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