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「海街diary」

「FMK MorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週土曜日・6月13日から公開される
「海街diary」です。
 
この映画は、「そして父になる」や「誰も知らない」などで
海外でも高く評価されている是枝裕和監督の最新作。
前作「そして父になる」は、福山雅治の主演で
「子供の取り違え事件」を描き、大ヒット。
カンヌ国際映画祭では、審査員賞とエキュメニカル賞
特別表彰の2冠を受賞しています。
 
今回の「海街diary」は、先月開催されたカンヌ国際映画祭の
コンペティション部門に正式招待され、上映後には、
満場の観客からスタンディング・オベーションを受けました。
国際映画祭のコンペ部門というのは、とても厳しい
映画ファンや評論家が鑑賞するので、よくない作品は、
上映の途中でも、どんどんお客さんが出て行って
しまうこともあるそうです。厳しいですね。
上映後にスタンディング・オベーションを受けるというのが、
いかに特別なことか・・・ということですね。
国際映画祭に参加した映画で上映後の映像が
報道されない場合は・・・・・・つまり・・・
どういうことか・・・・ということですね。
この映画の場合は大成功だったということです。
さすが是枝監督ですね。
カンヌ国際映画祭には、もう常連とも言える是枝監督です。
 
監督だけでなく、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず
という、今をときめく4人の人気女優が4姉妹を演じる
豪華さでも注目の1本です。
 
舞台は鎌倉。ある日、幸、佳乃、千佳の3姉妹で暮らす
香田家に、15年前に、家族を捨てて、
家を出て行った父の訃報が届きます。
山形での葬儀に出席した姉妹は、
そこで母親の違う妹、すず と出会います。
父を亡くし、身寄りがいなくなってしまった すず に、
長女の幸は、鎌倉で一緒に暮らそうと提案。
申し出を受けた すず は、3姉妹と共に、
鎌倉で新たな生活をはじめます。
 
映画では、新たに4人姉妹となった彼女たちの暮らしを
美しい鎌倉の四季とともに、ゆったりと描いています。
大きなドラマを起こらないんですが、春・夏・秋・冬の
季節ごとに家族の間で起きるささやかな事件を
丹念に描いてゆきます。時々ケンカしながらも、
毎日食卓を囲み、周りの人と関わりながら暮らしていく4人。
 
一見ほのぼのとした話のようですが、
自分たちを捨てた両親を許せない長女・幸や、
不倫によって生まれた自分の存在を責める・すず、など
重い葛藤を抱えながら、それを乗り越えていくところが
物語のテーマ。
さまざまなエピソードを通して、お互いが心開き、
新たな家族になっていく姿はしみじみとして感動的です。
「家族を描いた」作品というより、「家族になる」物語と
言った方がよいかもしれません。
 
原作は、2013年のマンガ大賞など、数々の賞に輝く
吉田秋生のベストセラーコミック。
監督自身が、原作の大ファンだったこともあって、
その世界観をとても大事にして、撮影されています。
原作にも色んな食べ物が描かれていましたが、
映画では、ちくわカレー、アジフライ定食、
しらすトースト、生シラス丼、手作り梅酒など、
様々な食べ物が登場して、食卓を彩ります。
この食べるシーンがとても素晴らしいです。時には
お行儀が悪いような食事シーンもあったりするんですが、
そんな場面も含めてとても幸せな食事シーンが描かれます。
食卓を囲む時間を重ねることが、
家族を作っていくことに繋がっていく・・・。
映画はそんなことを伝えたかったのではないかと思います。
 
舞台が鎌倉で家族のお話というと、
思い出される日本の映画監督がいます。
小津安二郎監督です。「晩春」、「麦秋」、
「東京物語」、「お茶漬けの味」、「秋刀魚の味」などなど。
数え上げればきりがないくらいの名作を生み出した
日本を代表する名監督。鎌倉を舞台にした作品が
多いことでも知られています。
是枝監督は、家族が時間を積み重ねていく姿を
小津映画から学んだと語っています。
特に長女幸を演じる綾瀬はるか が、なんとなく
往年の名女優・原節子を彷彿とさせる「凛」とした古風な
女性になっているのも「小津風」と言えるかもしれません。
 
ヨーロッパでは、是枝監督のことを「小津の孫」と
呼ぶ記者もいるそうです。
静かなドラマの中で育っていく家族の愛情。この
「海街diary」は、現代版「小津映画」とも言えるかも
しれません。もし、小津作品を観たことがなかったら、
この機会に「海街diary」と一緒に観ることをおススメします。
 
鎌倉の四季の中で成長する四人姉妹の姿。
日本映画の伝統を踏まえながら、新しいチャレンジも
満載されている気持ちのよい映画です。
観た後に家族で食卓を囲みたくなる、あたたかな1作です。
 
今日ご紹介した「海街diary」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、今週土曜日・6月13日から公開されます。
 
「海街diary」オフィシャルサイト
 
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