6月4日(木)の名盤は…
今日はクリストファー・クロスを紹介しました。
1980年前半、全く無名の新人アーティストのデビュー曲が
全米チャートを急上昇しました。クリストファー・クロスの「風立ちぬ」です。
優しく透き通ったハイトーンの歌声と流麗なメロディライン、
都会的なアレンジは、日本でも大人気となりましたが、
本人に関する情報は全然入ってきません。
これは本国でも同じで、デビュー後数ヶ月は、ライブもせず、
TVにも出ず、アルバムにもイメージ・キャラクターのフラミンゴの絵が
描かれているだけで顔写真のひとつもなかったのです。
これは完全にレコード会社の戦略の成功でした。
遂に初めてその姿を公の場に披露したとき、
おそらく日米あわせて100万人のファンは皆「えーっ」と
声を出したに違いありません。
それほど歌声とギャップのあるルックスだったのです。
本人が自分のルックスをどう思っていたのかは分かりませんが、
もともとハード・ロックを演っていたのに声質が向いていないため
断念したそうなので、自分のやりたい音楽と己の美声とのギャップに
悩まされたのは間違いないでしょう。
ともあれ、これ以降、意識的にメディアに露出しない戦略は
多用されるようになります。
その意味でもエポック・メイキングな名盤といえそうです。
ギャップという点ではもう一つ。
それは歌詞です。今日お届けした「風立ちぬ」、
曲調と歌声からは想像できないと思いますが、
実は”10人を撃ち殺した無法者が国外まで逃げれば自由になれるという
メキシコ国境を目指し馬を走らせる”という内容なんですよ。
イメージと内容とのギャップの大きな名曲って意外にたくさんあるんですが、
その中でもかなり上位にランクされるのがこの曲です。
そういえばこのクリストファー・クロス、ルックスにも、
そして美声にも似合わず、カー・レーサーとしても活躍しています。
ほんと、ファンの裏をかくのがお好きな人のようです。