5月22日の名盤は…
今日はリズム・シリーズVol.1と題してお送りしました。
ブラック・ミュージック/クラブ・ミュージックの世界で一番重要なのは、
リズム/ビートです。
常に時代のテンポに合ったビートが求められ、
それにピタリと同調したものがヒットする訳です。
逆に言えば、新しいビートの発明こそが、
この種の音楽の進化そのものと言えるでしょう。
そこで、今週と来週の2週は、1980年代後期から1990年代初頭にかけて、
アメリカとイギリスでそれぞれ大流行した2大リズムを紹介します。
まずはアメリカ編。1987年にキース・スウェットの
「アイ・ウォント・ハー」という曲がヒットしました。
この曲、それまでのいわゆる80年代ファンクとは
微妙なニュアンスの違いなんですが、明らかに一線を画す
新感覚のビートを持っていたのです。
作曲したのはテディ・ライリー。この曲ではまだ完成とは言えなかった
この新しいビートを、ライリーは自らのグループ、GUY(ガイ)を通じて
1年後に確立します。これがニュー・ジャック・スウィングというリズムです。
ニュー・ジャック・スウィングの特徴は、文字にすると難しくなりますが、
うねりながらも小気味よくシンコペイトするリズムと、
16ビート三連譜の細かいハイハットの組み合わせ、
ということになります。異様にハネるホットなビートとでも言いますか。
ポイントは2つ。シンコペイションの基本はファンクの流れなんですが、
そこにジャズに通じるスウィング感が加わっていること。
だからこそのニュー・ジャック・スウィングという名前なんです。
もう一つは、打ち込みによる、ユレのないジャストなビートであること。
揺らぎがないからこそ気持ちいい、というのが革命的に新しかったことと、
打ち込みであるがゆえに音楽的技量を問わず、
だれでも手軽に真似できたことが、
爆発的ブームにつながった重要なポイントです。
1990年前後の数年間のアメリカは、
まさにニュー・ジャック・スウィング一色というほどだったのです。