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「バケモノの子」

「FMK Morning Glory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、現在公開中の「バケモノの子」です。
 
今週から、いよいよ夏休み!
映画も夏の大作が続々と公開されていますが、
先週ご紹介したピクサーの「インサイド・ヘッド」の
ライバルになりそうなのが、日本代表のこの「バケモノの子」。
壮大な日米のアニメ対決の勝敗に映画業界が注目しています。
 
「バケモノの子」は、ポスト宮崎駿と期待される
細田守監督の3年ぶりとなる最新作です。
細田監督は、「時をかける少女」、「サマー・ウォーズ」、
「おおかみこどもの雨と雪」とクオリティの高い
アニメーションを作り続けている監督さんです。
前作「おおかみこどもの雨と雪」の時には、
この番組でもインタビューをしました。
その時のインタビューは、いまもポッドキャスト中ですので、
是非、聴いてみて下さい。
 
最初は、東映動画のアニメーターとして、キャリアを
スタートした細田監督。東映動画では「デジモンアドベンチャー」、
「ゲゲゲの鬼太郎」「ワンピース」などの作品にかかわり、
若手演出家として注目されるようになりました。
一時、スタジオジブリで「ハウルの動く城」を
映画化しようとしていた時期もあったそうです。
(のちに、この企画は宮崎駿監督によって映画化されました。)
「おおかみこどもの雨と雪」の時に、
自らのアニメーション制作会社「スタジオ地図」を設立し、
自ら企画したこだわりの作品を製作しています。
そのあたりのキャリアが、宮崎駿監督と重なる点があり、
「ポスト宮崎駿」と呼ばれるのも納得の才能です。
 
さて、その最新作「バケモノの子」のストーリーですが・・・。
僕たち人間が住む人間界とは別に、バケモノ達が住む
パラレルワールドが並行して存在する世界。
母親を事故で亡くし、一人ぼっちになってしまった9歳の少年は、
渋谷をさまよっているうちにバケモノたちが暮らす
渋天街へ迷い込みます。
そこで、剣豪のバケモノ・熊徹に出会った少年は、九太と
名付けられ、熊徹に弟子入りすることになります。
豪快で剣の腕はめっぽう立つものの、
短気で子供っぽい熊徹は、いままで弟子をまともに
育てたことがなく、教え方がわかりません。
そんな熊徹に最初は反発していた九太ですが、
熊徹のライバル猪王山との対決をきっかけに、
次第に師匠と弟子の絆が育っていきます。
修行を通じて、心を通わせるようになる熊徹と九太。
それは、まるで親子のような関係になっていったのです。
やがて成長し、青年になった九太は、
人間界と行き来できるようになり、
自分の生きるべき世界を模索しはじめます。
しかに、その事が、人間界とバケモノ界を揺るがせる
大事件の「きっかけ」になってしまいます。
完成までに3年かけたという通り、細部にまでリアリティに
こだわった映像は一見の価値あり!
最近はアニメといえば、3Dが普通になっていますが、
あえて手書きにこだわり、日本アニメの伝統を守っています。
特に、重要な舞台となる渋谷の街のディテールの細かさが
素晴らしいです。
この映画のために、スタッフは実際に渋谷の街を訪れ、
詳細なロケハンを行ったそうです。
細かな街角の様子やネオンサインなどが忠実に映像化されています。
実写映画では絶対に撮影不可能なクライマックスの
渋谷のシーンは、その実在感もあいまって、
観客がまるで渋谷に居るような
気分になるリアリティ抜群の完成度になっています。
 
背景の映像だけでは、ありません。
生活感のある細かい描写もこの作品では、
いきいきと描かれています。
熊徹と九太が、生卵を何個も使って、
「たまごかけごはん」を食べるシーンがあるんですが、
見ていてこっちも食べたくなるような豪快な食べっぷりですよ。
 
また、声優たちも超豪華!主人公の熊徹には、
演技派俳優の役所広司、少年の九太には、
前作「おおかみこどもの雨と雪」でもヒロインを演じた宮崎あおい、
青年の九太には、「寄生獣」の染谷将太、
九太に影響を与える女子高生・楓に、「海街diary」の広瀬すず、
ほかにも、リリー・フランキー、大泉洋など、
実写でもなかなかない 豪華な顔ぶれが揃っています。
どの役者さんも素晴らしいんですが、特にバケモノ界の
リーダー宗師を演じた津川雅彦さんが素晴らしかったですね!!
かわいらしい兎のよなキャラクターで、
飄々としているんだけど、実力は、誰よりも強いという
「スターウォーズ」のヨーダのような存在です。
お見逃しなく!
 
たのしいキャラクターがたくさん出てきて、
ストーリーもスピーディな展開なので、
子供はもちろん楽しめる作品なのですが、大人の目線でも、
細部まで演出された登場人物の心の交流が描かれていますので、
深く感動する作品です。世代を超えて楽しめるという点も
「ポスト宮崎駿」の面目躍如といったところではないでしょうか?
この作品で「スタジオ・ジブリ」から「スタジオ地図」の
時代が到来したのかもしれませんね。
 
少年の成長と親子の絆という、シンプルなストーリーに、
日本ならではの細かくリアルな絵が重なる、
王道のアニメーション!
この夏見逃せない1本ですよ!
 
今日ご紹介した「バケモノの子」は、
■TOHOシネマズ 光の森
■TOHOシネマズ はません
■TOHOシネマズ 宇城
■シネプレックス熊本
■イオンシネマ熊本
で、現在公開中です。
 
「バケモノの子」オフィシャルサイト
 
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