1月31日(木)の名盤は…
今日は1970年代にヒットを連発し、ロックの殿堂入りを果たしている
アメリカの大御所、スティーリー・ダンを紹介します。
このバンド、というかユニット、はっきり言ってクレイジーなんです。
デビュー当時はジャズっぽい味付けが個性的ではあったものの、
普通のバンドでしたが、リーダーのドナルド・フェイゲンは大変気難しく、
次々にメンバーのクビを切り、1976年頃には彼とウォルター・ベッカーの
2人だけになります。ここからやりたい放題が始まりました。
例えば、「ここに誰々風のギターが欲しいなー」と考えた時、
普通ならその誰々さんと同じ楽器を調達して、
特徴をマネて似た音を作り出すのがそれまでの方法でしたが、
彼らは「面倒臭いから本人に弾いてもらおうぜ。
どうせ俺達2人しかいないし、金ならあるし」というまさに目からウロコの
方法論革命で、数十名もの超一流達を迎えて制作したのが、
1977年のアルバム「エイジャ」でした。
思うに、これって現在のサンプリングの手法と非常に近いですね。
言っておきますが、Hip Hop誕生以前の話ですよ。
さすがにこれは完成度が高く、ロックの金字塔と呼ばれる名盤ですが、
その裏では、ある大物に何十回も同じフレーズを引かせた挙句に
採用せず、激怒させたとか、一人でも高額なギャラの一流ミュージシャンを
10人ほど呼んで、たった数小節のソロを弾かせ、結局その当時キャリア的に
最も格下だった人のテイクに決定したとか、
鬼のような逸話が山ほどあります。
そして、この手法をさらに徹底したのが、1980年の「ガウチョ」です。
前作は完璧でしたが、こちらは過剰に完璧。
息苦しいほどの極度の緊張を聴き手に迫ります。
極度の完ぺき主義者の狂気、金を湯水の如くつかう狂気、
そしてボツにされた大物たちの怨念(笑)・・・と、
ある意味、「暴力よりもこわい恐怖が、ぱっと聴いた感じでは、
爽やかでオシャレなサウンドの奥に透けて見える。」
そんな完全に“イってしまった”名盤がこれです。