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「セッション」

「FMK MorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今度の土曜日・7月4日から公開される
「セッション」です。
 
この映画は、2014年の「第30回サンダンス映画祭」グランプリと
観客賞のダブル受賞をきっかけに、世界各地の映画祭で注目を集め、
今年度のアカデミー賞では
助演男優賞、編集賞、録音賞の部門を見事に受賞。
世界的に大評判となった作品です。
東京地区では、今年4月に公開になり、大ヒットを記録しました。
また、この映画の解釈を巡って、ネット上で「大論争」が起き、
いろんな意味で話題になった作品です。
そんな映画がいよいよ熊本でも公開です。
 
主人公は、世界的なジャズドラマーをめざし、
名門音楽大学に入学した青年・ニーマン。
そこで待ち受ける伝説の教師フレッチャーとのぶつかり合いを
軸に描かれる音楽ドラマです。
・・・と聞くと、音楽と恋愛が絡んだ、良くある青春ドラマかな~
なんて思うかもしれません。
 
しかし、この映画は違います!
伝説の教師フレッチャーは、軍隊顔負けの鬼教師。
完璧を求める彼は、学生たちに、容赦ない罵声を浴びせ、
時には手をあげるなど、ニーマンを心身ともに、
徹底的に追い込んでゆきます。一方のニーマンも、
音楽のために、すべてを捨てて打ち込む覚悟を決め、
付き合っていた恋人を捨て、家族からも孤立。
クライマックスの9分19秒の演奏は、
「映画史を塗り替えた」とまで言われたライブ・シーン。
音楽をはさんで対峙する2人の姿は、
まるで緊迫感あふれるサスペンス映画のようです。
 
ニーマンを演じたのは、注目の若手、マイルズ・テラー。
まるでプロ・ミュージシャンのような素晴らしい
演奏テクニックを見せる彼。ハリウッドでも注目があつまり、
この秋公開のマーベルの超大作「ファンタスティック・フォー」の
主演が決定しています。
表面的には繊細な感じの表情の奥に潜む野望を見事に演じきっています。
そして、鬼教師フレッチャーは、サム・ライミ版
「スパイダーマン」シリーズでひょうきんな新聞社の編集長を
演じていたのベテラン・J・K・シモンズが演じています。
特に、今年のアカデミー賞で「助演男優賞」を受賞した、
J・K・シモンズの鬼気迫る演技は必見ですよ。
 
この、今までにない音楽映画を作り上げたのは、
弱冠29歳のデイミアン・チャゼル監督。
実は彼は、高校時代にジャズドラムに没頭。
名門バンドでプレイするほどの才能を開花させますが、
鬼コーチのスパルタがトラウマになり、音楽の道を断念した
という映画さながらの経歴の持ち主なんです。
映画の道に進んだ後も彼はこのトラウマに悩まされ、
それを克服するために自らの経験を映画化することを決意。
撮影期間19日間、製作費わずか3億円で作り上げたそうなんです!
(3億円というのは、アメリカの映画界では、かなり低予算の作品です。)
 
少ない予算で密度の高い映画を作るために、撮影は一日18時間、
のべ19日間という短期間で行われました。
これは、相当にきついスケジュールですよ。
(しかも、その撮影期間中に交通事故に遭いながら、
執念で現場復帰したんだとか・・・。
まるで、この舞台裏そのものが映画みたいですが、
この交通事故というエピソードは、実は、
この映画のストーリーそのものと微妙にシンクロしています。)
 
こんなインデペンデントな作品が、世界中の映画祭で認められ、
アカデミー賞で3部門を受賞したわけですから、
画面から伝わる監督の思いに魂を揺さぶられた人が
多かったということでしょう。
 
音楽映画としても素晴らしいんですが、
「師匠」と「弟子」の関係を描いた一種の
「スポーツ根性もの=スポ根もの」としても見ることができます。
「弟子」の才能を認めているからこそ、厳しく指導し、
ある時は「乗り越えるべき敵」として存在する・・
そう「巨人の星」の星飛雄馬と星一徹の関係を思い浮かべるのは、
ちょっと例えが古いですかね。
「北斗の拳」のケンシロウとラオウみたいなものですよ。
だから、難しい映画じゃないです。
一種のアクション映画とも言えますね。
 
この映画、東京地区では、4月に公開になり、
劇場にお客は入りきれない程の大ヒットを記録。
同時に、ジャズ・ミュージシャン菊池成孔と
映画評論家・町山智浩の間で、この映画の解釈を巡って、
「大論争」が起き、ネットでもかなり話題になった作品です。
興味を持った方もいらっしゃると思いますが、
この映画の何が彼らを熱くさせたのか・・・。
ぜひ自分の目で確かめてみてください。
 
今日ご紹介した「セッション」は、
■Denkikan
で、今度の土曜日・7月4日から公開されます。
 
「セッション」オフィシャルサイト
 
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