2月28日(木)の名盤は…
今日紹介したのは「10cc」です。10ccと言えば、これはもう何と言っても
“ロックの歴史の中で最も美しいナンバーのひとつ”と称される、
不朽の名曲、1975年の世界的大ヒット「アイム・ノット・イン・ラヴ」が有名ですが、
この曲のイメージだけで彼らの全体像を捕えようとすると大間違いです。
もっと幅広い音楽性と批評性を持ったユニークな、
いや、はっきり言って変態的なバンドなんです。
1970年にイギリスで結成された4人組で、1972年にデビュー。
この曲からして、ビートルズの名曲「オー・ダーリン」を
徹底的に茶化したパロディでした。
その後も、とても美しいメロディのポップ・チューンかと思えば、
途中からいきなりオペラのような歌い方になったり、
キレイな曲調に似合わない、妙な音色の演奏が絡んだりと、
変な曲ばかり発表します。
ファンにとっては、そんな変態っぷりがたまらないのですが、
これには理由がありました。
4人のメンバーのうち、2人はポップ職人とも言える優れた作曲家で、
残る2人はユーモアとか毒気担当と言えるぶっ飛んだ人たち。
この正反対の特徴を持つ2組が緊張感を保ちながら同居していたのです。
そのせめぎあいの中で化学変化が起こり、
何とも言えぬ魅力が曲の中に宿った訳です。
まさしくバンド・マジックの神秘と言えます。
「アイム・ノット・イン・ラヴ」もよく聴くと構成や音の仕掛けはかなり変ですし、
美しいコーラスも狂気と紙一重なのが感じられます。
しかし、そんな危うい緊張関係が長く続くはずもなく、
1976年にポップ職人組とぶっ飛び組の2派に分裂。
どちらももう二度とマジックを生み出すことができぬまま失速してしまいます。
バンドには解散してしまわない程度の
対立関係があったほうがいいのかもしれませんね。