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「トイレのピエタ」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週土曜日・6月6日から公開される
「トイレのピエタ」です。
 
今も“マンガの神様”として、新しい世代にもファンを
増やしている手塚治虫。
この映画は、1989年、60歳で生涯を閉じた
手塚治虫が病床で綴っていた日記に、
監督の松永大司が触発されて作り上げた、
オリジナルストーリーです。
 
その日記の文章は、手塚が亡くなるひと月前に
記されたもので、ラストのページだったといいます。
旺盛な製作意欲を、最後の最後まで持ちづづけていた手塚治虫。
最後の最後までマンガのアイディアをノートに書き連ねていました。
短い文章なので、引用してみます。
 
1989年1月15日 
今日はすばらしいアイディアを思いついた!
トイレのピエタというのはどうだろう。
癌の宣告を受けた患者が、何一つやれないままに死んで行くのはばかげていると、
入院室のトイレに天井画を描き出すのだ。
周辺はびっくりしてカンバスを搬入しようと するのだが、
件の男は、どうしても神が自分をあそこに描けという啓示を、
便器の上に使命されたといってきかない。
彼はミケランジェロさながらに寝ころびながらフレスコ画を描き始める。 
彼の作業はミケランジェロさながらにすごい迫力を産む。
傑作といえるほどの作品になる。
日本や他国のTVからも取材がくる。
彼はなぜこうまでしてピエタにこだわったのか?
これがこの作品のテーマになる。
浄化と昇天。
これがこの死にかけた人間の世界への挑戦だったのだ!
 
これが全文です。
この映画は、この手塚の最期の言葉とも言えるこの文章から
インスパイア―された作品。
「ピエタ」というのは、聖母子像で、
死後十字架から降ろされたイエス・キリストを抱く
マリアを描いた絵画や彫刻などの芸術作品のこと。
10年ほど前に、テレビのドキュメンタリー番組で
この手塚の日記に出会った松永監督はアイデアを
ずっと胸にあたため、自らか脚本を書き、
長編デビュー作として映像化することにしました。
 
その映画の主人公は、園田宏。
美大を卒業したものの、画家の夢に破れた彼は、
日々をビルの窓清掃をして暮らしていました。
ある日、突然、病院でガンの宣告を受けた彼は、
生きることの意味を見失ってしまいます。
そんな宏と、ひょんなことから出会った女子高生の真衣。
彼女は、複雑な家庭環境の中で、毎日を苛立つように生きていました。
対照的な2人は、反発しながらも惹かれあっていきます。
 
宏を演じるのは、ロックバンド「RADWIMPS」のボーカル・野田洋次郎。
演技は初挑戦となる彼ですが、まるで宏というキャラクターそのもののような、
素晴らしい演技を見せています。
特に「つまらなそうな表情」が抜群。
演技でなく、全身で宏という役を生きて体現しているようで、
俳優にはできない存在感が抜群です。
 
女子高生・真衣役には、テレビドラマ「夜行観覧車」や
「思い出のマーニー」の声優などで注目を集めた、杉咲花。
 
ぐっさんと回鍋肉を食べまくるCMの女の子、
といった方が分かりやすいかもしれませんね。
 
生命力あふれるヒロインを、生き生きと好演しています。
また、宏の入院する病院で同室になる男性を、
リリー・フランキーが演じているんですが、
これもまた、いい味を出していますよ。
 
生と死を描いた映画は、ともすればわざとらしくなりがちですが、
ドキュメンタリー出身の監督らしく、
役者たちが物語の中で自然に生きているような演出が印象的です。
そして、タイトルの「トイレのピエタ」。
いったいどんなピエタが描かれるのか。
ぜひスクリーンで確かめてみてください!
 
今日ご紹介した「トイレのピエタ」は、
■Denkikan
で、今週土曜日・6月6日から公開されます。
 
ここでもう1本「RADWIMPS」ファンにおススメの作品があります。
「RADWIMPS」を追ったドキュメンタリー作品
「RADWIMPS 2014 Document 4×4」です。
6月6日(土)のみDenkikanでの上映が決定しました。
 
バンドのアートディレクターも務める永戸鉄也によるドキュメント作品です。
「RADWIMPS」が2014年2月5日~7月20日にわたり
アジアを含む全44ヵ所で行ったライヴツアーの模様を追ったドキュメンタリーです。
リハーサルスタジオから完全密着し、
ツアーファイナルの沖縄公演までを監督が自らカメラを持って撮影、
彼らのオフステージの様子に肉薄しています。
「RADWIMPS」ファンは、見逃せない1本です。
6月6日(土)のみの上映ですので、お見逃しなく!
 
「トイレのピエタ」オフィシャルサイト
 
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