9月13日(木)の名盤は
今日は1980年代に、本国イギリスはもちろん、アメリカや日本でも
とても人気の高かったハワード・ジョーンズを紹介しました。
彼が登場した1982年から83年当時というのは、ニュー・ウェイヴ全盛期、
特にエレクトロニクスを多用したテクノ・ポップ、エレクトロ・ポップと呼ばれる
音楽が大人気で、そういったスタイルの音楽が得意なイギリス勢が市場を席巻、
アメリカのチャートでさえイギリス勢が上位を独占するという、
いわゆる「第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン」といわれた時期でした。
(ちなみに第1次はビートルズなどが活躍した1960年代中期)。
そんな中、1983年にデビューしたハワード・ジョーンズも
シンセサイザーを駆使して、ほとんどすべてのサウンドを、
たった一人で作り上げた、典型的なエレクトロ・ポップで、
いきなりヒットチャートの常連となりました。
ただこの人の場合はスタイルこそ典型的でしたが、音の作り方に関しては、
他のエレ・ポップ勢とは決定的に違うものがあったんです。
普通はシンセを使うと、ある種の無機質なクールさが前面に出てきて、
そこに近未来的なカッコよさが当時は感じられたのですが、
この人のシンセは人懐こい、ヒューマンな温かみが持ち味で、
これは当時としては、かなり衝撃的でした。
音に負けない楽曲の良さと、適切なアレンジ、
そしてセンスの良い、愛情を持った演奏があれば、
シンセでも充分に人間的な暖かさを表現することができるんですね。
はじめにエレクトロニクスありき、ではなく、おそらく10年早かったら
ピアノで弾き語るシンガー・ソングライターになっていたはずの人が、
たまたまシンセがあったから使った、というのが真相なのかもしれませんね。