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「野火」

「FMK MorningGlory」
毎週火曜日にお送りしています、「キネマのススメ」。
毎週、松崎ひろゆきが選んだ映画をご紹介しています。
 
今日ご紹介するのは、今週土曜日・8月8日から公開される
「野火」です。
 
今年は戦後70年ということで、
戦争に関する話題も数多く聞かれますよね。
映画業界も、この節目の年に、
様々な映画企画が発表されています。
 
終戦の玉音放送に関する人々を描いた「日本のいちばん長い日」。
6000人ものユダヤ人にビザを発給して、
その命を救った日本人外交官を描いた「杉原千畝 スギハラチウネ」。
名匠・山田洋次監督も、吉永小百合主演で、
長崎での原爆を描く「母と暮らせば」を製作しています。
 
今日ご紹介する「野火」も、第二次世界大戦末期の
フィリピンの戦場を舞台にしたもので、
原作は大岡昇平の小説。
戦争文学の代表作として良く知られています。
1959年には、日本映画の巨匠、市川崑監督によって
映画化されているんですが、今回、「鉄男」や
「バレット・バレエ」など世界的に評価される、
塚本晋也監督が新たに映画化しました。
 
さて、そのストーリーですが・・・、
日本の敗色が濃くなった、
第二次大戦末期のフィリピン・レイテ島。
結核にかかった田村一等兵は、部隊を追い出され、
野戦病院に送られますが、食糧不足を理由に、
病院からも受け入れを拒否されてしまいます。
行き場をなくした田村は、空腹と孤独と戦いながら
島をさまようことに・・・。
次第に彼は、精神の均衡を失っていきます。
 
塚本監督は、高校時代に読んだ小説の「野火」の印象が
強烈に残っていて、20年ほど前、本格的に映画化を企画。
海外に出資を募ったそうですが、作品の規模の大きさも
あってなかなか実現できなかったそうです。
しかし、いつかは映像化したいとずっと思い続けていたそうです。
一時期は、アニメーションでの映画化も検討した時期もあったそうです。
「鉄男」をはじめ、独特のビジュアル・イメージで有名な塚本監督。
彼らしい独特な戦場アニメーションになった可能性もありましたが、
これも実現には至りませんでした。
 
大岡昇平の親族に手紙を送り、映画化権を得たことから、
今作らなければチャンスはないと、
自ら監督・脚本・編集・撮影・製作・主演を兼ねる
自主映画として、ついに映画化をスタートしました。
 
物語の舞台となるフィリピンには、
最小限の人数でのロケを敢行しているほか、
出演者やスタッフもプロは最小限で、
ボランティア・スタッフがかなり協力しているそうです。
 
キャストは、主演の田村役を自ら演じる塚本監督以外も
個性的なメンバーが揃いました。
戦場で生き残るために狡猾に立ち回る男「安田」を、
最近は役者としての活躍が著しいリリー・フランキー。
戦場の凄味を漂わせる「伍長」役に
元「ブランキー・ジェット・シティ」のドラマー・中村達也。
戦場で豹変していく若い兵隊「永松」を、
今回オーディションで選ばれた森優作。
いわゆる「プロの役者」ばかりでないフレッシュな
キャスティングで統一されていることで、
まるで観客が、その場に居るような戦場のリアリティを
感じられるようになっています。
 
「野火」という作品は、大岡昇平の戦争体験が
元になっているので、戦場での描写はかなりリアル。
目をそむけたくなるシーンの連続ですが、
それこそが監督が伝えたい“戦争の本当の姿”でもあります。
 
日本だけでなく、海外で高く評価されている
塚本晋也監督の作品らしく、この作品は、
第71回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に
選出される栄誉を受けています。
 
余談ですが、塚本監督は来年公開になる
マーティン・スコセッシ監督の話題作「沈黙」で
重要な役どころを演じています。
江戸時代初期のキリシタン弾圧を描いた
遠藤周作の小説の映画化で、スコセッシ監督が
長年映画化を希望していた念願の作品です。
オーディションでスコセッシ監督に会った塚本監督は、
「『ツカモトって、あの映画監督のツカモトか!?『鉄男』と
『六月の蛇』が好きだよ。」スコセッシ監督に言われたそうです。
やっぱり映画は、世界の言葉、国境を越えるんですね。
 
それではここで、この映画「野火」の
塚本晋也監督のコメントをお送りします。
 
実は、今回のコメントは、時間の都合でカットした部分も
ありましてノーカット完全版インタビューを、
現在FMKのオフィシャル・サイトでポッドキャストしています。
塚本監督の映画への思いを、是非感じて下さい。
 
 
20150804.jpg
 
今日ご紹介した「野火」は、
■Denkikan
で、今週土曜日・8月8日から公開されます。
 
壮絶な戦場を見事な映像で描いた「野火」。
あなたも、劇場で体験してみて下さい。
 
なお、8月8日の公開初日には、
Denkikanで塚本晋也監督の舞台挨拶も予定されています。
詳しい情報は、Denkikan
電話096-352-2121まで、
お問い合わせください。http://www.denkikan.com/
 
以上「キネマのススメ」でした。
 
「野火」オフィシャルサイト
http://nobi-movie.com/
 
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