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「国際市場で逢いましょう」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の
「国際市場で逢いましょう」です。
 
この映画は、韓国の激動の現代史を生きてきた、
ある家族の話をドラマティックに描いた作品です。
 
第二次大戦後の復興を壮大なイメージで描いたヒット作品は、
いくつかあります。まず、1995年のアカデミー賞を受賞した
「フォレスト・ガンプ/一期一会」。
トム・ハンクス演じるガンプ青年が、ケネディ大統領と握手したり、
ベトナム戦争に従軍したり、アップル社に投資して
大金持ちになったりと、アメリカという国の「戦後史」を
ひとつの物語として語った作品でした。日本では、
「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズがそれにあたるでしょう。
東京タワーができる様子や新幹線の開通など、
日本の戦後復興の様子が、山崎貴監督得意のCGで再現されました。
テレビドラマの世界でいうと、2010年4月に放送された
三谷幸喜脚本の「わが家の歴史」という
スペシャルドラマがありました。
博多から上京した一家が、戦後を代表する様々人物と
かかわるというコメディ・ドラマでした。
高倉健、美空ひばり、黒澤明、長谷川町子、
マリリン・モンローなど多彩な登場人物が話題になりました。
 
今日ご紹介する「国際市場で逢いましょう」も
そんな手法で作られた映画です。
朝鮮戦争から現在まで、60数年間にわたる韓国近代史を
ぎゅっと1本に凝縮したような物語です。
 
主人公のドクスは、1950年、朝鮮戦争の混乱で
父親と幼い妹と離れ離れになってしまいます。
共に残された母親と弟、妹を養うため、家長として
釜山の国際市場の露店を手伝っていたドクスは、
弟の学費を工面するため、当時の西ドイツへ
炭鉱労働者として出稼ぎにいきます。
そこで派遣看護師として来ていたヨンジャと恋に落ち、結婚。
しかし末の妹の結婚費用などを稼ぐため、
今度はベトナム戦争に参加。危険と背中合わせに
なりながら、家族のためにひたむきに働き続けます。
 
まさに“韓国版「三丁目の夕日」”といった雰囲気のこの作品、
本国では1400万人以上を動員し、韓国映画史上
歴代2位の大ヒットとなりました。
現在の韓国の人口は約5000万人なので、
4人に1人が観た計算になります。
まさに国民的大ヒット映画です。
 
主役のドクスを演じるのは、「ユア・マイ・サンシャイン」の
ファン・ジョンミン、昨年公開された「新しき世界」では、
やくざ社会に生きる男をエネルギッシュに演じていましたが、
今回の役どころは全く逆。
家族のために真面目に働き続ける実直な男を好演しています。
この映画の大ヒットで「国民の父」と呼ばれる
存在になったそうです。
やさしい笑顔がとても魅力的な俳優さんです。
 
彼の妻・ヨンジャには、韓流映画ブームの火付け役となった
アクション映画「シュリ」やアメリカのテレビシリーズ
「LOST」にも出演していたキム・ユンジン、
 
また日本でも絶大な人気を誇る「東方神起」のユンホも出演し、
実在の人気歌手 ナム・ジンを演じ、
歌声を披露していることでも話題になっています。
 
監督のユン・ジュギュンは、前作「TSUNAMI ツナミ」でも
1132万人を動員した、韓国でも指折りのヒットメーカー。
今回のヒットで、韓国歴代ヒット映画のベスト10に
2本もライクインさせ、さらに注目が集まっています。
 
彼はヒットの理由を、「常に庶民にスポットを当ててきたから」と
語っていますが、今回の作品も自分の父親をモデルにしているとか。
歴史的な背景はちょっと違いますが、
一家団欒の様子や家族を思う心は日本も韓国も同じ。
懸命に生きてきた主人公の姿に、胸が熱くなる1本ですよ。
 
今日ご紹介した「国際市場で逢いましょう」は、
■Denkikan
で、現在公開中です。
 
お隣の国なのに、知らなかった出来事もたくさん描かれます。
戦後のアジアの歴史の勉強にもなります。
もちろん笑えるシーンもたくさんある人情ドラマで、
同時にかなり泣ける映画でもあります。
是非、劇場でこの感動を味わって下さい。
 
以上、「キネマのススメ」でした。
 
「国際市場で逢いましょう」オフィシャルサイト

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