7月10日(木)の名盤は…
先週は“メッセージを伝えるメディアとしてのロック”というお話をしましたが、
今週と来週はもう一歩踏み込んで“歌のやりとりによる論争”の
最も有名な事件のひとつを紹介しました。
今週の主役は「ニール・ヤング」です。
今や実力、人気ともロック界の頂点の一人と言える大御所で、
そういう地位にありながら休むことなく新作発表とツアーを続ける
“現役感覚”では他の追随を許さない偉大な人です。
彼は特に政治的な歌ばかり歌っているわけではないのですが、
昔から自分の納得できない事件や出来事があると、
すぐに歌で噛み付くロックな人です。
ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争すべてに異議を申し立てています。
そんな彼が特に怒ったのが人種差別。
黒人公民権運動を武力で弾圧したアラバマ州知事ウォーレス、
そして彼を選んだアラバマ州に対して、いや、黒人差別が根強く残っている
すべてのアメリカ南部に住む人々に対して歌ったのが、
1970年に発表した「サザン・マン」でした。
この歌の歌詞はこんな感じです。
~南部の人々よ、落ち着いたほうがいい。聖書の教えを忘れるな。
南部よ、変わるんだ。綿花に黒人。白亜の豪邸に小さなボロ小屋。
南部の人よ。いつになったら彼らに償う?
今日も聴いたよ。彼らの悲鳴と鞭の音。いったいいつまで続くんだい?~
とにかくこのウォーレス知事という人は、“人種差別は永遠だ”と宣言して
南部の白人に絶大に支持されていた人で、ニール・ヤングとしては、
この知事も支持者も異常にしか思えなかったのでしょう。
理性的に言葉を選び、極力抑えた諭すような歌い方ですが、
ガマンできなかったのか、激情が爆発したかのような
ギター・ソロが怒りの大きさを表現した名曲、そして名演奏です。
お届けしたのは、ニール・ヤングで「サザン・マン」でした。