あのアーティストに影響を与えた…
今日はあるエピソードから紹介します。
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1960年代初頭のアメリカ。
ある少年がラジオから流れるロックン・ロールに夢中になりました。
まだビートルズ登場前。
当時のスターはエルヴィスにバディ・ホリー、チャック・ベリーなどなど。
でも、少年には彼らと同じくらい好きな、自分だけのヒーローがいました。
「あの人みたいになりたい。」少年はギターを覚え、歌い始めます。
ヒーローは1960年~1962年の間に8曲をヒットさせるも、
それ以降はパッとせず、名前を耳にすることもなくなってしまいましたが、
少年にとってのヒーローの地位は揺らぐことはありませんでした。
やがて時は流れ、少年は夢を叶え、プロのロックン・ローラーとなりました。
彼の名前は「ブルース・スプリングスティーン」。
1980年代に突入しようかというある時、
すでにスターになっていたブルースは、
全米ツアーの移動中に立ち寄った田舎町の場末のバーで、
まばらな観客を前に歌っている中年の黒人を目撃します。
声を聴いただけで彼の正体がわかったブルースは、
震えながら楽屋を訪ねます。
「ゲイリー・U.S.ボンドさんですね。
僕と一緒にレコードを作って下さいませんか?」
しかし、彼はショー・ビジネスの世界に嫌気が差していて、
ブルースのことも知らないほどに業界から離れていたため、
なかなか首を縦に振りません。
そこでブルースはギターを借り、歌い始めます。
それは目の前の中年男性の
唯一の全米No.1ヒット「クォーター・トゥ・スリー」でした。
男性は言いました。「あんた、なんでこんな古い歌を知ってるんだ?」
ブルースは答えます。
「あなたは僕のヒーローなんです。この仕事を続けていれば、
いつかお会いできると信じて、ずっとステージで歌ってるんです」。
この言葉に復帰を決意した彼は、
ブルースの全面バック・アップの下、アルバムを制作。
シングル「いかしたあの娘」で、
1981年に20年ぶりにヒット・チャートに返り咲きました。
20年に亘るブルース・スプリングスティーンの一方的な師弟関係は、
世代を超えた男の友情となったのでした。