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「Sプランニング」

企業にまつわる気になる疑問を解決する「会社のヒミツ」。
今日は、文字を読むのが苦手な人でも
楽しく読むことができるように工夫された
「LLブック」という本などを出版している
「Sプランニング」のヒミツに迫ります。
 
「Sプランニング」は、東京都にある障害者福祉の本を
出版している会社です。
今日お話を伺ったのは、「Sプランニング」
取締役 鈴木伸佳さんです。
 
Q①まず「Sプランニング」について教えて下さい。
 
Sプランニングロゴ.png

2005年から、知的障害のある人の地域生活を進めたり、
権利を守る内容の本の出版を、一人で行っています。
この10年で、25点の本の出版をしました。

Sプランニングロゴ_マック.png
 
オフィシャルサイト:http://www.s-pla.jp/
 
Q②「Sプランニング」という社名の由来を教えてください。
 
私の名前が鈴木なので、鈴木書店でもいいかあな、と
思ったのですが、あまりにもありふれているのでやめました。
Sは鈴木のSで、プランニングは、出版だけではなく、
なんでもできるように、とつけたのですが、
結局、いまのところ出版しかできていません。
 
Q③「Sプランニング」は、
どんなイメージの会社を目指しているのですか?
 
知的障害のある人が、地域で、障害のない人と同じように、
自由で、豊かな暮らしが送れるようになることを
応援できるような本の出版を目指しています。
というのは、10万人近くの知的障害のある人が、
入所施設で暮らしているという現実があるからです。
 
Q④「Sプランニング」では、
「LLブック」という新しい形態の本を出していると
いうことですが、どんなきっかけで出来た本ですか?
 
1995年に、フィンランドのオーランド島というところで、
知的障害のある人のための4年に1度の大会「北欧会議」と
いうのがありました。
そこに日本からも知的障害のある本人の方を含め
25人が参加しました。その北欧会議には、
スウェーデンからも参加されていて、
その会場に知的障害のある人向けの、わかりやすい本が
たくさん展示されていたんです。
そのとき私は、障害のある子をもつ親の団体で働いていて、
親向けの機関誌の編集などをしていたのですが、
知的障害のある本人向けの本がある、
ということでびっくりしたわけです。
そこで、それらの本を発行している「LL財団」の人に
話を伺ったりして、また、そこで展示してあった本を
たくさんもらって帰ってきました。
その数年前、1993年くらいだったと思いますが、
日本でも知的障害のある人の本人活動が少しずつ盛んになり、
障害のある人に対する情報提供の大切さが、
関係者の中でも意識されるようになってきました。
そこで、日本でも、同じように知的障害のある人向けの
本を出そう、ということで、初めて親の会でつくったのが、
「ひとりだちするあなたへ」という本でした。
それ以降、毎年1冊ずつ、本人向けの本を発行し、
親の会では15冊~16冊の本を発行しました。
また、スウェーデンのLL財団の活動にならって、
日本の親の会でも、「ステージ」という
本人向けの新聞も発行するようになりました。
そうした仕事をしていたのですが、10ほど前ですが、
私が50歳になったのを契機にその会を退職し、
自分でSプランニングという出版社をつくったわけです。
現在まで、4冊のLLブックを発行しています。
 
Q⑤「LLブック」の具体的仕様を教えて下さい。
どんな点が優れているのですか?
 
読者の対象が主に知的障害のある人なので、
難しいことばの表現などは使わず、イラストや写真を
多く取り入れて、わかりやすく内容を伝えるということを
心がけました。「わかりやすい」といっても、
子ども向けの本ではありません。
あくまで、大人向けの本です。福祉系の本は、
それまで、レイアウトなどにも凝ったものは少なく、
とかく、ダサい本が多かったのですが、
持ち歩いていてもオシャレな本、を目指していました。
といっても、そこがなかなか、むずかしいです。
 
スウェーデンのLLブックは、とてもたくさんの、
いろんな種類の本が出版されていました。
日本では、出版できる点数も限られていたので、
内容の優先順位から言って、
とにかく教育的なものしか出版できませんでした。
 
Q⑥現在、「「LLブック」は、どんな種類がありますか?
いくつかご紹介ください。
 
Sプランニングの発行ということに限らなければ、
これまで出版されたLLブックの内容は、
制度の解説、健康について、
料理、性、
障害の自己認識、などなど。

こわいこともあるけれど.jpg
 
グループホームで暮らす.jpg
 
病院へ行こう.jpg
 
らクック.jpg
 
Q⑦「LLブック」を作るうえで苦労したポイントは何ですか?
苦労話などのエピソードなどあればご紹介ください。
 
つくるうえ、というより、
なかなか販売につながらないという苦労があります。
スウェーデンのLL財団の本は、政府の補助金によって
つくられていました。日本でも、景気がよかった時期は、
助成団体が、年1冊程度が出版できるほどの
お金の補助が出ていたのですが、
景気がわるくなってくると、それも削られてしましました。
 
知的障害のある人は、本を買うという習慣もあまりなく、
また、経済的に厳しい人が多いため生活に余裕がない方が
ほとんどです。なので、うちのような民間の零細な会社が
LLブックを出版したとしても、売れなければ、
いずれ行き詰ってしまいます。
LLブックの必要性はあるのでしょうが、
売れないので、なかなか発行自体ができません。
 
スウェーデンの「LL財団」には、多くの職員がいて、
国も本を出版する予算をつけてくれています。
日本のように、教育的な本ばかりではなく、
余暇の本や娯楽的なものまで、幅広い内容のものが
出されていて、最初に聞いた時にも
年間50点近くもの本を出している、と言っていました。
 
Q⑧「LLブック」はどうやったら手に入りますか?
 
Sプランニングの本は、ホームページからお申込みいただけます。
「病院へいこう」
「グループホームで暮らす」
「こわいこともあるけれど」
「ら.クック」
 
Q⑨「Sプランニング」の歴史の中で
もっとも印象的な出来事は何ですか?
 
今回のように、新聞紙上でLLブックのことを
取り上げてくださったり、エフエム熊本で、
そのことについて取材いただいたり、ということは、
LLブックのことだけではなく、知的障害のある人の
おかれている現状を、少しでも多くの方に知って
いただけるきっかけになるので、とてもありがたく、
うれしい出来事です。こうした話題に反応して、
響いてくださる方が一人でも増えてくださることを願っています。
 
「Sプランニング」 オフィシャルサイト
 
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