2月5日(水)の名盤は…
昨日2月4日は、カレン・カーペンターの命日でした。
そこで、今日はカーペンターズを取り上げました。
カレンが亡くなったのは1983年のことですから、もう26年も経つんですね。
カーペンターズがヒット・チャートを賑わわせていた
1970年代は完全にロックの時代であって、
彼らのようなソフト・タッチの王道的ポップスは逆に異端児でした。
一歩間違えば時代遅れにもなりかねないこのスタイルを、
そうはさせなかったのが、兄であるリチャードの練りに練り上げた
アレンジ能力の天才ぶりと、
なんといってもカレンの唯一無二の歌声の素晴らしさでした。
女性歌手として当時も今も珍しい低音ボーカルで、
しかもほとんどシャウトせず、こぶしも回さず、
ヴィブラートも使わず、つまりロック系の歌手に見られる
黒人音楽からの要素が皆無なナチュラルで無色透明な歌声。
だからこそ聴き手のシチュエーションによって明るく楽しくも、
悲しく切なくも聴こえる魔法があるのでしょう。
それともうひとつ重要な点があります。
まるで歯磨きのCMのように常に真っ白い歯を見せて、
幸せそうな笑顔を咲かせ、陽気なアメリカの健全で理想的な兄妹の
イメージだった彼らが、しかしその裏で兄は薬物中毒、
妹は過食と拒食を繰り返し、死に至ってしまったという現実。
表向きは自由な大国、しかし内情は多くの問題を抱える
アメリカのまさに縮図のようですが、
それ以上に優れたポップ・ミュージックの宿命なのです。
後世に残るポップスの名曲は、ほぼ例外なく、魂の暗闇というか、
病める心によって生み出されていると言ってもいいかもしれません。
そんなある種の“毒”が楽しいポップスの裏に透けて見える
瞬間があるからこそ、名曲は人の心を打つんじゃないでしょうか。
そんなことを改めて思い出させてくれる、
美しくも悲しいポップスがカーペンターズなのです。